「過去最高のギターが弾けたと自負している」森丘直樹/dps『ごめんなんて言葉』発売インタビュー

「過去最高のギターが弾けたと自負している」森丘直樹/dps『ごめんなんて言葉』発売インタビュー

どの曲のギター・ソロにも自分なりの新たな挑戦を入れた

YG:ではそれぞれの曲について、作曲時やレコーディング時の狙い、苦労したところなどを教えてください。まず1曲目の「Get Up」。個人的にはヘヴィなリフとキャッチーなリズムが、巧みに統合されていたのが印象に残りました。

森丘:この曲のギター・リフは作曲者の川村(篤史/dr)さんのデモに入っていたものを、僕なりの弾き方でブラッシュアップしました。デモではもともと単音リフで、動きも今とは違っていたんですが、シンコペーションさせてパワー・コードに置き換えていく中で今のリフになりました。リズムは川村さんのデモに入っていたドラム・パターンをそのまま使用しています。

YG:キャッチーなリフから一転、タッピングなどの高度なテクニックを織り交ぜたソロに引き込まれてしまいますが、どのように構築していったのでしょう?

森丘:今回のアルバムではどの曲のギター・ソロにも、自分なりの新たな挑戦を入れています。この曲の場合は「まずつかみを大事にしよう」という意識がありました。一発目のチョーキングはスライドから入り、ドリアンモードの特性音であるメジャー6thを半音チョーキングして、コードに対して7thの音を狙っています。その後はリズム・トリック的な5連符の4つ割りフレーズが登場しますが、アクセントとして4つ割りの頭にピッキング・ハーモニクスを入れることで、聴いている人をハッとさせるソロのスタートにできました。タッピングは5音で1セットのパターンで、トップ・ノートを2回ずつタップしているので、音の流れをつかみやすいフレーズにできたと思っています。ワウは半止めにしてフィルターのように使うやり方はこれまでにもたくさんトライしてきましたが、毎回踏み込むような使い方をしたのは初めてだったので、新たな一面を出せたのではと思っています。

YG:2曲目「フカンゼンネンショウ」、これはヘヴィなリフ・ワークとリズム感がファンク・ロック的な曲ですね。

森丘:このリフはアレンジの際に僕が作ったもので、Key=Aマイナーの曲に対してE音からスタートするんですが、dpsではドロップD・チューニングが基本となっているので運指は少し複雑になっています。リズムはこれまでのdpsの楽曲にも度々登場してきた16分のフィールなのですが、ライヴや楽曲制作をしていく中でメンバーとも感覚的に演奏できるようになってきたので、そこはバンドの強みかもしれないです。

YG:ギター・ソロは強烈なチョーキングと半音階などを使った独特な音使いが印象的ですが、どのように構築していったのでしょうか?

森丘:まずはオケに合わせてアドリブで数テイク弾いてみて、その中で良かったフレーズを採用して構築していく、という流れでした。最近はスケール・アウトのフレーズにハマっていて、中盤はAマイナーのリフに対してCマイナー・スケールでのアプローチを試したところ面白い響きになったので、そのまま採用しました。バックのコードが半音ずつ上がっていく箇所のフレーズも、かなり気に入っています。

YG:3曲目「昼過ぎのコーヒー」、これはどのような発想で制作した曲ですか? 歌メロとオクターヴ奏法の絡みが非常に練られていて、記憶に残りますね。

森丘:この曲は川村さんのデモを聴いた時にレッド・ホット・チリ・ペッパーズが浮かんだので、ベースのスラップが入る曲にしようと決めたところからアレンジを始めました。ベースは忙しいですが、ギターは他の曲と比べると比較的シンプルです。サビにオクターヴ奏法を入れるのはdpsで何度も試してきたアレンジですが、今回は曲調がハードではないので、特に歌に寄り添うフレーズを意識しました。

YG:イントロのリフと一緒にターンテーブルのようなサウンドが聴こえますが、あれはギターの弦を何かで擦って出した音ですか?

森丘:これはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロの影響です。ワウ・ペダルを踏み込んだ状態で固定して、手の平で弦を擦っています。自分が思っていたよりもリアルなターン・テーブルの音が出たので驚いています(笑)。

YG:この曲ではベース・ソロからギター・ソロへ進行していきますが、ベースの安井剛志さんと試行錯誤しながら練り上げていったのでしょうか? 

森丘:僕はアレンジの段階でいつも仮のベースもすべて弾くのですが、その時から音源と同じベース・ソロのフレーズを入れていました。そのソロ・フレーズを弾いている動画と簡単なTAB譜を作って、安井さんに渡して弾いてもらった形です。

YG:4曲目「戦うこと」、これはリフのブラッシングが軽快かつキャッチーさを醸し出していると同時に、ヴァイオリン奏法のような繊細な技が仕込まれていたり、森丘さんの技術の高さがうかがえる曲ですね。

森丘:川村さんから届いたデモが、アコギ1本で弾き語りをしているような昭和のフォークソング風だったので、それをバンド・サウンドにするのがかなり大変で、アレンジは8回直しをしてようやく完成したという、産みの苦しみを味わった曲です…。リフのブラッシングは、元々のデモがアコギでジャカジャカと弾いている形だったので、その要素を少し取り入れてみました。ヴァイオリン奏法は、ウリ・ジョン・ロート、イングヴェイ、ケリー・サイモンさんのようなネオ・クラシカルなギタリストが好きなので、自然と浮かんだフレーズなんです。ヴォリューム・ペダルは使わず、ギターのノブで行なうのがこだわりです!

YG:ギター・ソロではアーミングを使った浮遊感のあるフレーズが聴けますが、この曲にだけアームを使ったのはどういった狙いで?

森丘:もともとはアーム無しで考えていたフレーズだったのですが、淡白な印象だったので、音程を下から持ち上げるニュアンスが欲しいと思い取り入れました。リリース音源でここまでアームでニュアンス付けをしたのは初めてかもしれないので、普段dpsを聴いてくださっている方にとっても新鮮に感じてもらえると思います。

森丘直樹