毎年2月に大阪で開催されているスラッシュ・メタルのDIY的祭典“TRUE THRASH FEST”(以下TTF)。第12回目を迎えた今年、これまでにエキサイター、タンカード、ウィプラッシュ、ポゼストなどが出演してきたこのイベントは、かつてない危機に見舞われた。ダブル・ヘッドライナーとして、セイクレッド・ライクとヴァイオレンスの出演がアナウンスされ、早々にソールドアウトという状況だったにもかかわらず、直前になってヘッドライナー2組が揃って出演をキャンセル。一時はイベントの開催自体が危ぶまれる事態となったのだ。
しかし、急遽のラインナップ変更/追加により、予定通り2日間の日程で開催。心配された集客も上々で、いつも通りに…いや、ある意味いつも以上の盛り上がりを見せた。最終的な出演バンドについては、上記フライヤーや下記タイムテーブルを参照して頂きたいが、これまで10年以上に亘って、国内外のアンダーグラウンド・シーンで強固な絆を築いてきたTTFならではの、マニアックだが強力なメンツになっていたと言えよう。尚、直前キャンセルした2バンドについては、その主張がどうもグレーで、色々と言いたいことがあるスラッシュ・ファンもいるかと思うが、主催者側の意向もあり、ここでは敢えて詳しく触れないでおく…。
「どんなメンツでも楽しくないワケがない」という安心感と信頼感
斎藤新吉:僕は今回がTTF初参加でした。おく村さんはもう何度も観に行っているんですよね?
奥村裕司:いや、今年で4回目です。エキサイターが出た’15年が初めてで、その後は、ウィプラッシュがトリだった’16年と、10周年記念の’18年。それに、全日参加はこれまでなくて。2日間みっちり…は、今年が初でした。斎藤クンが、今回「行こう!」と思い立ったキッカケは?
斎藤:前々から、「いつか行きたい」とは思ってたんです。これまでも「まさか…日本で観られるとは!」というバンドが出ていたじゃないですか? エキサイターとかレイザーとか。
奥村:あと、アイアン・エンジェルとか…?(笑)
斎藤:そうそう! ただ、いつも仕事(ヤング・ギター)の繁忙期とぶつかるのもあり、なかなか大阪まで遠征するのが難しくて…。
奥村:2月は毎年、大変なんですよね〜。
斎藤:そしたら、今年はセイクレッド・ライクとヴァイオレンスが出るというんで、それが決め手になって、こりゃ「覚悟を決めて行くしかない」…と。
奥村:それなのに、あんなことが…。その2組がキャンセルになって、行くのをちょっと躊躇しましたか?
斎藤:それよりも、イベント自体が「どうなるのか?」という不安の方が大きかったですね。
奥村:確かに…。
斎藤:ただそれでも、もし行かなかったら──それはそれで後悔するような気がしまして。
奥村:出演バンドがどうであろうと、イベント自体を「観てみたい」「参加したい」という気持ちが勝った?
斎藤:そうですね。あと、今年“スラドミ(THRASH DOMINATION)”が開催されるのかどうか、その時点ではまだ分からなかった…というのもありました。
奥村:とにかくスラッシュ・メタルのイベントに「行きたい!」と?
斎藤:“スラドミ”は勿論、以前に若手のスラッシュ・バンドが集まった“(Extreme the)DOJO”の時(’10年の“Vol.24”。ミュニシパル・ウェイスト、ウォーブリンガー、トキシック・ホロコーストが出演)もそうだったんですけど、スラッシュ・バンドが集まるイベントには特別な思いがあるんです。
奥村:元々のメイン2バンド以外で、今年のメンツで注目していたのは?
斎藤:これも結果的にキャンセルになってしまったんですけど…MINDWARSです。
奥村:元ホーリー・テラーのメンバーが組んだバンドですね。シークレット・アクトとして、開催目前という時期に発表があって、“ホーリー・テラーの曲もプレイする”とのアナウンスもありましたが…。
斎藤:ホーリー・テラーの曲をやるなんて──これも日本じゃ、他では絶対に観られないと思ってましたね。
奥村:あと、AT WARも追加バンドとして発表されたものの、やはり土壇場で来日不可となってしまいました。
斎藤:それもありましたね。その結果──実を言うと、トリに抜擢されたイーヴル・インヴェイダーズなどを除き、最終的なメンツは殆ど知らないバンドばかりになってしまって…。
奥村:同じくです。お客さんもそういう人が多かったかも? ただ、TTFって“バンドは二の次”って人も少なくないという印象で。勿論、「このバンドが出るから観に行く」というのが普通なんでしょうけど、TTFの場合、「知らないバンドだけど、観たら凄かった」というパターンを繰り返すうち、「どんなメンツでも楽しくないワケがないから迷わず行く!」という観客がどんどん増えていったのではないか…と。
斎藤:安心感、信頼感が凄い。それは出演バンドも同じで。実際、あの状況下で急遽のオファーを受けてくれるバンドって凄いですよ!
奥村:主催者の人柄も大きいようですね。
斎藤:そういった絆の強さみたいなモノも、現場で感じることが出来ました。観客もみんな熱くて──当たり前なんですが、「みんな本当にスラッシュが好きなんだな〜」と。あと、物販ブースにカセット・テープが並びまくっていたのもポイントが高かったです(笑)。
奥村:物販の“濃さ”も名物になってますね〜。海外のディーラーがブースを出してるのも毎度のことで、そこに並んでるCDやLPを見ても、知らんバンドばっか…(苦笑)。
斎藤:そういったことも含めて、他ではやれないから「俺達がやるしかない!」といった気概が、主催者側からも観客からも伝わってきました。
奥村:観客はもう、筋金入りの“スラッシュ中毒者”ばっかりで。
斎藤:着てるTシャツも、みんな面白くて(笑)。それと──やっぱり、“スラッシュのライヴの作法”というか、そういうのが身に付いてますよね。決して曲を知っているワケじゃなくても、盛り上げる方法を知っている…というか。
奥村:そしてTTFといえば、毎回ひたすらステージ・ダイヴしまくり!
斎藤:もう開演と同時に…ですもんね(笑)。「初っ端から飛ぶのか!」というのは驚きでした。トップ・バッターの地元バンド:リヴァージュが演奏を始めた途端──最初のリフが鳴った瞬間からダイヴしまくりで…!
奥村:正に「待ってました!」とばかりに!
DAY 1 – 2.22 Sat.
RIVERGE(DAY 1)
斎藤:リヴァージュは初めて観たんですけど、最初から畳み掛けるところが、オープニング・バンドとしては最適だったかと。
奥村:切り込み隊長的な。
斎藤:ザクザクのギターで、“王道”と言うんでしょうか、ニューヨーク辺りのバンドに近い、イカツい刻みまくりが良かったです。
奥村:オールドスクールでありながら、ブルータルだったりもして…。
斎藤:あと、来年のネタばらしが早速ちょっとあったりしたのも驚きでした(笑)。
奥村:ただあの時点では、主催者側も来年の開催については躊躇していたようで、キャンセル騒動の顛末をひとりで背負ってしまっているようなところもあって…。そこにハッパをかける意味もあったかと。とはいえ、実はリヴァージュも主宰バンドだったりするのですが。
斎藤:その辺りを関係者だけに限らず、観客の側もよく理解しているのも、このTTFならでは…なんでしょうね。
奥村:イベント後には、クラウドファンディングも立ち上がってましたし。ともあれ──その後、正式に来年(’21年)の開催がアナウンスされて良かったです!
リヴァージュ:TRUE THRASH FEST 2020@ESAKA MUSE 2020.2.22 セットリスト
- 1. Stand In Fear Of Nothing
- 2. Stupid City“O”
- 3. A & A
- 4. Ready To Dive
- 5. Monster Die
- 6. Hungry Child
- 7. Slavish Charge
- 8. Till I Die
ABIGAIL
斎藤:2番手はアビゲイル。
斎藤:以前にも何度か観たことがあります。いい塩梅のR&R感とメロディー要素がある…というのがオールドスクールですね。
奥村:ロケンローで、パンキッシュなやさぐれ感もあって。
斎藤:あと、これまた問答無用の突っ走り感が良かったです。
奥村:ギターのジェロはメタルシファーでも弾いていて、海外のアンダーグラウンド・シーンでもかなりの知名度みたい。ここのところ、どんどんギター・プレイがシブくなってきているような気がします。
斎藤:これは他の幾つかのバンドでも感じたんですが、やっぱり“スラッシュ以前のスピード・メタル”みたいな要素を受け継いでいるバンドが多いですよね。
奥村:“スラッシュ以前のスピード・メタル”といえば、アビゲイルはベルギーのACIDのカヴァー(「No Time」)をやってました!
斎藤:ACIDもその辺の象徴という気がします。
奥村:但し、男ヴォーカルだとちょっと違和感が(苦笑)。
斎藤:確かに。
アビゲイル:TRUE THRASH FEST 2020@ESAKA MUSE 2020.2.22 セットリスト
- 1. Metal Evil Metal
- 2. Teenage Metal Fuck
- 3. Satanic Metal Fucking Hell
- 4. Hell’s Necromancer
- 5. Metal Bitch Inferno
- 6. No Time(ACID cover)
- 7. Dick Is Fucking Big
- 8. Prophecy Of The Evening Star
- 9. War 666