去る3月中旬に再来日を果たしたNWOBHMの生ける伝説:レイヴンのインタビューをお届けしよう! 東京にて2夜連続公演を行ない、それぞれ異なる演目でオーディエンスを熱狂させまくった最強のトリオ。マーク(g)とジョン(b,vo)のギャラガー兄弟は、既にアラカン(それぞれ来日時、60歳と59歳)だというのに、昨年加入の新メンバー:37歳のマイク・ヘラー(ds)の激速プレイにも楽々即応するハイパーっぷりで、もしかしたら40年を越えるキャリアの中で、今が最もパワフルかつアクティヴと言えるかもしれない。
ちなみに本インタビューが行なわれたのは、初期レパートリー限定のスペシャルな初日公演を終えた翌日のこと。会場の楽屋にて、前夜の疲れを全く感じさせないメンバー全員が笑顔(&マークはお約束の変顔も)で迎えてくれた…!!
初期の頃はステージがダイヴァーでいっぱいに…(ジョン)
YG:久々に日本でプレイしてみていかがでしたか?
マーク・ギャラガー:最高!! 日本ではいつだって凄まじいことになる。日本のファンは世界一クレイジーで強烈だからな。南米なんかもそうだけど、とにかくレイヴンのファンは普通じゃない。それにしても、昨晩は特に素晴らしかったよ!
ジョン・ギャラガー:幕が開いた瞬間、既に「何じゃコリャ!?」ってぐらいに、みんなテンション激高だったな。最高のオーディエンスとしか言いようがない。おかげで俺達も、最高の力を引き出してもらえたよ!
マーク:そして勿論、今夜も素晴らしいショウになるに決まってる!!
ジョン:ああ、そうだな!
YG:マイクはレイヴン加入前に、他のバンドで来日経験があるんですよね?
マイク・ヘラー:うん。フィア・ファクトリーとMALIGNANCYでも来ているから、これで4回目かな。でも、それぞれ観客のタイプは異なっていて、ちょっと不思議な感じがするよ。MALIGNANCYのショウには、デス・メタルのファンがやって来る。フィア・ファクトリーのファンは──どう説明すればイイのか分からないけど、ちょっと控えめな印象だった。そして、レイヴンのファンは…狂ってる!(笑) 「最高だ!!」と思ったね。観客から受け取るエネルギーがとてつもなくデカい。おかげで俺達も、より力が漲ってきたよ。バンドと観客の間に素晴らしい関係が出来上がっているからだろうな。
YG:ショウの序盤、ジョンがマイクに向かって、「ほら、日本のオーディエンスってホントにクレイジーだろ?」と言っていましたね?
ジョン:ああ(笑)。
マイク:正にその通りだったよ!
YG:ただ、昨晩はモッシュなどは起こりませんでした。海外のライヴではどうですか?
マーク:そういうこともあるよ。いつも冒頭の曲は、凄く速いヤツにするんだ。アレを何と呼べばイイのかな…? “スラッシュ・メタルばりのアップ・テンポな(ジューダス)プリースト”とでも言おうかな? とにかく、それに合わせてみんながモッシュするんだ。ステージ・ダイヴもすぐに始まる。最初のうちはあまり気にしていなかったけど、そのうちにケガをする観客が出てきて、機材を壊すヤツもいて……
ジョン:あと、ステージに上がってきて、俺達を押したり、叩いたりするヤツらもね。
マーク:ギターを引っ張ったりするヤツもいるし…。
ジョン:’84年のサンフランシスコでのライヴでは、特殊な照明装置がステージ前方に置いてあった。それを、(ショウ開演)数分後に壊されたこともあった。
マーク:ああ、そうだった。おかげで俺達は、何千ドルも弁償しなきゃならなくなってさ。
ジョン:観客がステージに上がってくると、俺達は演奏を止める。そして、そいつに「何か御用でも?」と訊いて、「何もなけりゃ、今すぐ俺達のステージから降りろ!」と言うんだ。
マーク:今のはごく初期の頃の話だよ。クラブのスタッフも怒っていた。保険代がバカにならないからね。ステージから飛び込んだヤツのせいで、誰かがケガをしたらどうする? 首でも折ったりしたら大ゴトだ。訴訟沙汰になってしまう。アメリカは特にそういう国だからな。エクソダスやアンスラックスの連中も同じようなことを言っていたよ。機材を壊されたり、誰かが殴られたり…とね。
ジョン:ステージがダイヴァーでいっぱいになって、演奏が止まってしまうこともあった。足の踏み場がなくなってしまうぐらいだったな。
ジョン:ああ。ギターは床に散乱するし…。「一体どこの学校でそんな教育を受けてきたんだ?」と思ったよ(苦笑)。
マーク:モッシュしたいなら、それは構わない。でも、誰も怪我させないようにして欲しいね。どうやら、音楽よりも暴れることに主眼を置いている人達がいるようでさ…。俺達もクレイジーなことは大好きだよ。でも、誤解しないでくれ。それとこれとは違うんだ。
YG:レイヴンのファンは“ルナティクス”と呼ばれていますが、ホンモノの“異常者”はいないワケで…。
マーク:それはどうだろう?(笑) その手の連中を排除していったら、観客がいなくなったりして…!
YG:(笑) ところで、今回の来日公演は日替わりでセットリストを変えていましたね?
マーク:うん。プロモーターから「東京で2日間演奏して、1日はスペシャルなセットにするというのはいかがでしょう?」と提案された。それで、初日公演では初期3枚(’81年『ROCK UNTIL YOU DROP』、’82年『WIPED OUT』、’83年『ALL FOR ONE』)からのみプレイしたんだ。日本のファンのためにスペシャルなことをやるのはイイと思う。でも、俺達は新しいバンドだし、今も新曲を書いてアルバムをリリースしている。巷には昔のヒット曲ばかり演奏して、新曲をとんと出さなくなったバンドもいるようだけど、俺達は現在進行形だ。それで、「そこに新曲も入れよう」と話し合ったんだ。そうすれば、人気の過去曲と今の俺達とがちゃんと結び付いていることが分かるだろう。
ただ、『WIPED OUT』からの曲だとか、昔のお気に入り曲を演奏するのは楽しかったよ。スウィートのメドレー(『ROCK UNTIL YOU DROP』収録の「Hellraiser」〜「Action」)なんて、最後にやったのは……
ジョン:30年前じゃないか?
マーク:そうかもしれない。だけど、最高の出来になった! 俺達はみんな、昔の曲が好きだし、それらをプレイするのも大好きなんだ。それに、「長年やっていない曲をライヴでプレイしたらどうだろう?」という、新しい興味も湧いてきた。「Tyrant Of The Airways」(’81年『ROCK UNTIL YOU DROP』収録)なんて、かなりマニアックな選曲だよ。きっとオーディエンスも楽しんでくれているだろうね!
YG:本日──2公演目は“オールタイム・ベスト”ショウとのことですが…?
ジョン:昨日やった曲も若干ミックスするよ。全く違うセットにはせず、(初日と)同じ曲もプレイする。でも、後半には違う曲も入ってくるから、俺達としても楽しみだ! 同じ曲ばかりやらないのは、大切なことなんだ。俺達自身を楽しませるためにも…ね。だから今夜も、より幅広い選曲にすることで、新鮮な気持ちを保つことが出来ると思う。
YG:マイクは現状、どれぐらい過去曲をマスターしていますか?
マイク:昨日やった曲でほぼすべてさ。
ジョン:いや、今日だけやる曲もあるだろ?
マイク:そうか。だったら、今日が終われば全部やり尽くしたことになる。
マーク:その通り!(笑)
マイク:まだ新入りなもんでね。実際、最初の3枚の中には俺自身が不十分だという気がする曲もあるから、もっと練習が必要だ。それに、新曲もあるし…。今後はもっと増やしていかないとね!
ジョン:コイツがバンドに加入して2年になる。その間に200公演コナしてきたんだ。
マーク:しかもその間、リハーサルらしいリハーサルなんか一度もやってこなかった!
マイク:1回だけあったじゃないか?
ジョン:サウンド・チェック時、10分ぐらい…ね!(笑)
マーク:あと、新作では10曲叩いているから、その分はみっちりリハをやっている。ともあれ、昨晩は100分のセットだったし、それなりに大変だっただろ?
マイク:俺自身は、ジョンやマークがプレイしたいかどうか分からない曲を、率先して覚え直すことはない。彼等も俺もやりたいと思う曲をやればイイと考えているからね。というか、基本セットリストは彼等にお任せしている。まぁ、俺が「“Chainsaw”(『WIPED OUT』収録)はやりたくない!」と言い出すかもしれないけどさ。いや…実のところ、あの曲はやってみたいんだ。
マーク:「あのB面の曲をやろう」…なんて、奇妙なリクエストがくることもあるだろうな。
ジョン:そうした曲が出来るようになるのは楽しいよ。その場のノリで「じゃあ、やってみよう!」なんてのもイイな。
マイク:そうだね。でも──殆どの場合、俺よりも彼等の方がファンのことをよく知っているから、「この曲をやるぞ」と言われたら、俺は「(日本語で)ハイ!」と言うだけさ。「この曲をやる」「了解!」──そんな感じでずっとやってきたんだ。
ジョン:そうだな。昔の曲に戻るのは楽しいよ。でも、「どうやって弾くんだっけ?」となることも多い。1枚のアルバムを何度も何度もしつこく聴き返すことなんてないからな。大抵はアルバムを引っ張り出してきて、「おいおい、こんな曲があったのか?」となる(笑)。
マーク:その点、新しいライヴ・アルバム(’19年『SCREAMING, MURDER, DEATH FROM ABOVE:LIVE IN AALBORG』)はなかなか良い出来になった。あのリリースは、今のレイヴンのスナップショットを…という狙いがあったんだ。マイクが加わって、新たなエネルギーをバンドに注ぎ込んだ、最高のタイミングでのリリースになったと思う。あれを聴けば、世間のみんなは「次の新作はきっと凄まじいモノになる」と確信するんじゃない? そんな時に、こうして日本でプレイ出来るのも最高だ。完璧なタイミングだよ。