「観客のみんなもライヴの一端を担っている!」マーク&ジョン・ギャラガー2024来日インタビュー前編

「観客のみんなもライヴの一端を担っている!」マーク&ジョン・ギャラガー2024来日インタビュー前編

俺達は3人だけでとてつもなくデカい音を出している

YG:東京で3公演行ない、どの日も全く同じセットリストというバンドもいますが…?

MG:それだと、観客側も「次はアレだな」「その次はコレか」ってなっちゃうよ。

JG:同じ都市で3回やるんだったら、ちょっとは変えないとな…。

MG:ただ、プロダクションも何もかも同じにしていると、「今日はこの曲をやろう」なんて誰かが言い出したら、エラいことになってしまう…!(笑)

JG:ああ、みんな慌てるよ。「そんなのダメだ! 照明のパターンだって決まってるんだから…」とか言ってさ(笑)。

MG:無論そういうバンドだって、やろうと思えば色々やれるんだろう。その規模のバンドなら、山ほどレパートリーを抱えているだろうし、みんな優れたプレイヤーに違いないからさ! でも、ついつい商業主義に陥ってしまう。まるで機械のようになってしまうんだ…。

JG:ああ…最悪だ。

MG:今どきのバンドって、大半は同期音源を使い、クリックに合わせてプレイしているんだよな。つまり、インイヤー(モニター)を着けて、クリック音を聞きながら演奏している。若いバンドでも、それをやっている連中は少なくない。ある時、「俺達はこれを使っているんだ」って言うから、「どういうことだ?」と訊いたら、「これだよ、これ…」と、モニター音を聞かせてくれた。そこでは、ずっと“カッカッカッカッ…”という音が鳴っててさ…。「そんなの辞めちまえ!」って感じだ(苦笑)。そんなの、まるでマシーンじゃないか。俺達はただ音楽をプレイしたいだけなのにさ。

JG:中には、「1、2、3、4」っていう合図を聞きながら演奏しているバンドもいる。「次はコーラスです」「次はソロです」「はい…1、2、3、4」みたいな声がインイヤーから聞こえてくる。

MG:そうそう、ヤツらはずっと頭の中で、「1、2、3、4」って数えながらプレイしているのさ(笑)。

JG:クリックを聞きながら、合図を出してもらわないと演奏出来ないなんて…一体どういうことだ?(苦笑)

ジョン&マーク

YG:エフェクターもすべてバッキング・トラックと連動していて、自分で踏み換えなくても自動で切り替わる…といったことも普通になっていますね?

MG:そうそう。アクセプトですらそうしていたな。ウルフ(ホフマン)が、「今はこれを使っているんで凄く良い。自動でエフェクターなどが切り替わるから、俺は何にもする必要がない」って言うんで、「でも、急に何かやりたくなったらどうするんだ?」と訊いたら、「自分で切り替えることも出来るよ」だってさ! 思わず俺は、「それって機械にコントロールされている気がしないか?」と言ってしまったよ。

JG:まぁ、昔から似たようなことをやっていたバンドはいたけどね。クリック通りにプレイするなんて…制約があるとは思わないのかな? あと、キーボーディストがいないのに、その音が鳴っている…とかね。ただ、今どきのバンドはもっと酷い。どこまでが生演奏で、どこまでが同期音源なのか分からなくなってしまうよ。最悪の場合、ミキサー卓にアルバムの音源が丸ごと入っていることすらある。ライヴで誰かのプレイが良くないと、アルバム・ヴァージョンと差し替えるんだってさ!(笑)

MG:差し替えまでいかなくても、音源を一緒に流したり…とかね。生演奏と同期音源がミックスされて聴こえてくるんだよ。信じられるかい? そんなの“ライヴ”じゃないよ。わざわざ金を払ってライヴ会場でアルバムを聴かされる…なんてさ! 俺だったらゴメンだね!!

JG:「次の曲は最新アルバムからだ」と言って、(サウンドマンなどが)再生ボタンを押す…(笑)。

MG:シンプルなパンクをやっているのに、ギタリストが3人いるバンドもどうかと思うなぁ…。

JG:それでも、ちゃんと本人達が演奏しているのならまだ良いんじゃない?

マーク

MG:でもさ、ギター3本に加えて、キーボーディストまでいるんだよ! 「何じゃそれ? パンク・バンドだろ??」って思ったな。名前は出さないけど、メタルでもそれをやっているバンドが沢山いる。3本どころか、ギター4本なんてのもいたな。「おいおい、誰もマトモに弾けないから3人も4人も必要になるんじゃないのか?」って思ったね。ギタリストが4人なんて、逆に大変じゃない?(笑) 全くタイトな音にならないだろ?

JG:まぁ、それでもオーディエンスを騙そうとするよりはずっと良い。好きなだけミュージシャンをステージに上げさせてやれよ(笑)。「おい、あのキーボードは一体どこから出ているんだい?」「あの1万人のコーラスはどこにいるのかな?」──そうなったらおしまいさ。

MG:その点、俺達は3人だけでとてつもなくデカい音を出している。テープもバッキング・ヴォーカルも使わずに…ね! 勿論、バック・ヴォーカルとして女の子を2人連れてきたりもしないよ(笑)。ちゃんとライヴで、自分達だけで演奏しているんだ。色々と自由にやれるし、その方がずっとイイ。実際、毎晩プレイしている曲だって、日毎に違っているんだよ。特にギター・ソロ…! 俺のギター・ソロはアルバムそのままなんかじゃない。勿論、気に入っているソロは毎回同じように弾くこともあるよ。「Surf The Tsunami」など、ニュー・アルバム(2023年『ALL HELL’S BREAKING LOOSE』)収録曲の幾つかのようにね。とても気に入っていて、「この曲はそのまま弾きたい!」と思う曲もそりゃあるさ。でも、大抵は自由に、その時々で新しいことがやりたくなるもんだ。ライヴなんだから、それでイイよね?

JG:日替わりメニューだな(笑)。

MG:プレイしていても、その方が絶対に楽しいよ!!

JG:スポンテニアスであることは必要だ。

MG:インプロヴィゼーション…それが興奮を呼ぶのさ!

JG:各パートにちょっとしたフィルを入れると、「今日は何をやろうかな?」って思えてくる。だから、あちこち絶えず変わっていく。

MG:(ジミ・)ヘンドリックスなんて、そこが正に魅力だったしね。同じプレイは2度と観られない。完璧に違っていたよ。「次は何が起こるんだ…?」という、それが素晴らしかったのさ。

JG:リッチー・ブラックモアも、ジェフ・ベックもそうだったな。素晴らしいね…。いや〜、本当に素晴らしい!!

マーク
ジョン