アーティスト名 | PINK FLOYD ピンク・フロイド |
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アルバム名 | THE ENDLESS RIVER 永遠 (TOWA) |
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リック・ライト(key/’08年没)の追悼とバンド最終作品という二大コンセプトを掲げ、デヴィッド・ギルモア(vo, g)とニック・メイソン(dr)が前作『DIVISION BELL(邦題:対“TSUI”)』(’94年)制作時などのお蔵入り音源を主な素材として練り上げ完成させた20年ぶりのアルバム。このため前作のアンビエント志向を大胆に推し進めた作風でライトの抒情キーボードもちゃんとフィーチュアされており、バンドの連続性や方向感は時を経ても手堅く保たれている。彼ら特有の浮遊感の最終形態と呼ぶべき音でもあるだろう。
がしかし、本作ならではのチャーム・ポイントは、明快な楽曲展開も言葉もほぼ取り去ったことでこれ以上ないほど剥き出しになったギルモアのギターのただならぬ煽情力にトドメを刺す。最終曲までヴォーカルが登場しない静謐なサウンドスケープ作品的内容ながら、繊細なチョーキングやフレーズ末尾を異界に飛ばしてしまうかの如き精妙なグリッサンドなど、ゆったり流れる音の揺らぎの中でも彼ならではの夢幻の技は雄弁だ。それらに聴き惚れ悶絶するうちに、全50分超の時間さえあっという間に錯覚してしまうほど。長らくプログレの代名詞であり続けたバンドゆえ“フロイドらしさ”には様々な解釈があるだろうが、ギルモアのギターにそれを見出していた者にとってはこれぞ最後に授けられた最大最高のプレゼントに他ならない。
(平野和祥)