匠/sukekiyo『IMMORTALIS』

匠/sukekiyo『IMMORTALIS』

DIR EN GREYの京(vo)によるソロ・プロジェクトとして結成されたsukekiyoが、1stアルバム『IMMORTALIS』を4月30日に発表した。ヘヴィかつ美しく、なおかつ多彩な展開を内包しているという意味でDIR EN GREYとの共通項はあるが、より詩的であり耽美的、なおかつ童謡のような和の雰囲気や宗教的な荘厳さを含むその音楽性は、他の何とも比較できない個性的なものとも言える。そんな唯一無二の音を生み出すために京を支える存在の1人が、ギタリスト/ピアニスト/マニピュレーターとしてバンドに貢献する匠である。彼にはもう1人のギタリストであるUTAとのコンビネーションの話も含め、アルバムの制作秘話を語ってもらった。

sukekiyoの音楽は全く自由なものだと考えています

YG:sukekiyoは京さんのソロ・プロジェクトという形で結成されましたが、5人のメンバーはどのようにして集まったのでしょうか?

匠:詩集といった京さんの様々な表現の延長線上として、彼が思い描く音のイメージを2人で一緒に具現化していったのが始まりでした。その後、時間が経ってサウンド・スケッチが溜まる中で、他の表現者も必要だという流れになり、YUCHI(b)、未架(dr)、UTA(g)の順で加わって5人が集まりました。自分的には「バンドを組む」という感覚ではなかったですね。運命の絲に引かれるような感覚で集まりました。まさか自分が正式メンバーだなんて、光栄です。

YG:匠さん自身の現在までのキャリアを簡単に教えてください。ブログには、DIR EN GREYのマニピュレーターの他、様々なアーティストの作品のプログラミングで参加したり、採譜の仕事をしたり…と、幅広い活動が書かれていますね。

匠:もともとは京さんと同じ事務所に、バンドで所属していまして。後輩として、京さんからアドヴァイスをたくさんもらっていました。夜中にネットを介して濃い密度で曲のやりとりをしたこともありました。自分のバンドを解散する時、事務所のディレクターさんから「お前はマニピュレーターに向いている」と言われ、短期集中修行の後、すぐにDIR EN GREYのマニピュレーターになり、勉強しながらやらせていただいてます。その流れで、いわゆる裏方としての仕事も色々とするようになりました。音にまつわることなら何でも、貪欲に挑戦したいと思っています。

YG:ギタリストとしては、どんな人たちに影響を受けて来ましたか? またマニピュレーターとしては?

匠:ギタリストとしては、まずフォーク世代をどっぷり謳歌した母の血が濃いようです。影響を受けた人は多数いますが、国外ではジミー・ペイジ、ランディ・ローズが2大巨頭ですね。レッド・ツェッペリンの「Stairway To Heaven」を聞いた時には衝撃的でした。自分が生まれる10年も前に、もうこんな大作が作られていたなんて…。ランディ・ローズのアプローチに関しては、百花繚乱の’80年代に出尽くした様々なギター・フレーズのすべてに影響を与えたと思います。日本ではX JAPANのHIDEさんとPATAさん、LINDBERGの平川達也さん、そしてLUNA SEAのSUGIZOさん。マニピュレーターとしては、その言葉自体を、hideさんのソロ・バンドのメンバーでX JAPANの担当もしていたI.N.A(稲田和彦)さん、それにLUNA SEAの担当をしていたd-kiku(菊地大輔)さんで知りました。前述の短期集中修行は、d-kikuさんの下でさせていただいたんですよ。それも大切な人生の分岐点でしたね。よく考えると、高校生時代の初ライヴの時、シンセサイザー同期で演奏をしていたことがあるんですよ。事前に手弾きで打ち込んで、ライヴ時に自分でシーケンサーのスタート・ボタンを押して曲を始める…みたいな。方法こそメチャクチャですが、そんな経験もあったので、マニピュレーターにはなるべくしてなる運命だったのかなとも思います。

YG:sukekiyoの音楽は“ヘヴィ”で“プログレッシヴ”で“美しい”ものである一方、個人的には“宗教的”“童謡的”“和風”といったキーワードも思いつきました。匠さん自身は、このバンドの音楽をどのように解釈していますか?

匠:もう全く自由なものだと考えています。もはや「ジャンル付けされたくない」といった概念すらも超越していて。聴き手側に思い付いてもらえるそういったキーワードは、きっと京さんを始めとしたすべてのメンバーの血に潜在的にあるもので、それが色んな混ざり方をして自然に出たんだと思います。その引率役が京さんで、みんなの力を強烈に引き出してくれるんです。実際にトラックをまとめるのは大変ですけど(苦笑)。そんな風に自由である一方、自分的には譜面的解析をしっかり行なっておかないと効果的には聞かせられないという、西洋的な音楽概念も持っているんですよ。だからプリプロのイメージ・スケッチ段階は自由ですが、方向性が定まってからは和音の聴かせ方などを細かく詰めます。曲にもよりますが、「細かいことの積み重ねが大事」っていう自分の定石は拭えないので。