2015年にシングル『GLITTER DAYS』でメジャー・デビューして以来コンスタントにリリースを続け、2016年12月のフル・アルバム『INCEPTION』も高く評価されていたFo’xTails。彼らが急ピッチな制作活動を崩さず、早くも6枚目のシングルとなる『RULER GAME』を2017年7月26日に発表する。TVアニメ『時間の支配者』のオープニング・テーマとなっているタイトル曲は、彼ららしい元気な疾走感と作り込んだ音像が心地よい1曲で、随所に登場するテンションの高いギター・フレーズは本誌読者のツボも突くはず。ギタリストの鳴風とテラに、カップリングも含めた3曲について詳しく語ってもらった。
疾走感、アニソンの王道感、ジャズ要素
YG:最新シングルを聴く前に改めて過去のシングルやアルバムを通して聴いてみたんですが、Fo’xTailsは成長の度合いが分かりやすく見えるバンドですよね。例えば1stシングルから2ndシングルのステップ・アップの度合いが劇的ですし、音源を出すごとに様々なスタイルに挑戦しようとしている。「今回はこのテーマでいこう」といった具合に、明確にヴィジョンを持って曲作りしているのでしょうか?
鳴風:これまでリリースしたシングル曲は、自分の好き勝手に作った曲もありますし、アニメ作品からイメージを湧かせて作った曲もあります。
テラ:それに関しては僕と鳴君との作曲スタイルの違いもありますね。自分の場合はアニメのイメージに引き寄せられて行くというか。作品からインスピレーションをもらい、上手く合致することが多いです。逆に鳴君はあまり意識せずに作るタイプなんですよね。
YG:今回のシングルのタイトル曲「RULER GAME」も、タイアップの話が出てから作曲したパターンですか?
鳴風:そうですね。俺が作曲したんですけど、最初にテーマとして「疾走感、アニソンの王道感、ジャズ要素」っていう3つのキーワードがあって。
テラ:話をいただいた時点で作品のプロモーション動画が既に出来ていて、そこで流れている劇判の曲がもろにジャジーなテイストなんですよ。それで「オープニング曲にもそういう要素を入れてほしい」と。
鳴風:上手くハマりました。
テラ:ジャズ・テイストというのはFo’xTailsが今までやってこなかった要素でもあるし、新しいことに挑戦できる機会でもありました。実は自分の方も別で、スウィングするリズムで動くベースが入ったジャズ・ロックっぽい曲を作っていて、「これで行こうか」という段階までいったんですよ。ただFo’xTailsらしさから離れ過ぎちゃった感もあったから、鳴君のギター・アレンジも加えて試行錯誤したんですけど、そこから上手く進まなくて。その後、次に鳴君が持って来た曲が採用されたんです。
YG:ジャズ要素というのは、具体的にはBメロのパートですよね? ピアノとウォーキング・ベースがメインになるところ。
鳴風:そうです、サビ前のギターは全然ジャズしてないんですけど、他の楽器で上手く表現できたからいいかなと思って(笑)。
YG:お題その1をクリアしたわけですね。ピアノはイントロに出て来るフレーズも印象的ですが、あれが曲の取っ掛かりのアイデアだったわけですか?
鳴風:そうですね。最初はギターだけで弾いていたんですよ。でもオケに入れたら上手くハマらなくて、喧嘩しちゃうというか。同じフレーズをピアノに変えたら上手く雰囲気が出ました。
YG:Fo’xTailsみたいな編成のロック・バンドとしては、ピアノのフレーズがメインの曲って異色ですよね。特にライヴで再現することを考えると。
鳴風:そうですね、そこはテラちゃんの人差指で(笑)。
テラ:サンプリングの再生ボタンを押せば、とりあえず何か出て来るので(笑)。
YG:ライヴのステージでは、テラさんの横にそういうトリガーみたいなものが常に置いてあるんですか?
テラ:そういう時期もありました。インディーズ時代はとりあえず「生演奏でどこまで再現できるか」に挑戦していたこともあったんですけど、曲を完璧に再現するために同期音源を使い始めて…、でもやっぱりギタリストだから自由に弾きたいんですよね。最近はどんどんシンプルなセットに落ち着き始めています。
YG:ギターのパートに関して言うと、ミックスが左右でバサっと分かれているわけではなく、何本かギターを重ねてフレーズごとに配置を考えているように思いました。この辺りは明確に狙ってやっているんでしょうか?
鳴風:基本はボトムのリフを左右で同じように弾いて、上モノを色々変えることが多いのかな?
テラ:そうなんですよ。インディーズ時代に出した音源から続いてるスタイルで、バッキングは左右どちらも任せていますね。鳴君のバッキングって個性がはっきりしているんですよ。ギター・ソロで個性を出すタイプはけっこう多いけど、バッキングでそれが出る人はなかなかいないですよね。鳴君にしかない持ち味というか、彼が弾くからこそ出るグルーヴ。やっぱりボトムを同じギタリストでしっかり固めた方が、録った音源が良くなる思うんです。
YG:中間部に出て来るピアノとギターのテクニカルなユニゾン、あそこが特にインパクト大ですよね。これはピアノのフレーズが先にあったパターンですか?
鳴風:ギターで作りました。最初は違うことを弾こうかとも思ったんですけど、ピアノとのユニゾンというのは今までやっていなかったアイデアだし、他の曲とのバランスや色を見てああいう形にしました。レコーディングで一番難しかった気がしますね…(苦笑)。
YG:ここまでの精度で弾こうと思うと、リズムの走りやタメをすべて排除する必要がありますよね。
鳴風:確かにその辺りが大変でしたね、自分で作ったのに(笑)。その後に出て来るギター・ソロでは全然難しいことをしていなくて、とりあえずメロディー重視です。
YG:そちらは溜めや突っ込みを上手く取り入れていて、対比が面白いと思いました。
鳴風:そうなんです! でもレコーディングの前にヴォーカルのtakaoから、「あそこ要らなくない?」って言われたんですよ。でも押し通しました(笑)。