『THE FOREST SEASONS』のテーマに沿ったギターが欲しかった
YG:では、今回日本へ持ってきた機材を確認させてください。まずはギターから。
テーム:俺はチューニング違いで2本用意している。普段は3本で、1本をバックアップにしているんだけど、今回のアジア・ツアーは飛行機移動が多いから、2本のみにしたんだ。1本はドロップC、もう1本はスタンダード・チューニング。どちらもアイバニーズ製で、楽器店でも手に入るストック・モデルながら、知り合いのショップに頼んでカスタマイズしてもらっている。カスタム・ショップに依頼すると長く待たされるんでね。ストックと異なるのは、ボディーのカラーやペグ、インレイなどだ。『THE FOREST SEASONS』のイメージに合ったギターが欲しかったんで、バンド・ロゴのインレイなど、自分達で色々と手配したんだよ。
アシム:俺も2本持ってきていて、“RGA”と“RG”のどちらもストック・モデルだけど、同じく手が加えられている。両方のハイブリッド的なモデルが欲しくて、“RG”のカッタウェイを“RGA”に近い形状にしてもらったんだ。あとバックのジョイント部分も、ハイ・ポジションでもプレイし易いよう加工されているよ。カスタマイズしてくれたカウル・クックルは、親切にも蓄光タイプのインレイを使うことも提案してくれた。アレは暗いステージでもポジションが分かって助かるんだ。一方、全弦1音下げの“RGA”は『THE FOREST SEASONS』のテーマに沿った仕上がりになっている。ボディーに施されたステイン・フィニッシュなどがそうだね。あと、“Luminlay”のポジション・マークも採用されているよ。
テーム:俺のギターにも、日本製の蓄光素材を使ったインレイが使われているんだ。
アシム:暗いステージでも曲の弾き始めがちゃんと確認出来るのは助かるよ。あと、ペグはヒップショット製、ブリッジは“Evertune”に変えた。ピックアップはフィッシュマン“Fluence Modern”で、セレクターは3ウェイだ。テームのギターには、裏側にキャビティもあるんだっけ? 穴が空いていて、より軽量になっているんだよね?
テーム:元々は“JBM100”という、ペリフェリーのジェイク・ボーウェンのモデルなんだけど、ボディーがマホガニーでちょっと重量があるんで、肩や首に負担を掛けないよう、出来るだけ軽くしてもらった。キャビティは電気系統を入れるのに使うような空洞になっていて、穴の目隠しのカヴァーが木製なのもイイ。ネックは一方が3ピースで、もう1本は5ピースだ。ピックアップは“JBM”で、ちょっと古めのを搭載している。ドイツの楽器店で中古で見つけたヤツなんだ。
YG:トーン・ノブはないのですね?
テーム:うん。元々“JBM”には付いていない。
アシム:俺のギターには付いていたけど、どちらも取り除いてある。あと実は、ヴォリューム・ノブの位置も変更されているんだよ。元々はトーンだったところにヴォリューム・ノブを付けて、空いた穴は埋めた。勿論、プッシュ/プルでコイル・タップ出来るようになっているよ。
テーム:音色的にはどちらも変わらないけど、ホットにするとダイナミクスが増える。モードの切り替えみたいなモノだね。“Fluence”は、3ウェイのセレクターと組み合わせると、合計で6種類のサウンドが得られるんだ。
YG:テームのギターは、高ポジションだけスキャロップ加工しているんですね?
テーム:ああ。ハイ・ポジションでチョーキングすることも多いから、その際、指の上に弦が乗っかるより、下に潜るようになって欲しいと思ったんでね。アシムはどうだっけ? あまりハイポジではチョーキングしないのかな?
アシム:うん。2本ともそのままだ。改造の準備期間があまりなかったのもあるけど…。
テーム:あと注目して欲しいのが、ストラップのロック部分だ。ボディー・サイドに付いていて、ここにもウィンターサンのロゴを入れてもらっているんだけど、普通はケーブルを差し込んでも、端子の部分が見えるだろ? でも、コレはもっと奥の方まで入るように加工してある。端子が全部隠れてしまうんだ。これだったらプラグが曲がる心配がないし、スタンドがなくても、どこかに立てかけて置けるからとっても便利だよ。
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YG:アンプは何を持ってきましたか?
テーム:フラクタル・オーディオの“Axe-FX”だ。
YG:シミュレートしたアンプ・モデルは?
テーム:“FAS METAL”というパッチ名で、それがメインのサウンドなんだ。フラクタルのオリジナルだと思う。多分、メサブギー辺りがモチーフになっているんじゃないかな?
YG:お2人とも同じですか?
アシム:うん。
YG:ヤリも同じモノを使っていたのでしょうか?
テーム:そうだよ。
YG:他にエフェクターは?
テーム:すべて“Axe-FX”から出している。ライヴでは30種類のサウンドを使い分けているんだ。色んなパッチを組み合わせてあって、プログラムすることでショウの最中にパソコン上で自動的に切り替わっていく。音量の変化やディレイのパラメータ、ステレオ・サウンドなども含めて…ね。
YG:そうすることで、プレイのみに集中出来るというワケですね。
テーム:その通り。
YG:ちなみに、今はヤリのパートをテームが弾いて、テームが元々弾いていたパートをアシムが担当しているのでしょうか?
テーム:まぁ、大体そんな感じだね。俺は、ソロ以外はこれまで自分が弾いていたパートをそのまま弾いているよ。ヤリは歌っている最中にリズム・パートを弾いていたから、その間は俺がリード・フレーズを弾く。それを今も、そのまま自分で弾いているんだ。アシムには、俺が以前弾いていたソロと、ヤリが担当していたリズム・パートを弾いてもらう。俺も幾つかソロやリードを覚え直さないといけないところがあったし、アシムとの振り分けが決まったあとに、また変更することもあったけどね。
YG:アシムがソロを弾いている曲は?
アシム:「Winter Madness」だ。それから、「Death And Healing」にはギターの掛け合いがある。あと、「Sons Of Winter And Stars」のイントロを弾くのは俺。以前はヤリが弾いていたパートで、オーディションの時にも弾くよう指定されていたから、そのままやっているよ。新作に関しては、テームがギター・パートを振り分けた。何故なら、彼の方が曲を熟知しているからさ。ただ、時には入れ替えて弾くこともあるし、「難しい方をやってくれないか?」と言われることもある(笑)。
YG:テームは以前と変わって、混乱しませんでしたか?
テーム:それまで弾いていたパートを間違って弾いてしまったり、忘れたりもするけど、そう大変ではなかったな。当初、想像していたよりは…ね。ソロを弾くのはやっぱり楽しい。ヤリは凄いプレイヤーだから、やり甲斐も大いにある。中には、自分なりの解釈を加えたりもしているものの、殆どはオリジナル通り忠実に弾いているよ。ただ、ヤリもライヴではアルバムと違うプレイをすることがあるから、アルバムのヴァージョンを聴いていると、一体何を弾けばイイのか分からなくなってしまうこともある。それで、原曲とライヴ・ヴァージョンの中間をいくようなソロにもしているんだ。楽ではないけど、シュレッドが沢山あって興味深いし、結果的に楽しく弾けているよ!
YG:では最後に、お2人にとってのギター・ヒーローのトップ3を教えてください。
テーム:一番好きなのは、ギター・ヒーローではないかもしれないけど、プレイ面でいうとガスリー・ゴーヴァンだね。イメージ的な面も含めて大きなインスピレーションを受けたのはスティーヴ・ヴァイ。それから、ショーン・レインもかな。彼は特別な存在なんだ。
アシム:俺は──まずはイングヴェイ・マルムスティーン。最初はあまり好きじゃなかったけど、その音楽を理解してからは、一番の大きな影響源となったよ。パフォーマーとしても、コンポーザーとしても素晴らしい。やっぱり彼は“ギター・ヒーロー”だと思うし。2人目はヴィヴィアン・キャンベル。そもそも俺はディオの大ファンだったからね。3番目は、迷うことなくデヴィッド・ギルモアを挙げるよ。実は、彼にもかなり影響を受けているんだ!