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多彩な音楽性と圧巻の演奏力で魅せたカーク・フレッチャーのブルース・ショウ! @コットンクラブ東京 2019.9.23

多彩な音楽性と圧巻の演奏力で魅せたカーク・フレッチャーのブルース・ショウ! @コットンクラブ東京 2019.9.23
レポート●ヤング・ギター編集部 写真提供●COTTON CLUB 撮影●Y.Yoneda

9月下旬、コットンクラブ東京にてブルース・ギタリストのカーク・フレッチャーが、初の単独来日公演を行なった。

カークが初めて日本にやって来たのは2016年のことで、マイケル・ランドウ・グループの来日公演にゲストとして帯同。翌年にはジョシュ・スミス、マット・スコフィールドという2人のブルースマンと共に再来日を果たす。そして今回は、ソロ名義のKIRK FLETCHER BANDとしての公演だ。ラインナップは、昨年発表されたカークの最新ソロ・アルバム『HOLD ON』を共に制作したドラマーのマット・ブラウン、そして、ソニー&シェールやノエル・レディングを始め名だたるアーティストと活動を共にしたベテランのオルガン奏者レッド・ヤング。本来は、アルバムでオルガンを弾いたジョニー・ヘンダーソンが参加予定だったが、スケジュールの都合で不参加になったため、このメンバーでの来日となった。

ブルースというジャンルゆえに来場客の年齢層は高めかと思いきや、会場には老若男女問わず様々な年代のファンが集結していた。これはカークの新作の内容がブルースだけでなく、ロックやファンク、ジャズなど多様な音楽性を含んでいることが反映されているかのようだった。1日2セットで2日間行なわれた本公演のうち、ここでは最終日のセカンド・セットの模様をお届けしよう。

まず1曲目は「Blues For Boo Boo」(’04年『SHADES OF BLUE』収録)。フェンダー・テレキャスターを操るカークの、中域を押し出しつつもブライトでラウドなギター・サウンドに、その場の観客が一瞬で釘付けとなった。表情やピッキングによる表現力も非常に豊かだ。先述のとおりこのバンドはベーシストのいない3ピース編成で、サウンド的に物足りないのではないかと筆者は開演前に思っていた。しかし、レッドはハモンド・オルガンでメロディーを奏でながら巧みに足鍵盤で低音のベース・ラインを弾きコナしており、こういった楽器ならではの強みがあるからこそ“ベーシストを迎える必要がない”のだと納得した。
 

カーク・フレッチャー

 
ショウは最新アルバムからの選曲を中心に展開されていく。「You Need Me」ではスティーヴィー・レイ・ヴォーンを想起させるカークの太く力強い歌声を軸に、これぞブルース!と言わんばかりのバンド・アンサンブルが炸裂。「Sad Sad Day」ではカントリーを匂わせるプレイも披露し、改めてカークの音楽性が多岐にわたっていることを実感した。3人が互いにアイ・コンタクトを取りながら作り出すグルーヴは実に心地好く、思わず体が動きそうになる。カークはどちらかというとシリアスな表情をしていることが多かったが、時折いかにも楽しそうに笑う瞬間もあり、その姿を見ているこちらまで笑顔がこぼれてしまう程だった。

中盤にメンバー間で軽い談笑を交えた後は、新作のタイトル・トラック「Hold On」。それまでと打って変わり、スロー・テンポなクリーンのアルペジオを使ったフレーズが印象的だ。必要に応じピックと指を使い分けてピッキングするなど、この楽曲では特に彼のニュアンスに対するこだわりが感じられた。そしてギター・ソロでは一転、アグレッシヴかつ流れるようなフル・ピッキングを繰り出す姿に圧倒される。「Two Steps Forward」では、本公演の中でもとりわけエネルギッシュな演奏が繰り広げられ、3人の熱気がオーディエンスを包み込んでいった。次のインスト「Dupree」は、前の曲に対し歪みを押さえた甘いトーンによる繊細なカッティングが、全体の熱を優しく冷ますかのようだ。ここでオーディエンスの注目を集めたのが、マットのドラム・ソロ。スリリングでエネルギッシュなドラミングは強烈なインパクトがあり、叩き切ると同時に会場から大きな拍手が巻き起こった。
 
マット・ブラウン

レッド・ヤング2
 
そして本公演最後を飾ったのが「El Medio Stomp」(’10年『MY TURN』収録)だ。ブルージーながらどこかモダンさを取り入れたキャッチーなメロディーは、会場をさらに加熱させる。ギターとオルガンによるソロの掛け合いセクションでは、カークのアグレッシヴな演奏に応えるようにレッドのフレーズも激しさを増していく。その夜最高潮の盛り上がりを見せたところで終演となり、カーク達はお互いにやり切ったと言わんばかりの笑みを浮かべていた。トークこそ少なかったが、その演奏は会場を魅了するには充分過ぎたと言えるだろう。
 

最後に、今回のライヴでのカークの使用機材を紹介しておこう。まず、ギターは全曲を通して先述のテレキャスターを使用。傍らにジェームス・タイラー製と思われるギターも用意されていたが、本公演では使用されなかった。足下は下記写真の通りで、右下から反時計回りにエキゾティック“Wah XW-1”、オーヴァードライヴ2種類(アイバニーズ“TSV808”、ヴェムラム“Jan Ray”)、BOSS“DD-3”、エキゾティック“Super Clean Buffer”、TCエレクトロニクス“PolyTune2 Mini”。アンプはTwo Rock製の、おそらく“TS1 Head 100W”を使用していた。
 
カーク ペダルボード
 
ライヴ中、カークがペダルを操作する姿はチューニング以外ではほとんど見られなかった。本人によると、演奏中にペダルを頻繁に踏み替えるのは好きではないとのこと。普段は“Jan Ray”が常時オンの状態になっているが、2日目は代わりに“TSV808”がオンのまま。主にピッキングの位置やヴォリュームなど、手元のみの操作によってサウンド・メイキングを行なうのが彼のスタイルである。また会場外には特設スペースが設けられており、カークが使用していた機材と同じ製品が自由に試奏出来るようになっていた上、公演終了後は本人が実際に使用していた上記のペダルボードも展示され、多くの来場客の足を止めていた。

フォト・ギャラリー

KIRK FLETCHER BAND@コットンクラブ東京 2019.9.23 セットリスト

1. Bluse For Boo Boo
2. Funny Bone
3. You Need Me
4. Gotta Right
5. Sad Sad Day
6. Hold On
7. Two Steps Forward
8. Dupree
9. The Answer
10. El Medio Stomp