「速弾くためなら鬼となる…」ボルケーノ初のカヴァー・アルバム『IRREGULAR』を屍忌蛇がユルく解説

「速弾くためなら鬼となる…」ボルケーノ初のカヴァー・アルバム『IRREGULAR』を屍忌蛇がユルく解説

屍忌蛇率いるボルケーノが、1月にカヴァー・アルバム『IRREGULAR』をリリースした。アニメタルはもちろん、ソロ名義でヘヴィ・メタルの名曲やブルース・リー映画のサントラ曲などを度々取り上げ、人が作った曲をアレンジすることにかけても一級の腕を振るって来た屍忌蛇だが、ボルケーノでその手の作品を作るのは、これが初。ということで、どんなプロセスでこのアルバムを作ることになったのかを彼に訊いてみたわけだが、本人が酒を軽く飲みながら語ったところによると「遊びです!」とのこと。読者の皆さんも酒とツマミをそばに置いて、気楽に以下のインタビューをお楽しみいただきたい。

イングヴェイのウネりはマネできない

YG:コンスタントに1年1枚のペースでオリジナル・アルバムを出している中、ここに来てカヴァー・アルバムを作ることになった経緯を教えてもらえますか?

屍忌蛇(以下S):2年ぐらい前なんだけど、スタッフとお酒を飲んでる時に軽いノリで出て来た話だったんですよ。最初はボルケーノのメンバーが在籍していたガーゴイルとかAIONとかの曲を取り上げて、「今の自分ならこうやる!」っていうのをやったら面白いんじゃないかと。それだったら自分たちと同じ世代のXとか、かまいたちとかからも選曲して、日本のロックをカヴァーしようかという話になったんだけど、ちょっと色々ありましてね。逆に洋楽をやるとなると、俺は『STAND PROUD!〜ALL FOR HEAVY METAL』(’98年)や『DUAL WORLD』(’14年)でメタルの有名どころを大体カヴァーしたから、今度はタンクとかラーズ・ロキットみたいなB級バンドを多めにしようかと(笑)。最終的には好きなものを1人2〜3曲ずつ選んで、それをボルケーノ流にやったら面白いんじゃないかということでまとまったんです。
とは言っても酒の席の話ですからね。しばらくしてからAKIRA(b)とかが「あの話、どうなったの?」と言うから、「本当にやるの?」って。本気でやることにしたのは去年の10月ぐらい。でも遊びですからね。ジャケも黒地にカタカナで“ボルケーノ”って書いてあるだけにしてみようとか。そういうノリで始めたので、本気で聴かないでください(笑)。

YG:えっ!? 真面目にインタビューするつもりだったのに(苦笑)。で、『STAND PROUD!〜』や『DUAL WORLD』の時は色々なミュージシャンを曲ごとに選んでいましたが、今回はボルケーノのメンバーで全曲固定されているという違いがありますよね。

S:いや、やっぱり遊びですから、高いお金を払ってミュージシャンを沢山呼ぶってわけにもいかないじゃないですか(笑)。

YG:あくまで身内で(笑)。

S:そうそう、仲間だけで楽しもうと。

YG:屍忌蛇さんが選曲したのは、シルヴァー・マウンテンと、ナイト・レンジャーと…。

S:あと、イングヴェイ・マルムスティーン。俺ってイングヴェイが好きなイメージがないじゃないですか。でも大好きなんですよ。俺が酔っぱらうと、SNSでイングヴェイ的なプレイをするギタリストのことを…ほら…ディスるじゃないですか(笑)。

YG:ええ、そうですね(笑)。

S:今回のカヴァーではその人たちに対する謝罪の気持ちも込めています(笑)。ただイングヴェイっぽくコピーするんじゃなくて、自分なりの形でね。彼のことは大好きだけど、俺は使ってるギターもストラトじゃないし、スタイル的に違うでしょう。はっきり言ってイングヴェイのスタイルって、マネしようとしたら同じフレーズになっちゃうんですよ。でもイングヴェイなりのフレーズのウネりみたいなものって、絶対マネできないし、かなわないんですよね。だからみんなもイングヴェイみたいなプレイをするなら…もっと個性を出せばいいのにって思ってたんですよ。またディスってるって言われるかもしれないけど(笑)。それと同じでナイト・レンジャーも最初からツイン・リードをコピーする気はなかったです。でも「この曲はここで“来る”!」っていうのがどの曲にもあるでしょ。そういう美味しいフレーズはやっぱりメタルの醍醐味だったりするから、そこは残しました。ソロは1発で録り終わったのが多かったかな。

YG:他のメンバーに「こういう風に歌ってくれ」「こんな感じでベースを弾いてくれ」というような注文は出しましたか?

S:いや、全員好きなようにやりました。ただフラットバッカーの「Hard Blow」(’85年『戦争-アクシデント-』収録)はこだわりましたよ。イントロの「ハッハー!」は、NOV(vo)に「もっとこう!」とか注文をしました(笑)。

YG:確かにあの笑い声のインパクトは重要ですからね(笑)。選曲は’80年代HR/HMが中心ですが、メロディック・デス・メタルの曲を選ぶことは考えなかったのですか?

S:そうですね、ボルケーノってメロデスっぽいと言われることも多いけど、メンバーのルーツではないんですよ。’90年代に出て来た、俺たちにしてみたらまだまだ新しい音楽でしょう。ルーツってなると、やっぱりヴァンデンバーグみたいな’80年代の音楽ですからね。言ってみればボルケーノの音楽って、“激しいヴァンデンバーグ”なんですよ。(唐突にトッポギを口にして)トッポギって初めて食べたんだけど、美味いですね。これも載せておいてください。

YG:はい(笑)。こういったカヴァー作品を作ると、屍忌蛇さんにもアイデアのフィードバックがあったりするのでは?

S:普段真面目にコピーをすることってないから、「こういう手があったのか!」っていう発見がありますよ。今回一番だったのはオーヴァーキルの「Bring Me The Night」(’10年『IRONBOUND』収録)。このバンドの音楽自体は全然知らなかったんだけど、聴いてみたらシンプルなのに結構凝ったことをやっていて、「おっ!」て思いました。ちょっとリフが昔のラウドネスでもやってそうな感じだし、ボルケーノのやってる音楽に近いんだなって気づきましたね。