キャメロットのトーマス・ヤングブラッド「日本で大掛かりなショウがやりたい!」

キャメロットのトーマス・ヤングブラッド「日本で大掛かりなショウがやりたい!」

ギターとは、クリエイティヴになるためのアイテム

YG:今回のツアーでは、『THE AWAKENING』の「New Babylon」に客演しているアド・インフィニトゥムのメリッサ・ボニーがコーラス要員を務めていますが、そもそも彼女を起用したキッカケというと?

TY:メリッサは元々このバンドのファンだったんだ。以前、俺達のスイスのショウを観に来ていて、終演後に話したりしたんだけど、その頃、俺は彼女が歌えるなんて全く知らなかった。でもその後、彼女が俺達の曲をカヴァーしているのをYouTubeで観たんだ。そして、彼女のバンド:アド・インフィニトゥムはレコード契約を獲得した。“AD INFINITUM”というバンド名は、きっと「March Of Mephisto」の歌詞から採ったんだと思う。程なくして、俺はニュー・アルバムのゲストについて考え始め、そのリストの中にはメリッサが入っていた…ということさ。そうして今、彼女は俺達とこうしてツアーを共にしている。毎晩、ド肝を抜いてくれているよ。ホント最高だね!

YG:個人的にもメリッサは、歴代のサポート・シンガーの中でもベストだと思います。過去にはアリッサ(ホワイト=グルーズ:アーチ・エネミー)や、シャルロット(ウェッセルズ:元ディレイン)などが起用され、ずっと以前には、あなたの奥さん(マリー・ヤングブラッド)も良い仕事をされていましたが──メリッサは表現力に長けているだけでなく、長身なのでトミーと並んでも見栄えがしますし、そこに立っているだけで絵になり、誰もが惹き付けられます。

TY:ああ、同感だ。彼女は単にサポート・シンガーをやっているだけじゃない。このバンドをレベル・アップさせたんだ。勿論、過去のゲストもみんな素晴らしかったよ。アリッサも、エリーセ(リード:アマランス)も…ね! しかし、メリッサが素晴らしいのは、すべての役割を完璧にコナしているところだ。歌も上手いし、グロウルも強烈だし、存在感という点でも図抜けている。衣装も素晴らしいし!

YG:はい。あの仮面も…!

TY:そうそう!!

YG:では、今回持ってきたギター周りの機材を教えてください。昨日は青のESP“Eclipse”をメインで使っていましたね?

TY:うん。俺のお気に入りなんだ。同じのが10本ぐらい欲しいね!(笑) あと、「March Of Mephisto」で弾いたE-II“Horizon”はESPに提供してもらったんだが、アレも凄く良い。音だって最高だったし。

YG:「March Of Mephisto」1曲だけで…というのには、どんな理由が?

TY:あの曲で使わないといけない…という理由は特にない。ただ単に見栄えが良いし、せっかくあるんだから、使わない手はないだろ? ただ飾っておくだけじゃ勿体ないよ。

YG:もしかして、アーム付きだから…かと思ったのですが?

TY:いや、別にアームは必要ないんだ。昨日、ちょっとは使ったと思うけど。もう長いことアームは積極的には使っていないんだ。

YG:ロイ時代は、“Horizon”でちょくちょくアームを使っていたという印象です。「Forever」のソロに入る前のプレイなんかは、今も記憶にあります。最近、アームを使わなくなったのには理由が何が…?

TY:『GHOST OPERA』までだったかな? アームをよく使っていたのは。でも、“Eclipse”をメインで弾くようになってからは、やらなくなったな。別にロイが関係していたワケでも、曲のせいでもない。要は見た目の問題さ。今どきのバンドって、奇抜でエクストリームなモデルではなく、LPシェイプを使っているのをよく見かける。別に新しくモダンなギターじゃないのにね。それで俺も、自分の見てくれをよりモダンにするべく、“Eclipse”を弾くようになったのさ。実際、今でもモダンに見えると思うし、“ゴシック”というのは違うかもしれないけど──ともかく俺自身、あのギターが色々とバランス的にも凄く気に入っているんだ。

実は今、新しい“Horizon”のカスタム・ギターを製作してもらっているところでね。そのギターはフレット数が多いから、高音弦を多用することになりそうで、そうするとまたアームが使いたくなるような気がする。ヘッドも、ネックのラジアス(指板R)も、バインディングも、すべてオリジナルのカスタム・ギターなんだ。日本へ来たんで、見せてもらえるかもしれない…と思っていたが、ESPの工場までは都心から2時間はかかる…と聞いたから、出来上がってくるのを待つことにした。半年後ぐらいには、新しいコレクションとして手元に届いているかな? 凄く楽しみだよ!

YG:ちなみに、色は?

TY:青だよ。青い“Eclipse”が好き過ぎて(笑)、“Horizon”も同じにしたいんだ。心理的な何かがあるのかもしれないな。

YG:今回、アンプは何を?

TY:今はNeural DSPの“QUAD CORTEX”を使っているよ。

YG:ステージ袖にマーシャルのキャビネットが置いてありましたが?

TY:“QUAD CORTEX”の音は卓とマーシャルに送られるんだ。俺はイヤモニを使わないから、ステージ上で自分のギターの音を聴いておきたい。以前、最高のイヤモニを買って試してみたんだけど、やっぱりオールドスクールだからな。それで、セイモア・ダンカンの“PowerStage 200”を通してキャビネットから鳴らしているのさ。

YG:“QUAD CORTEX”を使い始めたキッカケは?

TY:この夏の北米ツアーで、スペシャル・ゲストとしてバトル・ビーストを迎えたんだけど、あそこのギタリストのヨーナ(ビョルクロト)が機材オタクでね。試しに「“5150”ベースで何かイイ音ない?」と訊いたら、1週間ぐらいかけて、バックステージにあった俺の“QUAD CORTEX”のセッティングをやってくれたんだ。彼が言うには、「“5150”のブルー・チャンネル・ベースで、EVHキャビネットを通したセッティング」なんだそうだ。それで、サウンドチェックの際に試してみて、少しだけ微調整を加えて使うことにした。一番の理由は、サイズだね。ツアーで運ぶのがずっと楽になったよ。

YG:以前ケンパーを使っていた時は、チューニングが自動で切り替わるプログラミングを採用していましたが、“QUAD CORTEX”でも同じくですか?

TY:「Phantom Divine (Shadow Empire)」(’18年『THE SHADOW THEORY』収録)での、C♯への切り替えで使っているよ。他の曲に関しては、すべて俺自身でチューニングを替えている。「Song For Jolee」や「Nightsky」はC、「March Of Mephisto」はD…という風にね。ギターは基本全弦1音下げチューニングになっていて、曲によって自分でドロップC(6弦のみさらに1音下げ)にするのさ。ライヴ中に自分でやるのは大変だと思うかもしれないけど、実際は大したことないからね。

あと、プログラミングという点では、リズム、ソロ、クリーンもしくはロング・ソロ…という3つの音色の切り替えは自動でやっている。俺が足で踏む代わりに、MIDIで切り替えてくれるんだ。

YG:ワウも“QUAD CORTEX”で?

TY:そうだ。“QUAD CORTEX”のワウ・サウンドがとても気に入っていてね。

YG:プレイ面では、以前と比べてアーム使用は減ったものの、ギター・ソロはロイ時代よりも重視するようになった…という印象があります。

TY:そうかな?

YG:若干かもしれませんが…。

TY:ああ、少しだけならそうかもしれない。前々から言ってきたように、俺にとってギターとは曲作りのためのツールであり、クリエイティヴになるためのアイテムなんだ。だから、もし俺がイングヴェイ・マルムスティーンのように速弾きが出来たとしても、それをひけらかすようなことはない。勿論、それをやっているギタリスト達は、それはそれで素晴らしいよ。でも俺は、ギターだけに限らず、音楽全般に対するアプローチからして、ずっとコントロールされていて、控えめにしていたいんだ。

ただニュー・アルバム(『THE AWAKENING』)は、ギター・ワーク多めだと言えるかもしれない。音だって、よりヘヴィになっているしね。それってここ数作、サシャ(ピート:プロデューサー)と常に議論してきたことなんだ。プロデュースやミックスなんかに関してと一緒にね。俺自身、ギターにもう少しエッジを効かせたいと思ってきたんだけど、今回はヤコブ・ハンセンがミキシングを手掛けたことで、それが可能になった…とも言えるな。


今回のトーマスのアンプ周り。メインのアンプ&エフェクト・サウンドは“QUAD CORTEX”で作り、“PowerStage200”を介してキャビネットに送られる…とのことだが、そのキャビネットの側にはケンパー“Profiling Amplifier”も用意されていた。

YG:キーボードとの掛け合いソロも、以前より増えていますね?

TY:うん。楽しいからな。実はさ、キーボーディストのオリヴァーってギターも上手いんだよ。上手いだけじゃない。何でも弾けるタイプなんだ。だから将来的には、彼がセカンド・ギタリストとしてライヴに臨む…といったことすら不可能ではない。そうすれば、ギター・ソロの掛け合いも出来るな!

YG:これまでに試したことは?

TY:いや、全くの新しい試みだ。

YG:では、曲によってギターを弾いたり、キーボードを弾いたり…と? UFOのポール・レイモンドのように。

TY:そうだ。ピアノは必ず弾くけどね。まぁ、そういう可能性もある…という話をしているだけだけど。

YG:ところで、以前に「アコースティック・アルバムを作りたい」とおっしゃっていたことがありますが、そのアイデアはまだ生きていますか?

TY:勿論。でも、コロナのせいで何もかも保留せざるを得なくなってしまった。俺もコロナに罹って、重症化してしまい、通常のアルバムを制作するだけでも大きな成果だと言えるぐらいの状況だったりもしたしね。まぁ、いずれアコースティック・アルバムだけでなく、オーケストラ・アルバムもやれたらイイな。ライヴ収録もやりたい。いつか日本で大掛かりなショウをやって、ブルーレイに収めたいんだ。もしオーケストラと一緒にやるんだったら、プラハの楽団からアプローチがあったんで、チェコで収録するという手もある。

YG:日本でオーケストラを調達するというのはどうでしょう? コストを抑えるために学生オーケストラを起用するバンドもいるようですよ。

TY:なるほど。それも選択肢としてあるな。とにかく俺としては、日本で大掛かりなショウがやりたいんだ。出来ることなら、パイロなども駆使してね。そのためには、色々と準備が必要になるよ。

YG:次のスタジオ・アルバムにはもう取り掛かっていますか?

TY:アイデアに取り組み始めるのは来年だな。4月に2度目の北米ツアー、それと秋にも2度目のヨーロッパ・ツアーがあるけど、その間に時間があるから。それに、『THE AWAKENING』に入れても良かったアイデアが2〜3曲分残っているんで、それを聴き返してみようと思っている。まぁ、アイデア自体は既に山ほどあるよ。

YG:それは自分の中で…ということでしょうか?

TY:いや、このバンドのメイン・ソングライターは俺とトミーとオリヴァーだから、その3人にある…ということさ。

YG:トミーは今、カナダ在住だそうで。スウェーデンにいた頃よりも、一緒に作業し易くなったのでは?

TY:そうでもないよ。同じ通りにでも住んでいない限り、スウェーデンでもカナダでもそう変わりはない。ケイシー(グリロ:前dr)がバンドにいた頃だって、彼とは同じフロリダ州在住だけど、実際に会う機会はそう多くなかった。本当に近所じゃなかったら、あまり関係ないな。それでも、時差が6時間から3時間になったのは、それなりに良かったけどね。

YG:なるほど。ともあれ、将来の計画が色々と聞けて、楽しみが増えました!

TY:ああ。期待していてくれ!!

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