毎年ドイツで開催されている世界最大級のHR/HMの祭典“Wacken Open Air”フェスティヴァル。その模様は、ヤング・ギター本誌でも度々レポートしており、既に今年も10月号へ記事が掲載済み。ただ、誌面ではどうしてもスペースが限られてしまうため、そのエクストラとして幾つかのバンドをピック・アップし、ライヴ・フォト満載のスペシャル企画をここにお届けしよう!
前回エンペラーに続く第2回では、エドガイのトビアス・サメットが主宰するメタル・オペラ・プロジェクト:トビアス・サメッツ・アヴァンタジアをピック・アップ。豪華メンツによる壮大なスケールのファンタジー絵巻を、存分にお楽しみ頂きたい!!
総勢12名が“ホーム”で繰り広げた、2時間に及ぶヘッドライナー級のメタル・オペラ
“Wacken Open Air”(以下WOA)のように、複数ステージで深夜まで演奏が続けられる巨大フェスの場合、“最終演奏者=ヘッドライナー”ではない。要は、“一番美味しい時間帯に、メイン・ステージで最も長くプレイするバンド”こそがヘッドライナーであり、とすれば、今年の事実上の大トリは、最終日のメイン・ステージにて22時より、唯一2時間という持ち時間を与えられていたアヴァンタジアということになるだろう。トビアス・サメットによるこの豪華プロジェクトが、WOAに出演するのはこれが3度目。前回は’11年で、今回は’13年作『THE MYSTERY OF TIME』に伴うライヴ・ツアーを締め括る千秋楽公演でもあった。ちなみに、出演メンツは以下の通り。
●トビアス・サメット – Tobias Sammet(vo)
●マイケル・キスク – Michael Kiske(vo)
●ボブ・カトレイ – Bob Catley(vo)
●ロニー・アトキンス – Ronnie Atkins(vo)
●エリック・マーティン – Eric Martin(vo)
●アマンダ・サマーヴィル – Amanda Somerville(cho, vo)
●トーマス“フリーデル”リトケ – Thomas Rettke(cho, vo)
●サシャ・ピート – Sascha Paeth(g)
●オリヴァー・ハートマン – Oliver Hartmann(g,vo)
●アンドレ・ナイゲンフィント – Andre Neygenfind(b)
●フェリックス・ボーンケ – Felix Bohnke(dr)
●ミロ – Michael“Miro”Rodenberg(key)
そう、’13年夏の3度目の来日公演と全く同じで、残念ながら、WOAだけの特別ゲストなどは叶わず…。ただ、やはりWOAでのショウはスペシャルだ。とにかく、あらゆる面でスケールが違う。ステージは巨大だし、パイロはガンガン使われるし、観客の数だってケタ違い。WOAの総動員数は8万人とも9万人とも言われるが、少なくともこの場には4〜5万人はいただろう。
3階建ステージの奥は一面の巨大スクリーンになっており、ショウはまず、そこへ幻想的な映像が映し出されてスタート! 雲を掻き分け大空を突き進み、ファンタジーの世界へと突入していくと、『THE MYSTERY OF TIME』(’13年)の冒頭を飾る「Spectres」がドラマティックに幕を開ける。パイロが炸裂し、壮大なるメタル・オペラの開幕に、のっけから大観衆は大熱狂だ。この時点でステージにいるのは、トビアス、サシャ、オリヴァー、アンドレ、フェリックス、ミロ、アマンダ、トーマスの8名のみ。しかし、続く「Invoke The Machine」でプリティ・メイズのロニー・アトキンスが加わって以降、マイケル・キスク(元ハロウィン、現ユニソニック)、ボブ・カトレイ(マグナム)、エリック・マーティン(MR.BIG)と、豪華ゲスト・シンガーが入れ替わり立ち代わり呼び込まれていく。
ただ当然ながら、これまでアヴァンタジアに参加してきたメンツが全員ここに揃っているワケではない。そこで、「The Scarecrow」のヨルン・ランデのパートはロニーが、「Dying For An Angel」のクラウス・マイネ(スコーピオンズ)のパートはエリックが…というように、不在シンガーのパートを誰かが賄うことになるのだが、それもまたライヴならではのお楽しみと言えよう。元々はトビアスがロイ・カーン(元キャメロット)と歌った「Twisted Mind」なんて、何故かトビアス抜きで、ロニー&エリックだけで再現されていたし。
また、全編でバック・コーラスを担当するアマンダ(トリリアム)&トーマス(ヘヴンズ・ゲイト)が、正に八面六臂の活躍を見せ、紅一点の前者が、「Farewell」や「The Story Ain’t Over」&「Lost In Space」のエンディングなどで、メイン・ヴォーカルを任されていたのも見逃せない。お馴染みのギター・チーム:サシャ&オリヴァーは、いつもながらスタジオ・ヴァージョンの再現にはこだわらず、いずれもリード・パートでは自由に、自然体でソロを弾きコナし、これまたライヴならではのヴァイブを味わわせてくれた。
ひとつ気になったのが、この日トビアスが殆どのMCをドイツ語でやっていたこと。「今日のショウは世界52ヵ国にネット中継されているんだ!」とか、英語で言わないとあまり効果ないんでは? まぁ、アンコール時には英語になっていたが──“ホーム”での大舞台を、それだけリラックスして満喫出来ていたということか。実際、トビアスは終始ゴキゲンで、終盤には、隣のステージ前でクリエイターの出番を待っている観客を挑発したりも…。ゴキゲンと言えば、エリックのテンションの高さにも驚かされた。MCで「ヴァッケンって“メタルの聖地”だから、ビビッちゃってさ…」なんて言いつつ、もはやパワー・メタルを歌うのにもすっかり慣れ、「Promised Land」ではやはりヨルンの代役を務め、MC時や曲のイントロで大袈裟にシャウトしてみせることもしばしば。このアヴァンタジアでの経験は、もしかすると彼のシンガーとしての可能性をさらに広げるかもしれない。
そしてアンコールでは、定番の「Sign Of The Cross」が、長〜いメンバー紹介(何せ、総勢12名もいるので…!)に続いて披露。全シンガー揃い踏みでの大団円は、そのまま「The Seven Angels」のサビへと受け継がれ、2時間に及ぶ壮大なるメタル・オペラは、感動と共に&トビアスによる「この後はクリエイターを楽しんでくれ!」というシャウトで幕を閉じた…!!
セットリスト
1.SE〜Spectres
2.Invoke The Machine
3.The Scarecrow
4.The Story Ain’t Over
5.Prelude(SE)〜Reach Out For The Light
6.Avantasia
7.What’s Left Of Me
8.Dying For An Angel
9.Farewell
10.Shelter From The Rain
11.The Great Mystery
12.Twisted Mind
13.Promised Land
14.Lost In Space
[Encore]
15.Sign Of The Cross〜The Seven Angels
(公演日:2014年8月2日)