ソロ作品はフュージョンになる!
YG:最後の曲はモトリー・クルーの「Home Sweet Home」(’85年『THEATRE OF PAIN』収録)です。
S:AKIRAから「NOVがモトリー・クルーをやりたいって言ってる」とメールが来て、俺がNOVに電話をしたんですよ…確か酔っぱらって。「本当にモトリーをボルケーノでやるのか? マジで言ってるのか?」って。そしたら(NOVの声マネをしながら)「えっ、えっ、えっ!? 君が選んだのだってナイト・レンジャーやん!」って言われたから、ゴメンって謝りました(笑)。NOVがね…最近影響されたらしいんですよ。彼がヴォーカルを教えている生徒が歌いたい曲を持って来た時に「Home Sweet Home」を聴いて、(また声マネをしながら)「これいい曲やん!」って。
YG:NOVさんは荒々しいハスキー・ヴォイスのイメージが強いですが、こういうバラードも本当にハマりますよね。
S:そうそう。ボルケーノってスラッシュとかデスのイメージで語られるけど、NOVはどういうスタイルでも歌える。彼にはボルケーノのオリジナル曲でもバラードを歌って欲しかったんですよ。それで出来たのが『JUGGERNAUT』(’16年)の「Coming Hill」。で、「Home Sweet Home」は何の不思議もなくハマりましたね。ただ俺に関しては、最後に録った曲なんで…もう疲れてましてね。考える余裕がなかったから、ギター・ソロは原曲のまんま。アーミングするところは、俺がアームの付いたギターを持ってないんで、ローディーにギターを支えてもらいながらペグを回して音程を下げたんです。身体が2回転するぐらい回しました(笑)。
YG:そうだったんですか(笑)。もしかしたら屍忌蛇さんもミック・マーズが好きで、完コピを目指したのかと思ったんですが。
S:いや、そこまで強烈な思い入れがあるわけでもないんですよ。単純に疲れていただけなんで(笑)。
YG:1月6日のライヴ(目黒鹿鳴館)でも『IRREGULAR』などからカヴァー曲をプレイしていましたが、オリジナル曲をライヴでやる時と比べると、やはり違った緊張があったりするものですか?
S:案の定間違えましたね。いや、間違ったのはオリジナル曲の方だった(笑)。でもインストをやる時は緊張しますね。ジョージ・ウィンストンの「Longing / Love」(’80年『AUTUMN』収録/屍忌蛇は『STAND PROUD!〜』でカヴァー)の時。NOVがステージからいなくなるじゃないですか。真ん中から人がいなくなっちゃうと寂しいんですよね。昔、母親に連れられて買い物に行った時のことを思い出しますね。バス停で「ちょっとここで待っててね」って言われた時って、「お母さんは本当に戻って来るのかな」って不安になるじゃないですか。ああいう不安感に近い…いや、違うな。今のは忘れてください(笑)。
YG:ちらっと小耳に挟んだところでは、ボルケーノの作品を作りつつ、屍忌蛇さんのソロ名義のアルバムについても構想があるそうですね?
S:もうね、フュージョンですよ。高中正義/カシオペア的な雰囲気というか、ああいうスタイルの作品ってギターが歌ってるじゃないですか。そういう雰囲気ですよ。日本人のメタル・ギタリストがソロ・アルバムを作ると、みんながトニー・マカパインのマタニティ…でしたっけ?
YG:『EDGE OF INSANITY』(’85年)のことですか?
S:あ、それそれ。マタニティってどういう意味だっけ。
YG:妊婦とか母性とか…。
S:そうか(笑)。とにかく、みんなマカパインみたいなアルバムを作ろうとするじゃないですか。だから自分でやるならまんまメタルみたいなアルバムは作らない。でも俺がフュージョンをやるって言っても、まったく結果が読めないでしょ。そこが面白いと思うんです。それとボルケーノのオリジナル・アルバムも夏には出しますよ。曲のネタは藤子不二雄ばりに出てきますからね(笑)。