PUNISH
結成直後で曲も殆ど揃っていなかった頃──2017年にこのクラブチッタのステージに立っていたPUNISHにとって、この日はある意味、凱旋ライヴだったと言えるかもしれない。2024年8月にリリースされたベスト盤『PUNISH ME MORE』のトップに収録されていた「Trace Of The Roamers」でショウはスタート。PUNISH流激情を内包した曲に、観客の反応は満更でもない。アースシェイカーの石原“SHARA”愼一郎(g)を中核に、“ジャパニーズ・メタルのスーパー・バンド”とでも言うべきキャリアを誇るメンバーが揃った彼らならではの、貫禄や余裕を感じさせるステージでの佇まいだが、曲は各メンバーが在籍する/していたどれとも違う不思議な魅力がある。馴染み易いメロディにグルーヴ感あるヘヴィネスが滲み、懐かしいようで新しい感覚も覚えるPUNISHワールドに惹き込まれていく。
日本人に馴染易いメロディを奏でるSHARA──アースシェイカーでは、どこか歌謡曲的側面を作曲面でもプレイ面でも感じさせる彼だが、ここでは似た感覚の情感を湛えながらも、SLYにも通じる硬派な質感のあるギター・ワークが肝だと言えるだろう。次々と印象的なナンバーを繰り出し、2024年末をもって脱退となる西田“DORAGON”竜一のドラムに導かれ、「Tide Of The Times」がラストに披露。同曲のサビでは、いくつもの拳が突き上げられていた。この日のセットは、彼らのハードさを打ち出したような構成だったのもあってか、名バラード「ダリア」が演奏されず、個人的にはそこが残念だったが、短いセットの中でどうPUNISHのインパクトを与えるかを考えたら、その選択肢は間違いではなかったと思う。(別府)
PUNISH 2024.11.17@川崎クラブチッタ セットリスト
1. SE〜Trace Of The Roamers
2. Snake
3. No Regrets
4. Just A Blink
5. Cling Onto The Earth
6. Bumpy Road
7. アカイツキ
8. Tide Of The Times




CAUSE FOR PAUSE
VAMPIREステージのトリを務めたのは、OUTRAGEの別動隊とも言うべきCAUSE FOR PAUSE。ここ最近、彼らのライヴを何度か観ていたが、轟音とファンを巻き込んでの緩さが同居したステージで、それはそれで彼ららしいものであったが、この日はギラリと伝家の宝刀を抜いた極上極悪な素晴らしいパフォーマンスを披露していた。オープニングの「Bleed Out」から5曲目の「Cat & Nines」までMCもなく、暴虐的なグルーヴで畳みかけてくる。ここ最近の“fun”な感じも良かったが、個人的にはこの“STRIKE BACK”で披露したような、ひたすら轟音で攻め立ててくるステージの方が好みなので、これは嬉しいサプライズとも言えた。
太さの中に叙情的繊細さをさりげなく織り込む、職人っぷりを見せつける阿部洋介(g, vo)のプレイも流石と思わせる。8曲を全力で駆け抜け、ラストは彼らが敬愛するモーターヘッド色の濃い爆走ロックンロール「Outta Change」で、サビの歌詞を“Metal Vampire”と変えて、このイベントに参加した喜びをファンと分かち合っていた。ひとつ前のVAMPIREステージに登場したエターナル・イリジアムが、癒しとも言える優しさに溢れるグルーヴで会場を包んでいたのとは対照的なステージで、ファンを魅了していたのも印象的で、同じ名古屋出身ヘヴィ・ミュージック対決という意味でも、興味深く比較して楽しんだ人も多かったと思う。色々と事情はあると思うが、アウトレイジとしてではなく、CAUSE FOR PAUSE名義での作品も聴きたいと思わせる素晴らしいパフォーマンスだった。(別府)
CAUSE FOR PAUSE 2024.11.17@川崎クラブチッタ セットリスト
1. Bleed Out
2. This Zombie Nation
3. Brain Storm
4. Tough Shit
5. Cat & Nines
6. Diamonds To Dust
7. Tonight Is The Night
8. Deadbeat
9. Outta Change




SABER TIGER
約8時間に及んだ本イベントの大トリを飾ったのは、“北の凶獣”サーベル・タイガー。昨年9月にニュー・アルバム『ELIMINATED』をリリースしたばかりの彼等は、当時ちょうど全国15ヵ所を廻る同作に伴うツアーの真っ最中。というか、この“STRIKE BACK”出演は、同ツアーの一環──神奈川公演として行なわれたようだ。驚いたのは、セットリスト本編がすべて『ELIMINATED』収録曲で固められていたこと。こうしたフェス形式のイベントに出る場合、多くのバンドが初見の観客を見越して、代表曲や定番人気曲を軸に演目を組み立てていくもの。しかし、サーベルにそんな定石など無用。飽くまで攻めの姿勢を貫き、初見なら新曲も旧曲も同じこと…とばかりに、唯我独尊のサーベル流メタル道を邁進するのみだ。
かねてより“最新作こそ常に最強”を信条としているバンドとしては、全曲に日本語詞を採用した『ELIMINATED』で“新たなスタートを切った”との思いも強くしていたのだろう。その意気は、ストイックさ満点の鬼気迫るパフォーマンスからも窺えた。ただ、言うまでもなくその頑固一徹さは諸刃の剣となる。熱心なファンが「流石サーベル!」と激賞する一方で──キャリアが長く、知名度もあるバンドだけに、初体験のオーディエンスに敷居の高さを必要以上に感じさせてしまったとしたら、何とも勿体ない…。いや勿論、その熱き信念に感服した新たなファンも、少なからず獲得したに違いないのだが。
その演奏力の高さ、バンド・サウンドに漲るパワー&パッションが、無条件に聴く者/観る者を惹き付けて止まないのも事実だ。エモーショナルだがテクニカルで、緻密さと大胆さを併せ持つ木下昭仁&田中“マシーン”康治のツイン・ギター攻勢には、誰しもが圧倒され、目を奪われること必至。また、昨今の不穏な世界情勢に“怒り”と“憂い”を持って対峙する下山武徳の激唱に、ひたすら魅了されまくった観客も少なくなかったろう。
ちなみに、ショウ本編ラストにプレイされた「Strike Back」は、本イベントのタイトルと同じだったり。そしてアンコールでは、2015年作『BYSTANDER EFFECT』から「Sin Eater」を披露。これまた現行ラインナップによるレパートリーであるから、今回サーベルは、過去を振り返らない姿勢を最後の最後まで突き通したのであった…!!(奥村)
SABER TIGER 2024.11.17@川崎クラブチッタ セットリスト
1. Intro(SE)〜斑の鳥
2. 昏い箱庭 3. 鬼哭の亡霊
4. 孤独と霧の彼方
5. Resist The Pressure
6. Strike Back
[encore]
7. Sin Eater
8. Outro:End Eternal(SE)






