女性のみで構成されるアイアン・メイデンのトリビュート・バンド:ジ・アイアン・メイデンズのメンバーとして知られ、強力なテクニックとセクシーなルックスでも人気を高めているコートニー・コックス。その彼女が去る4月末に来日し、今夏の発売を予定している自身のシグネチュア・モデルであるキャパリソン“Horus M3 CC”のプロモーションのため都内某所にてギター・クリニックを行なった。
会場に詰めかけたファンの拍手に迎えられて登場したコートニーは、まず最初の挨拶代わりととしてアイアン・メイデンの「The Wickerman」を基にしたバッキング・トラックを使ってのデモンストレーションを披露。身体を激しく揺り動かしながらハイ・テンションなメタル・ギターを繰り出していったが、間近で観るとそのタイトさと、音の1つ1つにこもった熱いフィーリングに改めて圧倒されるものがあった。
トークのコーナーでは2015年のメイデンズ公演以来となる来日が実現したことを喜び、今回は名古屋などを観光し、東京で偶然遭遇したファンたちとの記念撮影に応じるなど、楽しい時間を過ごしたと語ってくれた。実はコートニー、ギター・クリニックを開くのは 日本に来る前にメキシコで1回やったことがあるだけなのだとか。「動物園の檻に入っているような気分!」と笑っていたが、ギターを弾きながらファンと接することができるこの機会を心底楽しんでいることがうかがえた。
メイデンズのみならず多数のヘヴィ・メタル・バンドで活躍するコートニーは、メタルを聴き始めたきっかけについて訊かれると、「私が生まれたのは1989年で、私が育った時代はメタルの黄金期がもう終わっていたの。メタルよりもバックストリート・ボーイズやブリトニー・スピアーズみたいな流行の音楽を聴いていたんだけど、私の兄がメタル好きだったから、その影響で私も聴くようになったわけ」と回答。13歳の時にギターを始めたのはメタリカやキング・ダイアモンド、ジューダス・プリーストといった王道のヘヴィ・メタルからの影響で、好きなギタリストに関しても開口一番に「アイアン・メイデンのエイドリアン・スミス!」と語っていた。ただ、ジャンルに関係なく良い曲を好んで聴くそうで、「今でもバックストリート・ボーイズは好き。今日のウォーミング・アップの時も彼らの曲を聴きながらだったし(笑)」と言って会場の笑いを誘っていた。
次の話題は2008年に加入したジ・アイアン・メイデンズについて。彼女の出身地であるフィラデルフィアでは音楽シーンに閉塞感があったため、カリフォルニアに移住し、KISSなどのトリビュート・バンドに入った頃にメイデンズへの加入の話が舞い込んで来たという。“エイドリアーナ・スミス”という名でエイドリアン・スミスのパートを担当する役職を得たことについては、「ちょうどそのスポットが空いていたから、私がエイドリアンのパートをやることになったんだけど、本当はエイドリアーナじゃなくてコートニー・コックスと名乗りたかったの」とも語る。さらに「『フレンズ』に出ていたコートニー・コックスという女優と間違われるから、“CC”という略称を考えた」とか。
続いてシグネチュア・モデル“Horus M3 CC”のプロトタイプを紹介。深くえぐられたカッタウェイや、リア・ピックアップ(“PH-bc”)の搭載といった通常の“Horus M3”との違いや、どんな会場でも抜けの良いパワフルなサウンドを得られるといった特徴を紹介し、「本当に素晴らしい芸術作品!」と自身のギターを絶讃。いかにも1980年代らしいということで、ピンクというカラーリングには非常に強いこだわりがあるそう。
中盤には2つのデモンストレーションが立て続けに披露された。どちらもオリジナルで、元々歌入りだったものをデモンストレーション用インストに再構築したものだという。まずはメイデンやドッケン、アクセプトといったバンドを想起させるようなリフが特徴のスピード・ナンバーをパワフルにプレイ。このリフがすべてダウン・ピッキングで弾くというのが最も重要なポイントで、「メタル・プレイヤーにとってはこういうバッキングをタイトに弾くことが大事」と強調していた。
続く3曲目もコートニーのオリジナル曲。「こういうクリニックをやるなら速弾きのインストを準備しておかなきゃと思って作った」というもので、「自分でも弾けるか不安になるほどのスピードなんだけど、なんとか弾けるようになったみたい」と彼女は笑っていたが、冒頭からクラシカルなシーケンス・フレーズが炸裂する凄まじいフレーズを気合い十分にプレイ。ちなみにこの曲はギターにヴィニー・ムーア、ドラムにキング・ダイアモンドのマット・トンプソンを迎えてレコーディングし、コートニーが将来発表する予定のアルバムに「Darco」というタイトルで収録されるそうだ。
熱演の後だけに少々汗ばんでいたコートニーは、次の質疑応答コーナーでも腱鞘炎のようなトラブルへの対処、ピッキングのこだわり、シグネチュア・モデルの仕様などについて、日本でお酒は飲んだのか…そんなファンからの質問の数々にも笑顔で応えていたのが印象的だった。
最後にプレイされたのは、やはりメイデンの「Fear Of The Dark」を基にデモ用にアレンジしたナンバーだ。ドラマティックなギター・フレーズを再現するコートニーも、音の世界観に入り込んでいるかのように集中していることが表情からうかがえ、緊張感ある演奏が終了した時の拍手も一際大きかった。
ファンに向けてのメッセージを送ったコートニーは、「普段はもの凄くシャイだから、こういうクリニックは苦手だと思っていたんだけど、そういう苦手意識を打ち崩していくことも大事って、今回教えてもらったわ」と実に嬉しそうにクリニックを締めくくった。終演後もファンにポートレートを渡しつつ、笑顔で交流を楽しんでいたコートニー。現在は自身初となるソロ・アルバムも制作中とのことで、今後さらに活躍の場を広げて行くに違いない。
コートニー・コックス シグネチュア・モデル詳細
Horus M3 CC – Courtney Cox Signature Caparison Guitar