お互い異なるチューニングにするとギターの音がぶつからない(ドム)
YG:では、それぞれ日本へ持ってきたギターを教えてください。
ドム:今回のツアーで使っているのはESPだけだ。俺達みんな、ESPとエンドースしているからね。俺はE-II“Arrow”とLTDの“401FM”を持ってきた。E-IIはスタンダードのオリジナル・モデルも持っているけど、そっちはツアーに持ち出したくない。高価なモデルだからね(笑)。LTDのギターは、軽くてシュレッドし易いのがイイ。ただ、エクリブリウムにはあまりソロがなくてさ…。以前はずっとソロがなくて、最近ようやく入れるようになったものの、今回のセットにはソロがある曲は入れていないんだ。
レネ:俺が持ってきたのはLTDの7弦“V-407B”。ストックのままだから、店頭でも同じのが手に入るよ。以前は、Keyの高い曲で通常の6弦ギターを、Keyの低い曲にはバリトン・ギターを使っていて、友人が作ってくれたギターが5本ぐらいあったんだけど、ツアーの回数が増えるにつれて、2本のギターを持って移動するのが大変になってきたから、7弦だけを使うことにしたんだ。“V-407B”はとてもスムーズな弾き心地で、ライヴで弾く時に重宝している。当然、サウンドも最高だよ!
YG:ドムのギターもストックのままですか?
ドム:“Arrow”はピックアップを交換したり、ステッカーを貼ったり、ちょっと自分で塗装したりしているけど、基本的にはオリジナルのままだ。あと、ボディーの裏にテープを貼り付けてあるのも──カスタムとは言えないよね?(笑) かなり鋭利な部分があるから、ちょうどステージ衣装に当たるところにテープを貼っているのさ。ピックアップは、ストックだとEMG“81”が2基搭載されているけど、リアだけちょっと不満があったんで、EMGの新しい“X”シリーズに交換した。ダイナミック・レンジが広くてパッシヴっぽい、自分だけの素晴らしいトーンが得られるようにね。これは“AX”というモデルで、内部にアルニコ・マグネットが使われている。セラミックと比べて、よりウォームなトーンが得られるから、ソロを弾くのに最適なんだ。ハムバッカーとしては、リズム・プレイに適しているようだけど、これでソロを執るのも大好きだよ。
YG:ノブはヴォリュームのみですね?
ドム:うん。でも、だから(リアの)ハムバッカーを交換する必要があった。EMG“81”も好きだけど、高域が凄く鋭くなるから、もう少し中域を強調した音が欲しかったんだ。
YG:レネは1本だけだと、ライヴ中に弦を切るのが心配ではないですか?
レネ:そうだな…。でも、ツアーでは軽装にしたいんだ。特に今回のアジア・ツアーは、飛行機移動が多いから。地元のライヴでは、予備のギターを用意するけどね。ただ、弦はしょっちゅう新しくしているし、今日も張り替えたばかりだから、大丈夫だと思う。万が一、演奏中に弦が切れてしまったら──急いで張り直すよ!(笑)
YG:今はもう6弦を弾くことはないのでしょうか?
レネ:今のところ、この7弦を家でも弾いているよ。実は、手に入れてまだ間もないから、もっと慣れるようにしているのもあるんだ。(元々6弦で弾いていた)昔の曲を7弦で弾きコナすためにも、慣れる必要があるしね。
ドム:俺は異なるチューニングを使い分けているから、2本ギターが必要なんだろうな。今は7弦を持っていないけど、そのうち手に入れたいと思っているよ。
YG:その異なるチューニングとは?
ドム:E-IIは全弦2音下げで、LTDはDスタンダード──つまり全弦1音下げだ。レネの7弦はスタンダードだから、それぞれ異なるチューニングにすることで、お互いの音がぶつからないようにしている。元々は、別のバンドで使っているチューニングを、エクリブリウムでも使おうとしたのがキッカケだったんだけどね。だって、ギターのチューニングをしょっちゅう変えるのって面倒臭いだろ?(笑) それで、(エクリブリウムの)曲を覚える時に、元のチューニングのまま弾くことにしたのさ。結果、同じ音を弾く時も、(レネとは)違うポジションで弾くことになった。すると、それぞれの周波数がスムーズにミックスされ、より良いサウンドになるんだ。
YG:では、ドムも7弦を導入すると、またサウンドが変わってきますね?
ドム:うん。でも、今のところは6弦が好きだから、7弦の導入はどうなるか分からないな。7弦に慣れるための練習時間も取れないし…。ただ、俺はDチューニングで弾くのが気に入っているものの、(通常とは)ちょっと違う弾き方をすることになって、運指が難しいところもある。だから、もしかしたら変えるかもしれない…という感じだね。
YG:ちなみに、アンプは日本で用意してもらったのですか?
ドム:ああ。ケンパーを頼んだよ。俺はエングルとエンドースしているんだけど、調達出来なかったんでね。それに、ケンパーだとどこに行っても同じ音が出せるだろ?
レネ:俺も家ではエングルだけど、ここではピーヴィー“5150”だ。前任ギタリストのアンディが“5150”を使っていたから、時々弾かせてもらうことがあって、結構好きだったんだ。
YG:レネがケンパーを使わない理由は?
レネ:単に提供されたのが、ケンパー1台とピーヴィー1台だったからさ。それで、俺がピーヴィーを選んだというワケ。
YG:エフェクターは何か持ってきましたか?
ドム:俺はナシ。ケンパーの中に内蔵されているモノを使うからね。
レネ:俺はメロディー弾きの時、ディレイを使う。他はノイズ・ゲートぐらいかな。魔法のようなモノは何もない(笑)。
YG:ところで、ニュー・アルバム『ARMAGEDDON』(’16年)からちょっと音楽性が変わりましたよね? 全体としてスピード・ダウンしていますが、何か理由が?
レネ:確かにそうかもしれない。新作はちょっとゆっくりした曲が目立っていて、速い曲も幾つか入ってはいるけど、全体的に遅めだな。ただ、毎回異なるアルバムを作るよう心掛けているんだ。以前に自分でやったことを何度も繰り返そうとは思わない。あと、(『ARMAGEDDON』は)よりダークなコンセプトを扱った内容だったから、たまたまそうなったというのもある。つまり、「スローな曲を書こう」と思ったのではなく、書いてみたらスローな曲が出来上がっただけさ。だから、今後は分からないよ。また速いアルバムが出来るかもしれない。
YG:元々はドイツ語詞の曲ばかりでしたが、英詞の曲が増えてきたことについては?
レネ:それには2つ理由がある。ひとつは、当然ながら英詞の方がより多くの人に内容を理解してもらえるから。そしてもうひとつは、曲を書いている時、頭の中に何となく言葉が浮かんできて、それが英語風だったからさ。「この曲にはドイツ語よりも英語の歌詞が合いそうだ」と直感したんだよ。ただ、これからもドイツ語はずっと使っていくだろう。
YG:曲名が英語で歌詞がドイツ語とか、ドイツ語のタイトルで歌詞が英語というのもありますね?
レネ:あるね〜。それもフィーリングさ(笑)。たまたまだよ。音楽やアートを作る時にルールは設けていないから。
YG:次のアルバムの話を訊くのは…まだちょっと早いですか?
レネ:いつでも訊いてくれて構わないけど、いま言えることは特にないな…(苦笑)。まだちょっと時間が必要だ。今はツアー・モードだから、2年後か3年後になるんじゃない?
YG:では最後に、今後のツアー予定を教えてください。
レネ:日本公演のあとは、ロシアでライヴをやる。モスクワとサンクトペテルブルグでね。2公演だけだと“ロシア・ツアー”とは言えないかな? その後はヨーロッパ・ツアーだ。今年はまだ、4〜5週間前に“70000 TONS OF METAL”に出演しただけだから、本格的なツアーはこれからだね。
YG:今年の“70000 TONS OF METAL”クルーズは、悪天候に見舞われたと聞きましたが?
レネ:あ〜、そうらしいね。俺は寝ていたから分からないけど(笑)。
ドム:いや、誰も文句を言っていなかったから、大したことなかったんじゃない? そもそも、あの船に乗っている人達はみんな酔っぱらっていて、もし海が荒れて船が大揺れしても、船がグラついているのか、自分がフラついているのかすら判別つかないだろうけど…!!(笑)