「観客のみんなもライヴの一端を担っている!」マーク&ジョン・ギャラガー2024来日インタビュー前編

「観客のみんなもライヴの一端を担っている!」マーク&ジョン・ギャラガー2024来日インタビュー前編

予測不能になりたいんだよ

YG:リッチー・ブラックモアといえば、マークはソロで時々オクターヴァーを使いますが、あれは彼からの影響もあって…?

MG:そうだよ。俺はオリジナルのミュートロンのペダルが好きだった。いま俺が使っているのは、もっと新しいヴァージョンだけどな。ただ、ソロでオクターヴァーを使うのは、単純に違った音を出したいから…でもある。他にもエコーとかオート・ワウを使うのも、より面白いプレイにするためさ。俺のギター・ソロって、元々のフレーズに加えて、色々なテーマが入れ込まれているだろ? ジェームズ・ボンドのテーマとか、他にもよく知られたフレーズとかね。色んなところからちょっとしたメロディーを持ち込んで、毎回違うソロにしているよ。それもブラックモアを聴いてヒントにしたのさ。彼はよく、クラシック曲のフレーズを入れ込んでいたから。

クレイジーなヴィブラートなんかも含め、とにかくブラックモアは俺のお気に入りのギタリストだよ。とてつもなくハードな、エキサイティングなエッジを効かせている…と思ったら、突如ブルージーなことをやって、表現豊かに弾くこともある。その変化を俺は楽しんでいたのさ。世間には巧いギタリストなんて山のようにいる。でも、俺にとって肝心なのは、そのギタリストならではのスタイルなんだよ。

JG:ウリ・ジョン・ロートもそうだな。俺達のスタイルは、彼に通じるところがあるかもしれない。

MG:『VIRGIN KILLER』(1976年)は名盤だな!!

JG:あと勿論、『TOKYO TAPES』(1979年)もね!

MG:(『VIRGIN KILLER』収録の)「Polar Nights」とか、ライヴの度に違っている。

JG:あの曲のギター・サウンドは、まるで台所の流しから聴こえてくるようだ(笑)。俺はあれを“ウリ・サウンド”と呼んでいるんだけど、エフェクト・ペダルを使えばベースで出すことも出来るよ。

MG:とにかく俺達は、ブラックモアやヘンドリックスみたいになりたいんだ。あと、ザ・フーのようにね。俺はアクセプトのファンだよ。マジで素晴らしいバンドだと思っている。でも、彼等が向かう先と、俺達が採る方向性はまた違う。正反対と言ってもイイかもしれない。アクセプトはどんどんコントロールされた方に向かっているだろ? それはそれで良いんだ。でも、俺達にはもっと“ユルさ”が欲しい。

JG:そう、予測不能になりたいんだよ。

ジョン
マーク TLシェイプのギター

MG:リフひとつ取っても、タイトに弾いて、曲をちゃんと聴かせる…というのは重要だ。でも、そこにはちょっとしたユルさも欲しくなってくる。「それでこそライヴだ!」とみんなに思ってもらえるような部分がね。突然いつもと違ったことを始めて、一度限りのイベントにするのさ。俺達はサーカス・バンドじゃない。ステージにロボットが登場したり、互いを撃ち合ったり、凧に乗って飛んだりしないよ(笑)。

JG:さっきも話に出たように、昨日はジェームズ・ボンドのテーマが飛び出した。『女王陛下の007』のテーマ──1969年の映画から取ってきたんだ。

MG:メリー・ホプキンの「Those Were The Days」(1969年)を弾く時だってある。美しいメロディーだから、弾きたくなるのさ。それこそがブラックモア流だ。彼こそがその道では王様だよ。何という素晴らしいプレイヤーだろう……最高だね!! あと、最近はチューニングを下げなきゃライヴが出来ないバンドがやたらと多い。あれはシンガーのためなんだろうけど。昔のように歌えないシンガーが沢山いるから…。

JG:でも…そうすると、曲が変わってしまう。フィーリングが変わってしまうんだよ。

MG:ウド(ダークシュナイダー)だったかな? 彼のバンド(U.D.O.)を観た時、俺はどの曲をやっているのか分からなかった。チューニングを下げていたから、同じ曲に聴こえなかったんだよ。

JG:幸い俺は、未だにチューニングを下げずにやれている。

MG:俺達はコンサート・ピッチのA=440Hzでやっているんだ。

JG:その方が音も良いからな。

MG:そう、良い音でやれる。チューニングを下げたバンドは「ヘヴィだ!」って言うけど、俺はそう思わないね。それどころか、「みんな騙されるな!」って思うよ(笑)。

ジョン&マーク

YG:昨日マークはソロ・タイムの時、『NOTHING EXCEEDS LIKE EXCESS』(1988年)の曲のリフやサワリを弾いていましたよね? でもどうせなら、あのアルバムから何曲か丸ごとバンドで演奏して欲しかったです…。

MG:俺だってやりたいよ。でも、時間には限りがあるからな。

JG:セットリストを組む際は、大いに話し合うよ。いつも同じ曲ばかり…という風にはしたくないからね。最近はアルバム完全再現をやることもある。2022年にはリリース40周年のタイミングで『WIPED OUT』(1982年)の全曲演奏をやったし……。

MG:2023年には(やはり40周年記念で)『ALL FOR ONE』を完全再現した。

JG:どっちも楽しかったな。でも、全アルバムをやったりはしない。それだと予測が付き過ぎるから。ああいうセットは、いつもと違うからイイんだ。実際にやってみて楽しかったし、大丈夫だった。

YG:リリース35周年は過ぎてしまったし、40周年はちょっと先ですが、いつか『NOTHING EXCEEDS LIKE EXCESS』の全曲再現もやってください。

MG:ああ、良いアルバムだからな。

JG:良曲が揃っているよ。

YG:個人的には、過小評価されていると思っているんです。

MG:そうかもしれない。レイヴンのアルバムには、そういうのが沢山あるんだ(苦笑)。俺が最も過小評価されていると思うのは、『EVERYTHING LOUDER』(1997年)だな。あの頃はレーベルと揉めたり、レコーディングでも色々あってね…。でも、素晴らしい曲が入っているよ。「Blind Eye」を筆頭にね。

JG:あと、「Wilderness Of Broken Glass」とか。

MG:『ROCK UNTIL YOU DROP – A LONG DAYS JOURNEY』(2013年)というレイヴンの歴史を綴った映像作があるんだけど、そこで使われている曲の大半が『EVERYTHING LOUDER』からなんだ。あのアルバムにチャンスを与えるためにね! あと、ファンのお気に入りの中には、『ARCHITECT OF FEAR』(1991年)もあるな。

YG:ああ〜、是非「Relentless」をライヴでやってください!(笑)

MG:ほら、すぐにリクエストがくる(笑)。あのアルバムで俺達はダークに、ヘヴィになったけど、みんなのお気に入りでもあるんだ。そこがレイヴンの良いところじゃない? アルバムによって色んな味わいがある…というか。ともあれ、リフやサワリだけ…ってのは、曲を丸々やるのには時間的な制約があるからだよ。でも、そうしている時に観客が気付いてくれたら嬉しいね。

YG:「あっ…“Die For Allah”だ!」と?(笑)

MG:そうそう! あのアルバムに伴うツアーでは、その「Die For Allah」がオープニングだったんだよ。

JG:でも、今「Die For Allah」をプレイしたら、逮捕されるんじゃない?(苦笑) 歌詞がかなりヤバいから…。以前、中東のとある国でプレイしたことがあるけどさ!

YG:マジですか…!

MG:ヤバかったよ。かなりヘヴィな歌詞だから…。

JG:ある意味ハードコアな曲だな。まぁ、その辺はちゃんと考えないと…(苦笑)。

ジョン、マイク、マーク