予測不能になりたいんだよ
YG:リッチー・ブラックモアといえば、マークはソロで時々オクターヴァーを使いますが、あれは彼からの影響もあって…?
MG:そうだよ。俺はオリジナルのミュートロンのペダルが好きだった。いま俺が使っているのは、もっと新しいヴァージョンだけどな。ただ、ソロでオクターヴァーを使うのは、単純に違った音を出したいから…でもある。他にもエコーとかオート・ワウを使うのも、より面白いプレイにするためさ。俺のギター・ソロって、元々のフレーズに加えて、色々なテーマが入れ込まれているだろ? ジェームズ・ボンドのテーマとか、他にもよく知られたフレーズとかね。色んなところからちょっとしたメロディーを持ち込んで、毎回違うソロにしているよ。それもブラックモアを聴いてヒントにしたのさ。彼はよく、クラシック曲のフレーズを入れ込んでいたから。
クレイジーなヴィブラートなんかも含め、とにかくブラックモアは俺のお気に入りのギタリストだよ。とてつもなくハードな、エキサイティングなエッジを効かせている…と思ったら、突如ブルージーなことをやって、表現豊かに弾くこともある。その変化を俺は楽しんでいたのさ。世間には巧いギタリストなんて山のようにいる。でも、俺にとって肝心なのは、そのギタリストならではのスタイルなんだよ。
JG:ウリ・ジョン・ロートもそうだな。俺達のスタイルは、彼に通じるところがあるかもしれない。
MG:『VIRGIN KILLER』(1976年)は名盤だな!!
JG:あと勿論、『TOKYO TAPES』(1979年)もね!
MG:(『VIRGIN KILLER』収録の)「Polar Nights」とか、ライヴの度に違っている。
JG:あの曲のギター・サウンドは、まるで台所の流しから聴こえてくるようだ(笑)。俺はあれを“ウリ・サウンド”と呼んでいるんだけど、エフェクト・ペダルを使えばベースで出すことも出来るよ。
MG:とにかく俺達は、ブラックモアやヘンドリックスみたいになりたいんだ。あと、ザ・フーのようにね。俺はアクセプトのファンだよ。マジで素晴らしいバンドだと思っている。でも、彼等が向かう先と、俺達が採る方向性はまた違う。正反対と言ってもイイかもしれない。アクセプトはどんどんコントロールされた方に向かっているだろ? それはそれで良いんだ。でも、俺達にはもっと“ユルさ”が欲しい。
JG:そう、予測不能になりたいんだよ。
MG:リフひとつ取っても、タイトに弾いて、曲をちゃんと聴かせる…というのは重要だ。でも、そこにはちょっとしたユルさも欲しくなってくる。「それでこそライヴだ!」とみんなに思ってもらえるような部分がね。突然いつもと違ったことを始めて、一度限りのイベントにするのさ。俺達はサーカス・バンドじゃない。ステージにロボットが登場したり、互いを撃ち合ったり、凧に乗って飛んだりしないよ(笑)。
JG:さっきも話に出たように、昨日はジェームズ・ボンドのテーマが飛び出した。『女王陛下の007』のテーマ──1969年の映画から取ってきたんだ。
MG:メリー・ホプキンの「Those Were The Days」(1969年)を弾く時だってある。美しいメロディーだから、弾きたくなるのさ。それこそがブラックモア流だ。彼こそがその道では王様だよ。何という素晴らしいプレイヤーだろう……最高だね!! あと、最近はチューニングを下げなきゃライヴが出来ないバンドがやたらと多い。あれはシンガーのためなんだろうけど。昔のように歌えないシンガーが沢山いるから…。
JG:でも…そうすると、曲が変わってしまう。フィーリングが変わってしまうんだよ。
MG:ウド(ダークシュナイダー)だったかな? 彼のバンド(U.D.O.)を観た時、俺はどの曲をやっているのか分からなかった。チューニングを下げていたから、同じ曲に聴こえなかったんだよ。
JG:幸い俺は、未だにチューニングを下げずにやれている。
MG:俺達はコンサート・ピッチのA=440Hzでやっているんだ。
JG:その方が音も良いからな。
MG:そう、良い音でやれる。チューニングを下げたバンドは「ヘヴィだ!」って言うけど、俺はそう思わないね。それどころか、「みんな騙されるな!」って思うよ(笑)。
YG:昨日マークはソロ・タイムの時、『NOTHING EXCEEDS LIKE EXCESS』(1988年)の曲のリフやサワリを弾いていましたよね? でもどうせなら、あのアルバムから何曲か丸ごとバンドで演奏して欲しかったです…。
MG:俺だってやりたいよ。でも、時間には限りがあるからな。
JG:セットリストを組む際は、大いに話し合うよ。いつも同じ曲ばかり…という風にはしたくないからね。最近はアルバム完全再現をやることもある。2022年にはリリース40周年のタイミングで『WIPED OUT』(1982年)の全曲演奏をやったし……。
MG:2023年には(やはり40周年記念で)『ALL FOR ONE』を完全再現した。
JG:どっちも楽しかったな。でも、全アルバムをやったりはしない。それだと予測が付き過ぎるから。ああいうセットは、いつもと違うからイイんだ。実際にやってみて楽しかったし、大丈夫だった。
YG:リリース35周年は過ぎてしまったし、40周年はちょっと先ですが、いつか『NOTHING EXCEEDS LIKE EXCESS』の全曲再現もやってください。
MG:ああ、良いアルバムだからな。
JG:良曲が揃っているよ。
YG:個人的には、過小評価されていると思っているんです。
MG:そうかもしれない。レイヴンのアルバムには、そういうのが沢山あるんだ(苦笑)。俺が最も過小評価されていると思うのは、『EVERYTHING LOUDER』(1997年)だな。あの頃はレーベルと揉めたり、レコーディングでも色々あってね…。でも、素晴らしい曲が入っているよ。「Blind Eye」を筆頭にね。
JG:あと、「Wilderness Of Broken Glass」とか。
MG:『ROCK UNTIL YOU DROP – A LONG DAYS JOURNEY』(2013年)というレイヴンの歴史を綴った映像作があるんだけど、そこで使われている曲の大半が『EVERYTHING LOUDER』からなんだ。あのアルバムにチャンスを与えるためにね! あと、ファンのお気に入りの中には、『ARCHITECT OF FEAR』(1991年)もあるな。
YG:ああ〜、是非「Relentless」をライヴでやってください!(笑)
MG:ほら、すぐにリクエストがくる(笑)。あのアルバムで俺達はダークに、ヘヴィになったけど、みんなのお気に入りでもあるんだ。そこがレイヴンの良いところじゃない? アルバムによって色んな味わいがある…というか。ともあれ、リフやサワリだけ…ってのは、曲を丸々やるのには時間的な制約があるからだよ。でも、そうしている時に観客が気付いてくれたら嬉しいね。
YG:「あっ…“Die For Allah”だ!」と?(笑)
MG:そうそう! あのアルバムに伴うツアーでは、その「Die For Allah」がオープニングだったんだよ。
JG:でも、今「Die For Allah」をプレイしたら、逮捕されるんじゃない?(苦笑) 歌詞がかなりヤバいから…。以前、中東のとある国でプレイしたことがあるけどさ!
YG:マジですか…!
MG:ヤバかったよ。かなりヘヴィな歌詞だから…。
JG:ある意味ハードコアな曲だな。まぁ、その辺はちゃんと考えないと…(苦笑)。