「最高の音が出したいから、新しい機材も採り入れている!」マーク&ジョン・ギャラガー2024来日インタビュー後編

「最高の音が出したいから、新しい機材も採り入れている!」マーク&ジョン・ギャラガー2024来日インタビュー後編

2024年11月に来日した唯一無二のアスレティック・ロック・トリオ:レイヴン。実にキャリア半世紀(!)というNWOBHMの生き証人にして、未だ老成とは全く無縁で、今回も超絶ハイパー&ハイ・テンションなパフォーマンスで日本のファンを圧倒しまくったジョン(b, vo)とマーク(g)のギャラガー兄弟のインタビュー記事第2弾を、ここにお届けしよう…! 例によって、しゃべり出すと止まらない2人には、強い強い機材へのコダワリについて存分に語ってもらった。しかし…まぁ、よくもあれだけ次々と機材名が飛び出してくるもの。最新ギアへの興味、造詣の深さにも驚かされること請け合いだ…!!

レイヴン ステージ

弦高を高くした方がずっと音が良くなる

YG:今回、日本へ持ってきた機材をそれぞれ教えてください。

MG:ギターは3本だ。OKTOBERのシグネチュア・ギターと、キット・ギターのテレキャスター・モデル、それから“フランケン・テレキャス”と呼んでいるVシェイプ。その“フランケン”は、見た目は完全にVシェイプなのに、パーツはほぼテレキャスターで、セイモア・ダンカンの“Hot Rails”ピックアップが搭載され、フロイドローズ仕様になっている。ジョンが組んでくれたんだけど、ボディは安物の合板で出来ていて、まるでガラクタなのにとても頑丈で、少々手荒に扱っても大丈夫だ。

JG:その手のVシェイプは3本ある。

MG:そう。俺にとってのメインは黒の“テレキャスターV”だけど、それは英国にあって、今回のツアーには持ってこなかった。日本に持ってきた赤いのはスクワイア風で、1ピックアップ仕様ながら、テレキャスター風のサウンドがVシェイプから出てくるなんてクールだろ?(笑) テレキャスターが持つあの切れ味があるんだ。昨日は、本当に弦を切ってしまったけどさ…(苦笑)。

JG:まるでコメディ映画の『スパイナル・タップ』だな!(笑) ちゃんとクリーン・サウンドも出るしね。

マーク

MG:テレキャスターって、初期のレッド・ツェッペリンでジミー・ペイジが弾いているのを聴くと、実はヘヴィ・ロックやメタルにバッチリ合ったギターだということがよ〜く分かる。しかるべきピックアップを搭載し、ちゃんとバランスを考えれば何も問題ないね。あと俺は、弦高をかなり高くしている。まるでアコースティック・ギターみたいだから、俺のギターを手にした人はみんな、「何だよコレは…?」と言ってしまう(笑)。でも、弦高を高くした方がずっと音が良くなる。俺はそれをゲイリー・ムーアや、シン・リジィのブライアン・ロバートソンから学んだのさ。

JG:そもそも弦って振動するから、ネックに近いと当たってしまうよね。

MG:それだとクリアな音にならないんだ。そこで、弦高をちょっと上げると音の存在感がずっと増す。俺のプレイのちょっとした秘密だな。あと、弦をハイブリッドにしていてね。低音弦は太めで、高音弦は細めという風に。最近、イングヴェイ・マルムスティーンがそのことについて話しているのを知り、彼も同じことをやっているんだな…と驚いたよ。そもそも俺達はトリオだから、低音はよりチャンキーかつヘヴィに、そして高音はよりクリアな音にする必要がある。そこもバランスの工夫だよ。

YG:TLシェイプのキット・ギターもジョンのお手製なんですよね?

MG:そうだよ。新型コロナウイルスのパンデミックが起こった時、ジョンはロックダウン中にギターを作ることにしたのさ。このキット・ギターにはエヴァーチューン・ブリッジが搭載されている。ピックアップはやはり“Hot Rails”。とにかく、エヴァーチューンによりチューニングが狂わないのが素晴らしい。新作の大半はこのギターでレコーディングしたんだよ。

TLシェイプ

JG:エヴァーチューン用の穴を開けるのに、2年も費やしたよ!(※勿論ジョーク) でもレコーディング作業中、その恩恵にあずかることが出来た。あるのとないのでは大違いだ! ワン・トラックだけならそう影響ないけど、ダブル・トラックになると結果は歴然だった。

MG:そうそう、チューニングの問題がなかったおかげで、3日間はレコーディング期間が短縮されたよ。

JG:マジで凄いシステムだ。

MG:もう1本のTLシェイプ──OKTOBERのシグネチュアも俺のお気に入りだ。(米)メリーランドの小さなメーカーで、今はもう存在していないんだけどさ。オーナーがミュージシャンに戻って、バンドを始めてしまったからね。その彼が俺のために作ってくれたギターで、あれは本当に最高だ。大好きだから、未だに使い続けている。昔からテレキャスターが好きなのは、ハードなエッジが効いているからさ。あともう1本持っていて、ヴィンテージ・ボディにスクワイア製ネックを組み合わせてあるヤツがあるんだけど、もうかなりガタがきて、壊れているとも言えるかな。まだ使えはするけど、ツアーに持っていくのは無理だよ。

マーク

YG:アンプは何を?

MG:ISPテクノロジー製だ。今回はそれをモデリングしたサウンドをケンパー“Profiler Player”に入れて持ってきている。小さめのヴァージョンなんだ。だって、ツアーの移動で飛行機を使う時は、アンプを10台も持って行くワケにはいかないだろ? 実は…最初、ケンパーに対してはちょっと抵抗があってさ。俺は音に凄くうるさいんで、問題があればすぐに気付いてしまう。正しくなければすぐ分かるよ。そもそも俺には出したい音があるし、頭の中では常にそれが鳴っている。その点、ケンパーには可能性があるんだ。一度自分の大好きな音を作ることが出来れば、いつでもどこでもそれが使えるから。ZIPドライヴ(註:おそらくUSBメモリーのこと)に入れて持ち運べばそれだけでOK! ツアー先でそれをケンパーに差し込めば“俺の音”が出せる。信じられないテクノロジーだな。

昔はCARLSBRO製のソリッドステート・アンプを使っていたし、メサブギーを使っていた時もあった。メタリカも使っているヤツだ。

JG:“Mark IIC+”だな。グラフィックEQ付きのヤツ──あれはコイツの大のお気に入りだったんだ。

MG:ソロで使うと最高だったからね。勿論、リズムにも良かったけど。凄く厚みのある強力な音で…。そしてその後は、メサブギーのラックマウント・プリアンプを使うようになった。

JG:“Triaxis”だよ。

MG:あれも素晴らしかった。故障には度々悩まされたけどね。でも、ある時……。

JG:飛行機移動の際、傷付けられてしまったんだよ。まぁ、飛行機に載せたらいつも何かしら壊れるんだけどさ(苦笑)。

MG:そこでジョンが、小さくて、持ち運びに便利なアンプを探そう…と言って、ISPというメーカーを見つけてきたんだ。そしてある日、プリアンプを持ってきて、「これを試してみろ。俺は使わないけど」と言うから、プラグを差し込んで、メサブギーと一緒に使ってみたら、俺が求めていた要素がすべて満たされていた! 高音が強力で、低音もクリア。素晴らしいサウンドだったよ。それ以来、ずっとISPを使い続けている。もう10年以上…ね。

JG:最初に使ったのは『WALK THROUGH FIRE』(2010年)だったな。

マーク
ジョンとマークのラック。ISPテクノロジーのサウンドを読み込ませたケンパー“Profiler Player”が右下に鎮座する。 (*)

MG:今じゃISPが手放せないよ。そして、最新アルバムでもケンパーを使った。ISPの音をモデリングするのには、随分と時間がかかったけどね。色んなやり方を試して、遂に満足のいく結果が得られたのさ。実機と比べてみたら、何とケンパーの方が音が良いぐらいだった! 「何てこった…素晴らし過ぎる!」と思ったよ。まぁ、同じ音ではあるんだけど、ケンパーの方がよりクレイジーな音が出せる。だから、今は凄くハッピーだよ。

おかげで今じゃ、アンプは自宅やレコーディング・スタジオに置いておくだけ。特にスペシャルなアンプは、ツアー先になんて持ち出したくないからね。ウルフ・ホフマンも、改造したマーシャルをケンパーに取り込んで使っている。リッチー・ブラックモアのを手掛けたテクニシャンの手によるマーシャルさ。彼はそのアンプをとても気に入っていたから……。

JG:ツアー先で傷付くのを恐れているんだな。

MG:そう。貴重なアンプは家に置いておいて、音だけ持って行く。何てクールなんだろう…!(笑)

JG:そもそもケンパーに興味を持つキッカケは、アクセプトと共演した時、ウルフが見せてくれたからだよ。それで、『METAL CITY』(2020年)のプロデュースををマイケル・ワグナーが手掛けてくれた際、彼がマークのISPのクローンを作ってくれたのさ。俺のベース・サウンドも彼がやってくれた。1分もかからなかったよ。いや…最初、彼はまるでビリー・シーンといった音にしたんだ。そこで俺が、「それはビリーにはピッタリだろうけど、俺には合わないよ。ギター・アンプに低音を加えたダーティな音じゃなきゃ…!」と言ったら、最高の結果を出してくれたよ(笑)。

MG:あれはクールだったな!

YG:マークのMIDIボードには何種類もプリセットの音色が用意されていますね?

MG:うん。俺はあのケンパー“Profiler Player”のユニットで、5種類の音を出している。通常のリズム・サウンド、リード・ブースト、それから、リヴァーブが少しかかっているヴォリューム・ブースト、そこにエコー・サウンドを加味したサウンド、そして、俺ならではのクレイジーなサウンドだ。5つ目の音には、オート・ワウ、オクターヴァー、ディストーション・ペダルなどがミックスされている。

マーク機材
マークの足元にあるMIDIコントローラーは、キース・マクミラン製“Softstep”。(*)

JG:まるで、ジミ・ヘンドリックスが「Purple Haze」で出しているような音だよな。

MG:以前、『EXTERMINATION』(2015年)でゴジラの鳴き声みたいな音を出そうとしたこともあったよ(笑)。あの頃はLine 6を使っていて、当時も他にないクレイジーなサウンドを出していた。

JG:“M9”だな。ライヴには向いていない機材だと思ったけど、あれも素晴らしかった。

MG:あと俺は、エコーの音にも超コダワリがあってさ。これまでにありとあらゆるエコー・ユニットを使ってきた。Line 6の“Modeler”シリーズとか、CARLSBRO製だとかね。かつてリッチー・ブラックモアはテープ・エコーを使っていたけど、俺達も同じようなことを試したことがある。WEMの“Watkins Copicat”を使ったんだ。あれにはプリセットが3種類あるんだけど、その録音ヘッドを取り出し、好きなスピードのところに動かしてみたところ、とても上手くいったよ。リズミックなエコーでリピートさせたら、まるでブライアン・メイ(の“サウンド・オン・サウンド奏法”)みたいな感じになったんだ。

そういえば最近、クルーズ・イベントで観たクリスチャン・バンド──え〜と…ストライパーか! あのシンガー(マイケル・スウィート)が弾いていたギター・リフの音がとんでもなかった! あまりに素晴らしかったんで、「何を使っているんだ?」と訊いたら、「ISPだよ」と言うじゃないか!(笑) 「なるほど、俺と同じ機材か! そりゃ良い音だよな!!」って納得したよ!!(笑) あと、あまり知られていないかもしれないけど、ISPってノイズ・ゲートで有名になったんだよね。本当に素晴らしいノイズ・ゲートがあって、史上最高と呼ばれてさえいる。

マーク