dpsを始めるにあたって自分のiPodの中に入っていた曲をリセットした
YG:今回の『カミカゼ』はメジャーでの1stEPということですが、どのような作品にしようと思いました?
NM:自分の中ではインディーズ時代から“骨太ロック”をテーマにしているんですが、ライヴをたくさんやりながら曲をどんどん書き、バンドとしての土台がしっかり出来上がったと思うので、その路線をあまり変えずに曲作りに深みを増そうと心がけていたように思います。
YG:収録されている4曲について、細かく聞かせてください。まず「カミカゼ」ですが、ギター・サウンドはファズ風の荒々しさが目立ちますよね。森丘さんはメタル育ちのギタリストですが、こういう音も好みなのでしょうか?
NM:最近変わって来たように感じていますね。以前ソロ名義で作っていた曲はそれこそメタル寄りの音だったんですけど、dpsのようなロック・バンドをやっていく上で、段々と良い意味での粗さを出すとよりかっこよくなるんじゃないかと。自分の中でギター・サウンドのイメージが変化してきました。
YG:誰かに影響を受けたわけじゃなく、ライヴで演奏していくうちに自然と?
NM:そうかもしれないですね。僕はけっこう色々と研究したいタイプなので、dpsを始めるにあたって自分のiPodの中に入っていた曲をリセットし、バンドの方向性に合いそうな曲を入れ直して順番に聴いたりもしていました。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、レッド・ツェッペリン、リッチー・コッツェンのザ・ワイナリー・ドッグスとか。もともとメタル系の速弾き系はこれまでさんざん聴いてきましたし、そこに違う音楽性をプラスするような感じですね。
YG:この曲、サビで不思議な転調をしているのが面白いですよね。
NM:もともとずっと同じKeyで通していたんですが、インパクトを持たせるために変化がほしいと思ったんです。でも上へ転調すると、ただでさえ高いKeyなのでヴォーカル的に合わなくて。試しに1音下へ転調してみたら、意外にもしっくりハマったんですよ。
YG:ギター・ソロは微妙な音使いがたくさん出て来る凝った展開ですが、どのように組み立てていったのでしょう?
NM:実はこの曲をアレンジする前は、スケール・アウトをすることに恐怖があったんです。聴いている人が「あれ?」って思うと嫌だな…という恐れがずっとあったというか。でもマーティ・フリードマンさんと一緒に仕事をさせていただいた時、衝撃を受けたんですよ。マーティさんは半音階をたくさん取り入れながら弾くじゃないですか。「ギターってこんなに自由でいいんだ!」と、視界がバッと広がった感じがして。それをさっそく取り入れてみようということで、この曲で試してみました。
YG:ちなみに森丘さんは、ギター・ソロも構築するタイプですか?
NM:完全に構築するタイプですね。もちろん最初は1度アドリブで通して弾いてみるんですが、その中から良いフレーズがあったら採用して、そこから広げながら組み上げていく形です。
YG:こういうクラシック・ロック風な曲調でここまでの速弾きが出て来ると、初めて聴く人はかなり驚きますよね。
NM:そこが自分の売りだとも思っているので。以前は遠慮していたところもあったんですが、長戸さんや他の方々にギター・ソロを褒めていただくことが多かったので、だったら遠慮せずに出して行こうと思いました。
YG:プロデューサーが「弾くな」と言わないのはいいですね。
NM:むしろ「もっと弾けば?」って言ってくださることもあります(笑)。だったら最初から全開で行こうという気持ちになりました。
YG:2曲目「キャンドルに火をつけて」、これはシャッフルのリズムが印象的なナンバーですが。
NM:作曲はいつもドラムの川村さんが行ない、僕がデモをもらってアレンジする形なんですが、最初はマリリン・マンソンのようなダークな世界観だったんですよ。その路線を保ちながらアレンジしていった感じですね。
YG:ギター・ソロは音使い的には王道のペンタトニックですが、ここまで速く正確に弾くと大きな個性になる…そんな例ですね。
NM:でも序盤は完全に「Love Gun」なんですよ。そこはやっぱり好きなものが出ちゃいますね(笑)。中盤はアドリブで、エンディングはピック・スクラッチで終わるというのを決めて弾きました。
YG:バッキングは左右がオクターヴ違いになっている箇所が多いですよね。これはサウンドをより分厚くしながら、ライヴでの再現性も考慮したアレンジでしょうか?
NM:おっしゃる通りです。ただ、普段はあまりライヴのことは考えずにアレンジすることが多いかもしれないですね。音源としてまず完璧なものを作ることが優先というか。だから完成した後でライヴの練習のために弾いてみたら、意外に難しかったということもあったりして(笑)。