WOA2014レポート拡大版── ARMAGEDDON OVER WACKEN EXTRA ──第1回:エンペラー

WOA2014レポート拡大版── ARMAGEDDON OVER WACKEN EXTRA ──第1回:エンペラー

毎年ドイツで開催されている世界最大級のHR/HMの祭典“Wacken Open Air”フェスティヴァル。その模様は、ヤング・ギター本誌でも度々レポートしており、既に今年も10月号へ記事が掲載済み。ただ、誌面ではどうしてもスペースが限られてしまうため、そのエクストラとして幾つかのバンドをピック・アップし、ライヴ・フォト満載のスペシャル企画をここにお届けしよう!

初回のバンドは、北欧ブラック・メタルの重鎮:エンペラー。果たして、来日公演とは異なるラインナップにて、広大な野外会場で行なわれた“闇の皇帝”渾身の暴虐パフォーマンスは…いかに?!

『IN THE NIGHTSIDE ECLIPSE』ラインナップと怒濤のステージ演出が放つ一大スペクタクル

WACKEN OPEN AIR 2014 - EMPEROR Samoth and Ihsahn

今年、’90年の第1回開催から25周年を迎えた“Wacken Open Air”(以下WOA)。その記念すべきアニヴァーサリー・イヤーの目玉として、昨夏、最初に出演がアナウンスされたバンドがエンペラーであった。’01年に4枚のアルバムを残して解散した彼等は、’05年に復活して’07年まで断続的にライヴ・ツアーを行なっていたが、程なく再び沈黙し、その復活はもう永久にないかと思われていただけに、まさかの再々始動は、総てのファンを歓喜させたことだろう。但し、今回はデビュー・フルレンス作『IN THE NIGHTSIDE ECLIPSE』(’94年)のリリース20周年を祝うもので、決して再結成ではない…とのこと。実際、そのツアー日程は非常に限定的で、WOAや“Sweden Rock”、“Hellfest”、“Bloodstock Open Air”など、ヨーロッパ各地の名立たる大型フェスへの参戦の他に、単独公演が行なわれるのは日本だけで、アメリカは含まれてもいなかった。

WOAでのショウに関して結論から言ってしまうと、『IN THE NIGHTSIDE ECLIPSE』全曲+αという演目は、基本どの公演もほぼ同じで、日本でも同様だったが──WOAと来日時とで大きく違っている点が2つある。ドラマーとステージ演出だ。前者については、『IN THE NIGHTSIDE ECLIPSE』の完全再現をやるということから、同作でプレイしていたファウストが、当然ながらツアー全公演で叩くハズだったのだが、彼の犯罪歴がネックとなって日本への入国が難しかったため、急遽ジャパン・ツアーのみ、前回再編時のメンバーだったタリムが参加することとなった。よって、WOAでのバンド・ラインナップは以下の通り。

●イーサーン – Ihsahn(g,vo)
●サモス – Samoth(g)
●セクトデーモン – Secthdamon(b,vo)
●ファウスト – Faust(ds)
●エイナル・スーベルグ – Einar Solberg(key,vo)

セクトデーモンはザイクロンやMYRKSKOGの、エイナルはレプラスのメンバー。共に前回再編時のメンバーでもあったので、既にファンにはお馴染みだろう。7月の来日時もそうだったが、今やすっかり落ち着いてしまい、演奏中のアクションも最低限になってしまったイーサーン&サモスに代わって(?)、この2人がガッツリ激しくヘドバンしまくり、“見た目のアグレッション”担当も兼ねていたこと、また、両者ともセカンド・ヴォーカルの任に就き、イーサーンひとりでは再現出来ないパートをヘルプしてもいたことは特筆しておきたい。そう、’06年再編時はまだ邪悪なオーラをまとっていたイーサーンとサモスは、もはやブラック・メタル然とした演出に、あまり重要性を感じなくなっているようだ。特にイーサーン──まるで普段着な上に、メガネをかけたままステージへ上がるのだけはやめて欲しい…と思っているファンも、きっと少なくないのでは?

ところで注目のファウストだが、そのプレイは、正確無比でメカニカルなタリムとは異なり、ちょっとドタバタ気味で、ある意味でブラック・メタルの本道に沿っていた…と言えるかも。ただ、彼がエンペラーで叩くのはほぼ20年振り。現在の年齢(40歳)も考えると、充分に健闘していたと言えるのではないだろうか。勿論、イーサーンとサモスについては、演奏面での不安要素は全くない。まぁ、細かいミスなどはご愛嬌として、元祖ブラック・メタラーたるトレモロ・ピッキングの安定感は流石と言う他なかったし、イーサーンが最後にBATHORYのカヴァー曲「A Fine Day To Die」で見せたリード・プレイも、そこまで殆どソロらしいソロを弾くことがなかったため、より鮮烈な印象をオーディエンスに与えたに違いない。

そして、来日公演とのもうひとつの違い──ステージ演出については、ここにも掲載した写真を見て頂ければ瞭然だろう。つまり、パイロ・テクニックの多用である。ショウの幕開けからゴゴゴ〜っと大きな火柱が上がり、終盤にはドッカンドッカン閃光弾が打ち上げられ、火花が炸裂しまくるのだから、観ていて大いに興奮させられること請け合い。正にこれぞ野外フェスの醍醐味だ。欲を言えば、日の暮れた時間帯にその光景が見られたら、もっと良かったのだが…。(エンペラーの演奏時間は、夕方の17時30分〜18時45分だった)

ともあれ、現時点では今後またエンペラーとして活動を再開する可能性は非常に低いというから、今回の『IN THE NIGHTSIDE ECLIPSE』再現ショウは、もしかすると、エンペラー最後のライヴになってしまうかもしれない。それ故に、イーサーンやサモスにとっても、このWOAでの一大スペクタル・ショウは忘れられないモノになったことだろう!

セットリスト

1.Intro(SE)〜Into The Infinity Of Thoughts
2.The Burning Shadows Of Silence
3.Cosmic Keys To My Creations & Times
4.Beyond The Great Vast Forest
5.Towards The Pantheon
6.The Majesty Of The Nightsky
7.I Am The Black Wizards
8.Inno A Satana〜Outro(SE)
9.Ancient Queen
10.Wrath Of The Tyrant
11.SE〜A Fine Day To Die(BATHORY)
12.Opus A Satana(SE)
(2014年8月2日)