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マグナス・カールソン/プライマル・フィア『RULEBREAKER』インタビュー

インタビュー●斎藤新吉 Shinkichi Saito

Magnus Karlsson

去る1月に最新アルバム『RULEBREAKER』をリリースした、ドイツが誇る正統派メタルの守護神、プライマル・フィア。ドラマティックなメロディーを大量に注入した骨太なパワー・メタル・サウンドは、今回もファンの間で好評となっており、彼らの作り出す音楽はすっかり“安心のブランド”と化しているようだ。

現在の彼らが高クオリティな楽曲を生み出し続けられる秘訣として、ギタリストのマグナス・カールソンの存在が関係していることは間違いない。これまでに数多くのプロジェクトに参加し、曲作りとギター・プレイの両面で大いに貢献してきた才人マグナス。そんな彼に、今回は『RULEBREAKER』に関する質問をぶつける機会を得た。マグナスはプライマル・フィアの正式メンバーでありながら、ライヴには参加しないスタジオ・プレイヤーという変則的な立ち位置におり、残念ながら6月に決定している来日公演も不参加となっているが、彼のプレイを日本でも見られる機会が早く訪れることへの期待も含めて、このインタビューをお届けしよう。

曲が明確な方向性を持ってでき上がっているとギター・プレイヤーにとって非常に弾きやすい

YG:’15年中にはマグナス・カールソンズ・フリー・フォールの2nd『KINGDOM OF ROCK』やキスク・サマーヴィルの『CITY OF HEROES』という、あなたが参加した2作品がリリースされました。さらにプライマル・フィアの新作『RULEBREAKER』が制作されたわけで、スタジオ作業が立て続けで大変だったのではないですか?
マグナス・カールソン(以下MK):俺はスタジオで新たな音楽を作るという作業が好きでね。それは(音楽シーンで)生き残るために必要なことなんだ。そしてその作業を通して俺はエネルギーを感じ取ることができるし、まだまだ物足りない。そうすることが俺の人生なんだ!

YG:’14年にドラマーのランディ・ブラックが脱退し、アキレス・プリースター(元ANGRA)が加入しましたが、彼も早々に脱退してしまいましたね…。最終的にフランチェスコ・ジョヴィーノ(元U.D.O.)がドラマーの座に就きました。
MK:脱退したドラマーたちとはそれぞれに理由があって上手くいかなかった。俺たちはフランチェスコとは以前からの知り合いだったし、彼のプレイを気に入っていたんだよ。彼のスタイルはこういった音楽に完璧にフィットするものだった。ハードに、ファストに、テクニカルにプレイすることができ、そして最高のグルーヴを生み出してくれるんだよ。

YG:最新作『RULEBREAKER』の曲作りやレコーディングにはいつ頃取りかかったのでしょうか?
MK:確か曲を書き始めたのは1年前(’15年初頭)だったかな。レコーディングが終わったのは去年の秋のことだった。

YG:フリー・フォールはあなたのソロ・プロジェクトなので、あなた自身が曲をすべて書いていますが、プライマル・フィアにはマット・シナー(vo, b)とラルフ・シーパース(vo)というソングライターがいます。やはり彼らとの作業は、ソロの時とは全く違うインスピレーションが得られるのではないですか?
MK:ああ、1人でやるのと共同作業者がいるのとでは全く違うよ。ソロの時は俺1人でじっくりと曲を書き、後からアレンジなんかを自由に変更したりすることも多い。しかしプライマル・フィアにおいてはチーム作業なんだ。全員が同じ音楽を愛し、同じゴールを目指して進んでいく。非常にスムーズな作業だし、俺にとっても楽しみの1つなんだ。

YG:前2作に続いてエンジニアリングをジェイコブ・ハンセンが担当していますが、彼はフリー・フォールやキスク・サマーヴィルでも仕事をしていますよね?
MK:ただ一言、素晴らしいとしか言いようがないね! 彼の作るサウンドはヘヴィ&ハードでありながら、同時にクリーンで美しさも伴っているし、そういったベストな音作りの方法を把握しているんだよ。俺たちにとっては非常に仕事がしやすく、人間的にも最高なんだ!

YG:今回のアルバムはシンプルなヘヴィ・メタルのパワー感と、メロディアスな要素がさらに良好なバランスを保っていると思います。その点は前作以上に進歩していると思うのですが、いかがですか?
MK:純粋にスタイルを変えず、より進化したということだろうね。前作との大きな違いはなく、ストレートに進歩したんだ。きっと俺たちが正しい方向性を進んでいて、その過程でアルバムを出すごとにバンドとして磨かれていっているんだろうな。

YG:あなたが曲を作る時は主にリフから始めることが多いのでしょうか?
MK:そう、主にリフから作り始めることが多いね。そこからマットとラルフのアイデアを加えていく。

YG:と言うのも、今回のアルバムはパワフルなリフの出来が際立っていると思ったんですよ。
MK:まさしく。ソリッドなリフが沢山できたよ。デモの時点でかなりしっかりと作ったんで、そのパワーを失わないようにレコーディングしていった。

YG:ギターのトム・ナウマンが正式メンバーに復帰しましたが、3人のギタリストがバンドにいるとなると、新しいアイデアが色々と出やすいのではないですか?
MK:うん。彼のギタリストとしての腕前は実に素晴らしいし、俺とアレックス(バイロット)のプレイに彼の色がミックスされることで、今までになかったものが生み出せるんだ。トムは今回、(「Raving Mad」の)曲作りにも参加してくれた。次回は俺とトム、アレックスで一緒にギターのアイデアを出して行きたいと思っている。3人でリフを作るなんてことになったら面白いだろうな。ちなみにリズム・ギターは俺がレコーディングしたんだ。俺の所有する“Stunt Guitar Studio”でね。

YG:リードは3人で弾いたんですね?
MK:そうだよ。3人でシェアしたんだ。主な部分は俺が弾いているけど、残りの部分をアレックスとトムで分担してもらった。

YG:「We Walk Without Fear」は10分を超える大作で、バンド史上最も長い曲になりました。展開も多いですが、どのように曲を組み立てていったのでしょうか?
MK:まずイントロから作り始めたんだ。俺は映画音楽が大好きで、まず1時間ほどじっくり考えて、それに近いエネルギーや効果音的なものを頭の中でまとめた。そこから曲を発展させていったんだよ。デモの段階では俺がすべてのリードを弾いて、それをアレックスとトムにも割り振ったんだ。

YG:この曲のようにリード・パートが多い曲では、3人のギタリストでどうやってソロを割り振ったのでしょうか?
MK:特に話し合いをすることもなく決まったよ。それぞれが純粋にプレイしただけなんだ。リスナーが3人の違いをはっきり聴き取れるぐらいの仕上がりになっていると良いんだけどな(笑)。曲が明確な方向性を持ってでき上がっていると、ギター・プレイヤーにとって非常に弾きやすいし、適切なヴァイブを得るのも容易いことなんだよ。

YG:「Rulebreaker」のメイン・リフはシン・リジィ的で、マットが掛け持ちしているシナーにも通じるものがあると思うのですが?
MK:そのリフはこのアルバム用に俺が書いたフレーズの中では最初のものだね。ただ、俺的にはリジィとか他のバンドに聴こえるということはないかな…?

YG:アルバムの中で特に気に入っているギター・パートはどこでしょうか?
MK:「Angel Of Mercy」のイントロだね。素晴らしいサウンドに仕上がっているよ。これはドロップC(全弦1音下げ+6弦のみさらに1音下げ)チューニングで弾いていて、そのヘヴィな感じが完璧にフィットしたね。

YG:レコーディングで使用した機材を教えてもらえますか?
MK:メイン・ギターはESPの“Eclipse”で、アンプはケンパー“Profiling Amplifier”。エフェクターとかは何も使っていないよ。音作りはすべてケンパーだ。