匠/sukekiyo『IMMORTALIS』

匠/sukekiyo『IMMORTALIS』

制作中は、寝て起きたら別の曲になってる…みたいなことも(笑)

sukekiyo
 

YG:アルバム『IMMORTALIS』では、曲作りはどのように進むことが多かったですか? 京さんのソロ・プロジェクトなので、もちろん何らかのアイデアが京さんからインプットされて始まるわけですよね? そこからどのように発展していくのでしょう?

匠:最初に2人だけの状態では、薄暗い部屋に京さんがいて、僕がいて、Macと紙と鉛筆…みたいな感じでした。そこで京さんから出て来る色々なキーワードを元に形にしていくんです。そのうちに「鍵盤で弾いてみて」「次はギターを弾いてみて」ってどんどん言われ…。京さんからアイデアを次々にインプットされまくって、もう「メーターをオーバーして赤ランプが付いてます!」って感じ(笑)。それに触発されて、自分からもどんどんアイデアが出て来る。そんな風にしてまとめたものを他のメンバーに投げる…というやり方がまず1つですね。あとはゲリラ的に全メンバーで曲出しをすることもあって、いいと思ったものをそのままみんなですぐに仕上げるという純粋なパターンもあります。そしてそれらを部分的もしくは全体的に、ちゃぶ台返しして改造するパターン。曲を発展させるパターンは今のところ、大まかにわけてこの3つだと思いますね。

YG:「latour」で聴けるクリーンと歪みリフの絡みに代表されるように、匠さんとUTAさんのギターのコンビネーションが非常に面白い曲が多いですが、アレンジはどのように詰めていくのでしょう?

匠:いきなりいいところを突いて来ますね(笑)。「latour」はUTAさんが原曲者で、最初にあのイントロのクリーン・フレーズの世界観が出来上がってたので、それを壊さないようなアプローチを…と悩んでいたんです。そうしたら京さんが「気にせずに一度、思いっ切り自分らしいギターでやってみて」と言ってくれて、「ならば対極のリフで攻め入ろう!」と思ってやったらハマりました。他の曲でも、最初はUTAさんと2人で一緒にフレーズを考えるような作業もしていたんですけど、それだと何だかお互いの意識がどんどん寄り添う方向になって、“普通”な感じになるんですよ(笑)。sukekiyoの理念の1つに「思い付いたもん勝ち、やったもん勝ち」というのがあって、敢えてお互い好きな時に好きなところを好きなだけ作業して、曲のセッション・データをやり取りする方法が一番合っていましたね。あまり言葉をかわさずとも、トラックから意図を読み取り合うような感じです。ただ、油断ならないんですよ。寝て起きたら別の曲になってる…みたいなこともありますから(笑)。だからギターのアレンジにしても、曲によって様々ですね。どちらかがその曲に関して強いイニシアティヴを持っていたり、相手のパートまで考え付いたりした時は、お互いあっさりとそのフレーズを受け入れますし。そもそも京さんがもう1人のギタリストを立てるにあたり、性格も含めて僕とは全く違うタイプのセンスがある人を求めていたんですが、それがまさにUTAさんでした。最初はその対極性が不安だったりもしたんですが、それがこうやって何とか上手くやれているわけですから、最初から青写真が見えていた京さんが怖いですね(笑)。

YG:そんなUTAさんに対しては、具体的にどのようなギタリストだという印象を持っていますか? また匠さん自身、自分はどのようなギタリストだと思っていますか?

匠:前述の通りで、僕にはないものをすべて持っています! 何から何まで。まず求める音色の理想像への出発点が、僕は概ねハムバッカー、UTAさんはシングルコイルという時点で全く異なりますね。もちろん好きな音楽の共通点は多いんですが、好きになる“なり方”が全然違う。言葉では説明しづらいですけど、きっとロマンを感じる部分も、近いようでいて紙一重でズレています。UTAさんは何から何までギターで弾いてしまうんですよ。例えば「鵠」という曲の僕のギター・ソロの後にさざ波のような音が入っているんですが、あれは彼がギターで弾いたんです。音色で感動させられたのは何年ぶりだろう…という感じでしたね。そんな素敵な変態ギタリストです。対して僕は、譜面ではガンガン思い浮かぶけど、ギタリストとしてそのイメージに対する演奏技術が足りない部分も感じるから、シンセやピアノにいくんですよ。ただフォークやクラシック、メタル、映画音楽といった影響を自分の血に流し込んで、ギターから自然に音を出せているとは思いますね。まぁ恥ずかしいくらいに、自分らしい独特な感じなんだろうなぁ…とは思います。