TERRA ROSA
午後3時、METALステージにテラ・ローザが降臨! 全体で4バンド目と、キャリア40年超を誇る様式美HR/HMの大御所にはちょっと早い出番だが、観客の殆どにまだ体力が有り余っている時間帯と考えれば、それはそれで良かったのかも。バンド・ラインナップは、唯一のオリジナル・メンバーである首魁キーボーダー:岡垣“JILL”正志に、三宅庸介(g)&堀江睦男(dr)とデビュー・アルバム『THE ENDLESS BASIS』(1987年)の2人、さらには、岡垣が率いるアフロディーテの荒木真為(vo)、OIL、クラウド・フォレスト他の宇都宮“LEO”清志(b)を加えた5名。演目はすべて『THE ENDLESS BASIS』からとなっていた。
まず注目は、何と言っても三宅のギター・プレイ。メンバー・クレジットなどで、“ギター”ではなく敢えて“ストラトキャスター”とするぐらいストラト愛に溢れる彼の、自然体でありながらあまりに情感豊かな熱奏は、ギター本来の鳴りが何とも美味で、独特なタメも実に味わい深い。1986年のテラ・ローザ加入時、無名の新人だった彼は当時若干19歳。ただその頃より、ネオ・クラシカルな様式美路線から逸脱しないまでも、エモーショナル&オーガニックに奔放さを全開させまくっていた持ち味は、50代半ばを過ぎた今も大健在。岡垣によるヴィンテージなオルガン・サウンドとの相性も、今もって抜群と言う他ない。
注目の荒木は、冒頭曲「One Of Sections “Lap”」を歌い始めるや、すぐに観客を掌握。基本オリジナルを忠実に再現しつつ、決してコピーには終わらない巧みさと、関西のオバチャ…もとい熟女の魅力(笑)でフレンドリーなオーラもまとい、見事に大役を果たしてみせた。圧巻は10分超の「もの言わぬ顔」! 40分ステージの真ん中にこの大曲をもってくるなんて流石だが、レインボーやディープ・パープルのフレーズを盛り込んだ岡垣の独奏に導かれてスタートし、エモ過ぎるギター・ソロもたっぷり堪能出来て、テラ・ローザの旨味のすべてを内包しているとも言えるこの重厚エピック・チューンを、堂々感動的に歌い切った荒木には、満員のフロアから大きな拍手と歓声が贈られていた。様式美一筋40年──その重みを受け止められるだけでなく、最良の形で表現し尽くすメンバーを集めての、貫禄のステージ、最高のパフォーマンスだったと断言したい…!!(奥村)
TERRA ROSA 2024.11.17@川崎クラブチッタ セットリスト
1. SE〜One Of Sections “Lap”
2. Friday’s Free Fair
3. Key Solo〜もの言わぬ顔
4. The Endless Basis
5. Vision Of The Lake Bottom




兀突骨
イベント中盤の15時45分を少し回った頃、VAMPIREステージに“川越の残虐王”が見参! 無慈悲にテクニカルでブルータルなトリオ:兀突骨だ。その異名からカーカス・タイプなのかと思う人もいるかもしれないが、実はさにあらず。ラフな和装にて、戦乱の世の“もののあはれ”を体現する突撃エクストリーム・メタラーである。バンド名の由来は、『三国志演義』の登場キャラクター。そういえば、ベース兼シンガーの高畑治央はMCで侍言葉を使うのに、その風貌はどこか三国志の英雄:関羽を思わせる。またギタリストのJoe-Gこと円城寺慶一は、筋肉ギタリストとしてYG読者にもお馴染みだろう。
彼等は今回、現時点での最新作『黄泉ガヘリ』(2023年)収録曲を演目に加えず、それ以前のアルバムからのみセレクト。そう、デビュー15周年を祝う2枚のコンピ──ベスト盤『血塗ラレタ旅路』とレア音源集『疾風ノ如ク』の昨年末リリースに伴うセットリストを組んでいたのだ。長尺曲が多いため4曲しか演奏されなかったが、どの曲も激烈&激速の超難曲だからして、みんな充分お腹いっぱいになったのでは? 実際、マッチョなJoe-Gだからこそ可能な、文字通り力技の鬼刻みと殺人的シュレッドは、そのピッキング&運指に吸い込まれてしまいそうなぐらい濃密この上ナシ! あのBPMであれだけ正確に弾ききるには、やはり並外れたフィジカルが必須と痛感し、Joe-G筋肉道場への入門者が続出…か? いや〜しかし、あの暴虐的激しさであの整合性は眼福としか言いようがない。正に、ありがたき幸せに存じ奉り候…!!!(奥村)
兀突骨 2024.11.17@川崎クラブチッタ セットリスト
1. SE〜復讐ノ祝詞
2. 文物ト戦
3. 殉教者
4. 兵ドモガ夢ノ跡



SABBRABELLS
今年、ドイツのフェス“Keep It True”への出演が決定している大ベテラン:サブラベルズが、折り返しの16時半に登場。関口文一(dr)の病欠により、先日の大阪でのイベント参戦時と同じく青木直義をサポート起用しての出演だ。名曲スピード・ナンバー「Metal Saber」でショウはスタート。息が合わずにヒヤリとする場面もあったが、あっという間に立て直してフロアを盛り上げていくのは流石と思わせた。そこからヘヴィでメッセージ性の強い「破壊」へとつなげていく。
かつて“埼玉のブラック・サバス”と形容された彼ら。メジャー・デビュー以降は抑え気味となった、本来のヘヴィネスを堪能できる名曲に、身体も自然に揺れる。この日のセットは短めということもあって、定番曲中心ながら、どちらかと言えば、メジャー・デビュー以降のドラマティック路線を意識したような選曲でもあり、松川順一郎と佐野博之の攻撃的かつ美しいツイン・ギター・チームが曲を引っ張っていく。精密かつ技巧派な松川と、何をやるか分からない破天荒なノリのある佐野は、それぞれ正反対とも言えるソロを聴かせるが、ツインを駆使した展開となると、一糸乱れぬ流麗なハーモニーを聴かせるのはいつも驚く。それが彼らの魅力であるし、ドラマティックな面の牽引力となっているのも、この日のパフォーマンスが証明していたと思う。
完全体ではなかったかもしれないが、それでもインパクト充分で、来場者に爪痕を残したパフォーマンスであったと言いたい。最後に──フロアの盛り上がりにメロイック・サインで何度も返す高橋喜一(vo)は、やはり日本一“それ”が似合うヴォーカリストだと再確認させてもらった…!(別府)
SABBRABELLS 2024.11.17@川崎クラブチッタ セットリスト
1. SE〜Metal Saber
2. 破壊
3. Cold Bloody Men
4. Running My Way
5. Water Night
6. Dog Fight
7. Devil’s Rondo






ETERNAL ELYSIUM
海外でも人気の名古屋出身トリオ:エターナル・イリジアム──日本屈指のドゥーム/ストーナーの雄がVAMPIREステージに登場すると、場内の空気が一変した。そのサウンドは、ヘヴィで、エモーショナルで、フリーキー。メンバー脱退などでしばらく動きを止めていたが、2024年に首魁Okazaki(g, vo)以下、Togawa(b)、Ume(dr)という新体制にて再始動し、この“STRIKE BACK”出演が復活第2弾ライヴであった。
ドゥームといってもどす黒さはなく、ストーナーといってもトリップし過ぎない独自サウンドには、常に温かみが備わっている。リズムはタイトでありながらスウィングし、時に跳ね、その上でOkazakiのヘヴィ・ギターが奔放に舞う。興味深いのは、Okazakiが「新生エターナルは癒し系でいきます」とMCしたこと。日本語詞を歌うようになって、実際そのギター・プレイはサイケな柔らかさをまとい、そうした傾向は現体制にてより強まっていた…との印象。演目は新曲中心だったようだが、多くの観客が心地好いヘヴィネスに身を委ね、静かに体を揺らしていた。(奥村)
ETERNAL ELYSIUM 2024.11.17@川崎クラブチッタ セットリスト
1. Trick Or Steal
2. Torus
3. Ingah
4. Anything We Have
5. SonoMono


