記念すべき20周年を迎えた、夏を彩る音楽フェスティヴァル“SUMMER SONIC”。従来通り東京と大阪の2会場でアーティストを入れ替えながら行なわれただけでなく、3日間という長期にわたって多種多様な音楽を楽しめる一大イベントとなった。
ただ、台風接近に伴う天候不順で、初日は強風の影響によりステージ設営がままならず、東京のBEACH STAGEは全公演が中止されたり、大阪では多数のアーティストが出演キャンセルを余儀なくされたり…。しかし、そんなトラブルをはねのけるような素晴らしいパフォーマンスがどのステージでも繰り広げられ、“20年目のサマソニ”にふさわしい最大級の盛り上がりをみせていたように思う。
ここでは、ロック〜メタルを中心としたアーティストが多数出演した1〜2日目の様子を中心に、YG目線でレポートしていこう。
1日目●8.16(金)
THE STRUTS
WEEZER
MICHAEL MONROE
THE 1975
LOUDNESS
FALL OUT BOY
B’z
2日目●8.17(土)
LOVEBITES
Fear, and Loathing in Las Vegas
ZEBRAHEAD
BRING ME THE HORIZON
BAND-MAID
RANCID
THE DAMNED
BABYMETAL
TOTALFAT
RED HOT CHILI PEPPERS
DAY 1 8.16(FRI)
THE STRUTS/ロック魂みなぎるダンサブル・サウンド
3日間の幕開けを宣言したのは、MARINE STAGEのトップ・バッターを務めたザ・ストラッツ。2016年、2017年に続いての登場となる彼らは朝一番も何のその、2ndアルバム『YOUNG & DANGEROUS』(2018年)からのアッパー・チューン「Primadonna Like Me」を広大なアリーナに響かせ、早くもオーディエンスをノせていく。ステージを左右にせわしなく動きながら観客を煽るのは、フロントマンのルーク・スピラー(vo)だ。艶かしい仕草や白いピアノで時折伴奏を執る…といったフレディ・マーキュリーっぷりは見事だが、そう思わせるだけの力量と歌唱力が彼に備わっているという証拠でもある。
アルバムではプロデュースされたゴージャスなサウンドが楽曲のグラマラスな部分を引き立てているが、ライヴでは同期音源も入っているものの、バンドの生々しさが際立ち、よりロック然とした音になっている。アダム・スラックのギターのリフを前面に出したアレンジの「Kiss This」などはその表れの1つだった。
そのアダムは今や、ヒゲを蓄えて貫禄十分。比較的コンパクトなソロが多い上、動きの多いルークに比べるとどうしても控えめな印象になったが、ゲシン(デイヴィス、dr)やジェド(エリオット、b)とアイ・コンタクトを取りつつ、堅実なリズム・ワークと太いサウンドで曲を支えていたことは間違いない。今年発表されたシングル「Dancing In The Street」では、ステージ前方を練り歩きながらベンドを効かせたフレーズを披露し、熱さも覗かせていた。余談ながら、彼とジェドの使っているギターやベースはそれぞれ自身のシグネチュア・モデルで、ブライアン・メイと親交のある日本のギター・ブランド:Kz Guitar Works製だったということも、興味深いポイントだった。
ザ・ストラッツ @ SUMMER SONIC MOUNTAIN STAGE 2019.8.16 セットリスト
1. Primadonna Like Me
2. Body Talks
3. Kiss This
4. Fire(Part 1)
5. Dancing In The Street
6. Where Did She Go
7. Could Have Been Me
WEEZER/カヴァーとオリジナルの名曲を爽快サウンドで
ファンからのリクエストで実現した、TOTOの「Africa」の見事なカヴァーが昨年大きな話題をさらったウィーザーは、マイケル・ジャクソンやブラック・サバスなど、稀代の名曲を幅広く網羅した1枚丸ごとカヴァー・アルバムの『WEEZER(TEAL ALBUM)』を今年1月に発表。直後に全編オリジナルの『WEEZER(BLACK ALBUM)』もリリースされたが、今回のショウはそのカヴァー作からの選曲が目立っていた。もちろん「Buddy Holly」「My Name Is Jonas」といった初期からの人気曲も惜しみなくプレイされており、ファンも新入りも分け隔てなく楽しめる。
「歌ってください!」「ジメジメですね…」と滑らかな日本語で話しかけるリヴァース・クオモはまるで存在自体が和み系ムードメーカーで、ヴォーカルやクランチ・トーンのギターも常にゴキゲン。かと思えば、ハンドマイクで歌い出した「Africa」では、途中からギターを手に取ると、本家のスティーヴ・ルカサーも真っ青のテクニカルなシュレッド・プレイを展開! 観客が大喜びしたのは言うまでもない。かたやブライアン・ベルは、フィニッシュ違いのエクスプローラーを持ち替えながらクールにサイドを固めつつ、ブルース・ハープやキーボードも操る多才ぶりだ。先述の「Africa」やアーハのスマッシュ・ヒット「Take On Me」などでは、曲の要となるシンセ・フレーズでオーディエンスの思い出ポイントを突いていた。
後半は再びウィーザー・オリジナル。「Island In The Sun」「Say It Ain’t So」などではバンド全員の美声によるコーラスを聴かせるなど、ベテランの貫禄をたっぷり見せたタイトなグルーヴと軽やかなサウンドで、湿った夏の空気を爽快に吹き飛ばしてくれた。
ウィーザー @ SUMMER SONIC MOUNTAIN STAGE 2019.8.16 セットリスト 2019.8.16
1. Buddy Holly
2. My Name Is Jonas
3. Perfect Situation
4. Surf Wax America
5. Africa
6. Hash Pipe
7. Undone – The Sweater Song
8. Take On Me
9. Island In The Sun
10. Beverly Hills
11. Pork And Beans
12. Say It Ain’t So
MICHAEL MONROE/新曲から代表曲まで、パワフルに魅せたロック・スター
暗くなってきた辺りで、RAINBOW STAGEにはマイケル・モンロー(vo)のソロ・バンドが登場! 始まるやいなや、7月末に公開されたばかりの「One Man Gang」と、この時点では正式発表すらされていなかった「Last Train To Tokyo」を立て続けに披露するという、かなり冒険的な出だしではあったが、知らない曲であっても身体が自然にノってしまうのが彼らの音楽の凄い所…。マイケルは今年でもう57歳になるが、年齢を全く感じさせないほどフットワークが軽く、ロック・スター然とした佇まいと歌唱力でオーディエンスを一手に惹き付けていた。
SGを操るスティーヴ・コンテとセミアコを軽やかに使いこなすリッチ・ジョーンズのサウンドの絡みは絶品で、軽快でありながら重厚さも兼ね備えた新感覚の音世界が生まれていた。お互いのプレイ・スタイル、サウンドを熟知しているからこそ実現できるこのケミストリーは、バンドの大きな魅力の1つと言って良いだろう。
中盤にはDemolition 23.時代のナンバーを取り入れ、終盤はハノイ・ロックス時代からの代表曲…といった具合に新旧問わず多くのファンが楽しめるようになっており、大満足の人も多かったはず。ラストはマイケルがバス・ドラムの上に乗っかってジャンプをしたりと、最後までパワフルで大胆なパフォーマンスを繰り広げてくれた!
なお、彼らは今年12月に東名阪を廻るツアーを予定している。日本のファンはまだまだお楽しみが尽きないようだ…。
マイケル・モンロー @ SUMMER SONIC 2019 RAINBOW STAGE 2019.8.16 セットリスト
1. One Man Gang
2. Last Train To Tokyo
3. Soul Surrender
4. Old King’s Road
5. ’78
6. Don’t You Ever Leave Me
7. Nothing’s Alright
8. Hammersmith Palais
9. Malibu Beach
10. Up Around The Bend
11. Dead, Jail Or Rock ‘n’ Roll