アモルフィス待望の日本帰還、近作からのセットで大合唱! 渋谷クラブクアトロ、2023.9.14

アモルフィス待望の日本帰還、近作からのセットで大合唱! 渋谷クラブクアトロ、2023.9.14

’18年6月の前回来日から実に5年余──フィンランドのメランコリック&プログレッシヴなデス・メタラー:アモルフィスが、9月中旬に待望の日本帰還を果たした! ご承知の通り彼等は、以前──’20年4月に再来日するハズが、コロナ禍により’21年1月に延期となり、それでも実現叶わず、結局のところ、その時は来日自体が中止に…。結成30周年を祝して活動期間を3つに分け、“The 1st Decade:1990-1999”“The 2nd Decade:2000-2009”“The 3rd Decade:2010-2019”と、日替わりのスペシャルな演目が計画されていただけに、残念にも多くのファンが──そして勿論、バンドの面々も──涙を呑むこととなった。だからこそ、ようやくの再訪は大いに歓待され、まさに待望だったのだ。

今回、東京での2公演では、’20/21年のリヴェンジとして、日替わりセットにて改めてバンドの軌跡を集大成したショウを…と期待されたがそうはならず。’22年2月にニュー・アルバム『HALO』がリリースされていたのもあり、言わば通常の新作ツアーとなっていた。いや…それでも、新曲のライヴ披露を楽しみにしていたファンは沢山いただろうし、当然ながら古めのレパートリーもちゃんとプレイしてくれたので、きっと“Decadeシリーズ”じゃなくてガッカリ…ということはなかったろう。2年後には結成35周年、3年後にはデビュー35周年が巡ってくるし、いずれまた日本で何らかの集大成ライヴや周年ライヴが行なわれる機会もあるに違いない。ともあれ、ここでは東京公演2日目、9月14日(木)の渋谷クラブクアトロでの模様をお伝えしていく。

壮大&壮麗なイントロSEに導かれ、ショウは『HALO』のオープニング・チューン「Northwards」でスタート! 『HALO』ジャケのバックドロップがあるだけで、ステージ上はごくシンプル。下手側にトミ・コイヴサーリ(g, vo)、その逆側にエサ・ホロパイネン(g)というギター・チームの立ち位置もこれまで通りで、他のメンバーも含め、みんなあまりアクティヴに動き回ることはない。まぁ、フロントマンのトミ・ヨーツセンはそれなりに動くし、ホロパイネンの方のトミとベースのオリ=ペッカ・ライネは時々上手側に行ったりもするし、そもそもがステージ狭しと走り回るようなバンドではないのだから。基本エサは自分の持ち場から離れることなく、ある意味淡々とプレイし、時に観客の反応の良さに笑顔を浮かべつつ、メロディックかつエモーショナルなフレーズにたっぷり情念を込めていた。

バンド

トミ・ヨーツセン
Tomi Joutsen(vo)

エサ&オーリ

それぞれの使用ギターは、トミがお馴染みESP“Eclipse”、エサは’18年来日後から使い始めたESPのカスタム・モデルで、“Mystique”をよりオーセンティックな形に寄せたような見た目の後者は、これが日本デビュー。ヨーツセンもエサをコールする際、「…with new ESP guitars!」と叫んでいた。ただ、ピックアップがこれまでと同じだからか(ネック側がセイモア・ダンカン“’59 Model”、ブリッジ側は“Duncan Custm”と思われる)、特段サウンド面で変化や差異は殆ど感じられず。トレードマークであるリード・パートでのワウは、一瞬で聴く(&観る)者を惹き付けてしまう威力を依然誇っていたし、「Death Of A King」(’15年『UNDER THE RED CLOUD』収録)では(恐らくケンパーを使い)エレクトリック・シタールが見事に再現されてもいたし。

一方のトミは、基本リズムに専念しつつ、楽曲によってはアルペジオやトリルで変化を付けたり、リード・フレーズを奏でたりもして──また、元々グロウル・シンガーだからして、ヨーツセンよりも深みのある咆哮コーラスを随所に入れ、一部初期曲でセカンド・ヴォーカルを任されるパートもあって、実は多彩に大活躍。本編ラストに披露された「My Kantele」(’96年『ELEGY』収録)のエンディング・パートでは、トミ~エサというエモいソロの連打があり、毎回それを楽しみにしているファンも少なくない。

トミ・コイヴサーリ
Tomi Koivusaari(g)
エサ・ホロパイネン
Esa Holopainen(g)
サンテリ・カリオ
Santeri Kallio(Key)
ヤン・レックベルガー
Jan Rechberger(dr)
オーリ・ペッカ・ライネ
Olli-Pekka Laine(b)

気になるセットリストは下記の一覧の通り。演目の約半数が近作からのナンバーで占められ、ヨーツセン加入以前のアルバムからのセレクトは、『TALES FROM THE THOUSAND LAKES』(’94年)から「Into Hiding」&「Black Winter Day」(+SE「Thousand Lakes」)と、上述の「My Kantele」のみで、その他はすべてヨーツセン加入後──『ECLIPSE』(’06年)以降の作品から。もっと初期曲が聴きたい…という長年のファンもいるかもしれないが、全作品を網羅して毎回4時間のショウをやるワケにもいかないし、逆に考えると、キャリア30年以上のベテランにもかかわらず、往年の定番人気曲に頼らずとも最近のアルバムから中心のセットが組めるなんて、実に素晴らしいではないか。

しかも、何度となく観客の大合唱が起こるぐらい新しめの曲もすっかり浸透していて、それもバンド冥利に尽きるというもの。いやはや、『SILENT WATERS』(’07年)や『THE BEGINNING OF TIMES』(’11年)といった良作・佳作から1曲もプレイされなかったのに、それでもこんな充実のセットが組めるなんて、凄いとしか言いようがない。次回は是非5年と空けず、コロナ前と同じく1~2年のインターヴァルで再来日してもらいたいものだ…!!

バンド

アモルフィス@渋谷クラブクアトロ 2023.9.13 セットリスト

1. Northwards
2. Bad Blood
3. The Four Wise Ones
4. The Moon
5. Thousand Lakes
6. Into Hiding
7. Black Winter Day
8. Silver Bride
9. Sky Is Mine
10. Wrong Direction
11. Heart Of The Giant
12. Seven Roads Come TogeTher
13. On The Dark Waters
14. My Kantele
15. House Of Sleep
[encore]
16. The Bee