Rachel Mother Goose新作『SYNRA BANSHO』をギタリスト:植木英史が語る!

Rachel Mother Goose新作『SYNRA BANSHO』をギタリスト:植木英史が語る!
Rachel Mother Goose

いい曲を書くために常に勉強している

YG:「Summon The Instinct To Fight」はイントロが不穏で、とてつもなくダークで北欧メタル的な冷たさを感じさせながら、サビは明るく開けるという展開が素晴らしく…これこそまさに今のRMGだからこその曲だと思いました。

植木:この曲も実は“Metal Battle Japan”用に作ったんです。まずイントロ・リフから作り、不協和音を意図的に使用して第一印象をヘヴィにしたいと思いまして。Aメロはとてもダークですが、Bメロからは拍子を変えて明るくなっていく──その絶妙なアレンジを感じてもらえてるのはとても嬉しいです。その雰囲気の変わる手法はラッシュから学んだものです。

YG:「My Ascending Day」の開放弦リフは、今作中でも特にキャッチーなギター・フレーズの1つですね。ギター・ソロでは一瞬イングヴェイ・マルムスティーン的な破壊力も感じました。

植木:ありがとうございます。1拍3連の曲は、勇ましいリフのアイデアが出やすいんですよね。そのリフに対してさらにモーグを使ったリード・フレーズを乗せたいと当初から思ってました。U.K.の「Nothing To Lose」(’79年『DANGER MONEY』収録)のイメージがあったんです。ギター・ソロもイングヴェイがここでアドリブしたらこう弾くかな…というアナライズをしたわけではありませんが、自然にこういうフレーズが出てきた感じです。

YG:それ以上に衝撃だったのが、曲後半での歌劇のような展開だったのですが…。

植木:歌劇のような展開を上手に組んでいくのは、とてもセンスが要ります。色々な曲を聴いてそのようなアレンジを学びましたが、使い所の選択が非常に難しいんですよ。ここではオーギュメントのコードを使用して展開を一瞬で変えています。しかも自然に聴こえるように。常にいい曲を書くために、こういったことも独学ではありますが勉強しているんです。特に新しいプログレのメロディック・メタルとかを聴いて。特に素晴らしいと思うバンドは、スウェーデンのパラリディウムですね。

YG:「The Clock Is Tickin’」のアコースティックの響きにはブリティッシュ・フォークのような影響も感じました。懐かしいと同時に、モダンなブリティッシュ・プログレッシヴ・ロック的なメロディー感もあります。

植木:ありきたりなロック・バラードは作らないでおこうと決めていました。危険な実験ですが、ここはクリエイターとして新しいものに挑む姿勢を崩したくなかったのです。ここでモチーフになってくるのは、サイモン&ガーファンクルがカヴァーしている「Scarborough Fair」(’66年『PARSLEY, SAGE, ROSEMARY AND THYME』収録)のコード進行です。完全なアコースティック楽曲に近いアレンジですが、“人生の残された時間”をテーマに書いた歌詞に合うアレンジは、やはりこのスタイルで試すべきだと思いました。この切ないメロディーの後ろではテンションの入ったコード進行があって、ポール・マッカートニーからの影響です。ポールの曲はコードだけ聴くと、どんなメロディーを付ければいいか分からないようなところがありますが、メロディーが入ると急に整うんですよね。本当に凄いマジックだと思います。

YG:「The Sixth Sense」の静かなイントロからバンド・インしてのヘヴィな展開は、アンサンブルのリズムのタイトさが肝かと思います。

植木:この曲は一番最後に書き上げた曲で、いろんな意味で思い入れが強い一曲ですね。本当はこの曲が1曲目のスピード・チューンになるはずでした。その証拠にイントロがオープニング・テーマのごとく長いですよね。作っている途中で結構壮大なアレンジになってしまったので、アルバムの後半に回したんです。1コーラス目と2コーラス目のアレンジが全然違ったりするのは、最近のヨーロッパのバンドにとても多く、そういうアレンジでも変ではないというのはクイーンがいい例かもしれません。

YG:シンフォニックな楽曲「Dainsleif」は、最初のソロでのメロディー弾きがエモーショナルで耳を惹かれました。

植木:この曲は以前オランダのバンド友達の結婚式に行った際、パリへ足を延ばしてノートルダム大聖堂のミサを観た時に流れていた曲をモチーフにしました。少しオペラのような雰囲気のアレンジもしています。今改めて聴くと、テーマ・リフはイングヴェイ・マルムスティーンの「My Resurrection」(’97年『FACING THE ANIMAL』収録)を彷彿させるように感じますね。だからその延長線上として、僕がリスペクトしているイングヴェイが弾きそうなアドリブ・ソロを入れているんだと思います。もうずっと前から彼の各曲のギター・ソロ、特にフリーで弾いているアドリブの研究に明け暮れてきたので、自分にはイングヴェイの弾くフレーズはどこにアクセントがあるのかが理解できます。やはりいまだに好きなアーティストであり、そのテイストは自分の中に入っていますからね。

YG:最後の「Tomorrow Is Another Day」…このリード・ギターの「美しいと同時に非常に破壊的な面も垣間見せる」というコントラストには、ウリ・ジョン・ロート的なものを感じさせられますね。

植木:たまたまソロの部分のコード進行が彼の曲に似てしまったんですね。そのソロを繰り返し録音している途中で、そのことに気づきました。そこからそのフレーズ以外に美しい素材が思いつかなくなり、結局ウリへのオマージュとして弾いて、しかもジェット・フェイザーやワウまで掛けてしまって(笑)。昔から持っているファン的なスタンスも自然に出てくるので…でもとても気に入っています。僕はウリのフレーズやヴィブラートもかなり研究しましたから。

YG:前作ではいわばオールドスクールな、アンプを大音量で鳴らしてマイクで録るというレコーディング方法を採ったわけですが、その点は今作でも変わりなかったですか?

植木:変わりありません。レコーディングは前作同様に乾 冬比古氏に依頼していて、基本的にギター・サウンド作りは彼のプロデュースによるものと言っても過言ではありません。ほぼ彼に任せて、本当に満足いくドライヴ・サウンドを吹き込むことができました。

YG:その他、レコーディングの作業で前作と違った部分があれば教えてもらえますか?

植木:前作では前所属レーベルが所有していた、御殿場にある映画館を改造したスタジオを使用しましたが、今回は名古屋にあるJOYSOUND 601という地元のスタジオでドラムとベースを同時録音し、エレクトリック・ギターはKazu Guitar Village(岐阜県)の工房近くの公民館を使いました。音は外にダダ洩れですが、村の方の応援もあって苦情はなかったのが幸いです。キーボードとアコースティック・ギターはまた別のスタジオで録音し、ヴォーカルに関しては前作と同じソウルのスタジオで録っています。

YG:コロナ禍による大変な状況はまだまだ終息への動きを見せていませんが、植木さんは今後の活動についてどんなヴィジョンをお持ちですか?

植木:ご承知の通り我々は韓国と日本の混合国際バンドです。今はとにかくコロナが終息し、改めて外国人が入国できるようになることを待つばかりです。せっかく作品の売り上げや評価が前作を大いに上回ったのに、ツアーができないというのは非常に残念です。しかし終息後にはすぐに国内ツアーを発表したいと思います。そしてヨーロッパ遠征も目標にしていますから、それが叶うように活動を展開したいと思っています。また今は公開できませんが、もうすぐ皆さんに素晴らしい情報をお伝えすることができると思いますので、RMGのHPやSNSで情報をチェックしてくださいね。

Rachel Mother Goose 公式ウェブ
https://www.rachelmothergoose.com/