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屍忌蛇/ボルケーノ『IRREGULAR』

インタビュー●斎藤新吉 Shinkichi Saito

リフを苦労してカヴァーしたのに!

YG:1曲目がシルヴァー・マウンテンの「1789」(’83年『SHAKIN’ BRAINS』収録)ですが、以前、取材のたびに屍忌蛇さんが「北欧と言えばシルヴァー・マウンテン!」と言っていたので、個人的には「遂にやったか!」という思いがありましたね。
S:友達やファンから「このバンドの音楽は屍忌蛇っぽい」と言われることも多いぐらいで、昔から大好きだったんですよ。まだ今回のアルバムで何をカヴァーするか決めてない時期、知り合いのバーに行ったら、ちょうどこれがかかっててね。じゃあ!ってことでシルヴァー・マウンテンをやることにしました。

YG:原曲のヨナス・ハンソンは正直ギターもヴォーカルも…ヘロヘロですよね(笑)。あれが独特の哀愁を出していて、マニアにはたまらないんですが。
S:そうそう、ギター・ソロの入りの部分だって、なんかヌルッと行くし、あのフランス国歌を弾くキメの部分とかもヘロヘロでしょう(笑)。その辺はボルケーノらしくタイトにやりました。

YG:アイアン・メイデンの「Invaders」(’82年『THE NUMBER OF THE BEAST』収録)は、曲のチョイスが渋いですね。
S:最初は「The Trooper」にしようと思ったんですけどね。でもAKIRAが「Invaders」を選んで来た。これってメイデンも全然ライヴでやらないんでしょ?

YG:スティーヴ・ハリスがあまり気に入っていないという噂もあるようです。
S:結構難しいんですよね。イントロとAメロでは全然リズムが違うし、1小節の中の拍の数が複雑で、混乱するんですよ。だからメイデンもやらないんだろうな(笑)。原曲のギター・ソロは結構グチャグチャなんで、あまり何も考えずに弾いた方がデイヴ・マーレイっぽさが出るかなと。今回のヴァージョンは出来が良かったので、最初は1曲目候補になってました。ちなみに曲順はAKIRAが決めました。彼はそういうセンスが優れてるんですよ。こうやって言っておけば、今後何か奢ってくれると思います(笑)。

YG:(笑)3曲目のクロークス「Headhunter」(’83年『HEADHUNTER』収録)ですが、このバンドを選ぶということ自体がジワっと来ますね。
S:選んだのはAKIRAなんだけど、(AKIRAが在籍している)サウザンド・アイズのメンバーに「クロークスをやる」と言ったら、「どこのバンドですか?」って訊かれたらしいですよ(笑)。スイスでしょ?

YG:そうです。原曲のソロは後半にレインボー風のキメが入っているので、屍忌蛇さんもこれは再現しているのだろうと思いきや、完全オミットしていますね。
S:これを録っている時はもの凄く眠くて、早く帰ってラーメンを食べたかったんですよ(笑)。だから原曲をコピーすることは諦めました。その後半の部分は自分で結構構築したフレーズを作ったんですけど、「これが終わればラーメンを食える!」という断末魔の叫びになってますね。曲はかっこよくて好きなんだけど、とにかく眠くて(笑)。

YG:ククク…(笑)。さて、「Don’t Tell Me You Love Me」(’82年『DAWN PATROL』収録)はナイト・レンジャーの代表曲ですが、ヨーロピアンなロックからの影響が強い屍忌蛇さんにしてみると結構意外な選曲かもしれませんね。
S:この曲は子供の頃から好きで、リフなんかはコピーしてたんです。何とも言えない“泣き”というか、コード進行に秘められた哀愁がたまらんのですよ。ただ原曲を改めて聴くと、ギター・プレイでよく分からない部分がまた出てきましたね。ギターが3本入ってて、それぞれダブリングしてるから計6本も入ってる上に、1本のギターが左右のチャンネルを行ったり来たりする。結構複雑な作りなんで、何をやっているのか分かりづらいんですよ。でもライヴ・ビデオを観たら、ギタリストが2人ともそんな凝ったことをやらずにサーッと弾いてました。「俺はこんなに苦労したのに!」って思いますよ(笑)。ソロはスタジオで考えて、そのまま弾いてます。

YG:ブラッド・ギルスのアーミングと、ジェフ・ワトソンのタッピングは、どちらも屍忌蛇さんのスタイルとは違いますよね。
S:うん、どっちも俺にはないスタイルでしょう。それを無理矢理真似してもしょうがないからね。