「これは一体どの曲だ?」と思いながら叩くことも…(マイク)
YG:ちなみに、マイクは過去曲を覚える際、どの音源を聴きますか? レイヴンの場合、スタジオ・テイクとライヴ・ヴァージョンがかなり違うことも多々あるので…。
マイク:ああ、その通りさ! 俺が初めてこのバンドでライヴをやった時、スタジオ・アルバムを聴いてライヴに臨んだら、大変なことになってしまった。俺はひたすら熱心に、直前の2日間でリストに書いてあった曲をすべて完璧に覚えたんだ。ところが──ライヴ当日、いざ本番が始まったら、どの曲も俺がこれまで聴いたこともないような形で演奏されるじゃないか! 当然、その時もリハーサルはなかったから、メチャクチャ焦ったね(苦笑)。せっかくガールフレンドが観に来てくれていたのに…。2日間、彼女にも会わずにひたすら練習したのに…。でも、彼女はライヴの間ずっと笑いが止まらなかったようだった。そう、俺が焦りまくっていたからさ。もうとにかく、崩壊しないように必死に頑張るしかなかったよ。結果的に…そこそこウマくいったと思う。
マーク:そうだとイイけど(笑)。
マイク:あれ以来、プレイする曲をもらったら、パソコンにデータを入れて、スピード・アップさせた状態で覚えるようにしている。「ライヴではきっとこんな風になるだろう」と考えながら練習するんだ。おかげで随分楽になったよ。
マーク:なかなか良い心掛けだ!(笑)
マイク:ところが昨日も、「これは一体どの曲だ?」「聴いたこともないぞ!」と思いながら叩く場面が何度かあってさ…。
ジョン:俺はその場で色々とアレンジを変えるのが好きだからな。最近また「Seek And Destroy」(『ALL FOR ONE』収録)をやり始めたんだけど、ギター・ソロの下降パートを延長することを思い付いたんだ。理由は、その方が良さそうだった…から!
マーク:俺なんてもっと酷い。故意に間違えることすらある。すると、2人がフリーク・アウトし始める。そうするのが好きなんだ。だって、俺はイカれているから!(笑) 特に「Break The Chain」(『ALL FOR ONE』収録)がハンパない。途中でブレークして、色んな(クラシック・ロック/メタルの)曲の断片を挟み込むんだけど、「さぁ、ここであの曲をやるぞ」って(目で)合図を送ると、2人に恐怖の表情が浮かび上がる。今夜のショウも観モノになるぜ。間違いなくマイクが「何が起こってるんだ…!?」っていう表情をするから、皆さんお楽しみに〜!(笑)
ジョン:昨晩はちょっとAC/DCを入れたっけ?
YG:「Dog Eat Dog」(’77年『LET THERE BE ROCK』収録)?
マーク:いや…。
マイク:聴いたことすらない曲だ(笑)。
ジョン:多分、ずっとやっていない。以前、2〜3回ぐらいはやったかもしれないけど…。
マーク:じゃあ、昨晩やったのは何だった?
YG:あっ…「It’s A Long Way To The Top (If You Wanna Rock ‘N’ Roll)」(’76年『HIGH VOLTAGE』収録)でしたね?
マーク:そうかな? まぁ、(AC/DCナンバーは)亡くなったマルコム(ヤング)への追悼さ。
ジョン:とにかく、俺達は(マークが)リフを弾くと、どんなビートなのかすぐに把握する必要がある。
マイク:曲自体は知っていても、実際に演奏したことがない曲だと、かなり慌ててしまうよ(苦笑)。
ジョン:ステイタス・クォーの「Caroline」(1973年『HELLO!』収録)も、マイクが聴いていないことは知っていたけど、「何とかなるだろう」「やってしまえ!」って感じでやったんだ(笑)。
YG:先ほどマイクが、「スピード・アップさせた状態で覚えるようにしている」と言っていましたが、実際、昨夜の「Faster Than The Speed Of Light」(『WIPED OUT』収録)は、これまでに聴いたことがないぐらいの倍速ヴァージョンになっていましたね?
ジョン:確かに、とてつもなく速かった!
マーク:マイクが最高のリズムを引き出してくれたからな!
マイク:そうそう!(笑)
マーク:そうやって、自分達を追い込むぐらいに──破壊的なまでにプレイする曲もあるんだ。何せ、“光の速度よりも速く”ってタイトルなんだからな。もう、やるしかない(笑)。
ジョン:今アルバムのテイクを聴き返したら、かなり間延びして聴こえるだろうよ。
マーク:要は、これまで曲名通りに叩けるドラマーがいなかったのさ。でも、今回は何とかやり遂げられた。
ジョン:「Hung, Drawn And Quartered」(『ALL FOR ONE』収録)も(スタジオ・ヴァージョンより)圧倒的に速い。でも、全く問題なく弾けるし、この方がずっと楽しい。だったら、そうしない理由はないね。
マーク:全部が全部そうすれば良いワケではないし、曲によってはパワーを効かせた方がイイ場合もある。でも、やっぱり速くするのは最高だな。極限までやり込みたい! やっぱり俺達って…イッちゃってるな!!(笑)
YG:過去の来日公演と同じく、昨日もマーティ・フリードマンがゲスト出演しましたが、シングルのB面曲(「Wiped Out」)だとか、なかなかマニアックな共演になりました。通常ゲストを迎える際は、代表曲やジャムり易い曲を用意しますよね? でも、レイヴンはそうじゃない。あれはマーティのリクエストでもあったのでしょうか?
マーク:幾つか候補は出したけど…。
ジョン:マーティは「最初の2枚だったらどの曲でも弾ける」と言ってきたんだ。それなら、「Firepower」(『WIPED OUT』収録)が良さそうな気がした。それで「どう?」と訊いたら、即座に「素晴らしい!」と言ってくれたよ。
マーク:マーティは、「あなた達の曲やアルバムを一体どれだけ聴き込んできたか、いくら大袈裟に言っても分かってもらえないでしょうね。とにかく、ずっと聴き続けているんです」と言っていた。彼自身、卓越したギタリストなのに、そんな彼にインスピレーションを与えているだなんて、お世辞としても凄いよ。俺達もついつい気を好くしてしまう(笑)。でも、彼は本当にファンでい続けてくれているし、一緒に弾きたがってくれるし、とにかく楽しくて仕方がないみたいだ。
ジョン:そういう話を聞けるだけで最高だね。俺達のやっていることや伝えようとしている意図を、彼は音楽的なレベルで理解してくれているワケだから。
マーク:昨日、マイクと一緒に「どんな風に曲を理解しているんだ?」って訊いてみたよ。「俺達の曲って、アレンジが典型的じゃないのに」…ってね。
マイク:要は、それだけよ〜く楽曲のことを知り尽くしている…ということだったな。
マーク:ああ。俺達のイカれた部分まで…ね!(笑)
ジョン:色々とヘンに思うかもしれないけど、俺達の世界の中では、どの曲もつじつまが合うようになっているワケで…。
マーク:何にせよ、昨晩は彼をゲストに迎えられて嬉しかった。前回プレイしてから10年振りだったしね。
マイク:俺はメガデスとカコフォニーの大ファンなんだ。それに、マーティの初期のソロ・アルバムもよく聴いていた。多分…誰も気付いていなかったと思うけど、昨晩のショウでは、マーティへのオマージュを込めて、彼が退場する時、メガデスの曲の一部を連続で叩いたんだよ。絶対に誰ひとりとして分からなかったと思うけど、俺自身は大いに満足だった(笑)。