去る10月23日、アメリカ産ブティック・ペダル・ブランド、ストライモン(Strymon)によるスペシャル・クリニックが開かれた。その様子をレポートしよう。
イベントは2部構成に分かれ、まず第1部にギタリスト菰口雄矢が登場。デモンストレーションを1曲披露した後、ストライモンについて語ってくれた。
そもそもストライモンとは、数年前に“Demonizer”“Womanizer”といった真空管搭載エフェクターで好評を博したダメージ・コントロール社のスタッフにより設立された、高品質のエフェクター製品を提供するブランドだ。各製品にはSHARC DSPという高性能チップが搭載され、そのデジタル信号がアナログの原音とミックスされた、限りなくアナログなサウンドを提供している。インターネット上でエフェクターを探している際、偶然ストライモンに出逢ったという菰口は、この「アナログ感の凄さ」をストライモンの魅力の1つとして真っ先に挙げた。
菰口がライヴの際のサウンド・メイクにおいて最も気をつけているのは「ギターの音が近すぎないこと」。ステージ上におけるギターの信号をアンサンブルに程良くなじませる為、リヴァーブを活用。その時の使用アンプに搭載されている場合はそれを使い、ない場合にはストライモンのリヴァーブ“blueSKY”やテープ・エコー“El Capistan”が活躍するという。イベント参加者より“blueSKY”について尋ねられると、アンプ搭載のリヴァーブにはない微調整が出来る所をメリットに挙げていた。
第2部は、オールアクセス社長の服部弘一氏がギタリスト二木元太郎と共に登場し、新製品が発表された。この日の時点では本家アメリカでも未公開となっていた物で、同社の人気ディレイ “Timeline”と同じ大きさの筐体に、12種類のモジュレーション系エフェクトをおさめた“Mobius”だ。
エフェクト(タイプ)の内訳は、FILTER、PHASER、VIBE、ROTARY、FLANGER、CHORUSなどスタンダードなモジュレーション6種類に加え、FORMANT、VINTAGE TREM、PATTERN TREM、AUTOSWELL、DESTROYER、QUADRATUREといったより特殊な効果を創出する6種類がある。これらが社長より1種類ずつ順に紹介され、二木が実演していったのだが、その音の良さと効果のリアルさは特筆ものだった。
段数を一般的な機種よりも増やしたPHASERやスピーカーの回転状態による速さの違いなどを再現したROTARYなどは、クリアで深みのある音の揺れが素晴らしい。自動でヴォリューム奏法が可能なAUTOSWELL は、まるでチェロの弓を引くようなダイナミクスに心を惹かれた。また、ビット・レートを落としてラジオやファミコンのようなローファイ・サウンドを作るDESTROYERのチープさも絶妙だ。とにかくどの音を聴いても、その音質の良さと作り出される効果の種類が幅広く、作曲や演奏のアイデアなど、たくさんの可能性を見つけられそうな気がした。正直、実演が一通り終わっても「もっとやってくれないかな」と思ったほどだ。
その他、機能として特筆したいのは、内部システムをMIDI経由でアップデート出来る事、DAWにも対応している事、ステレオ入出力のうち1系統をエフェクト・ループとしてアンプに接続出来る上、“Mobius”の入る位置をアンプの前後どちらにするかという設定を、ケーブルの差し替えなしにスイッチ1つで切り替えられる所など(さらに、この設定はパッチごとに個別に保存される)。プロ・アマを問わず様々な場面で役立つ、強力な1台となりそうだ。現行品のストライモンを所有しているユーザーからも、興味津々の質問が相次いだ。
最後に再び菰口が登場。この日の為に二木が書き下ろしたインストゥルメンタル曲を2人で共演して、イベントは終了した。
モジュレーション系エフェクトの市場に必要不可欠な機種となるであろう “Mobius”。発売は11月中旬を予定し、価格は¥45,000となっている。興味を持った人は是非、続報をお待ちいただきたい。