2019年の来日公演モロモロを振り返る:パート1

2019年の来日公演モロモロを振り返る:パート1

4月〜6月:アヴァンタジア、ビースト・イン・ブラック、ヴェノム・インク&ガールスクール…

斎藤:では、4月──まずは、スカー・シンメトリーオムニウム・ギャザラムです。前者は初来日でした。

スカー・シンメトリー:2019年4月来日

オムニウム・ギャザラム::2019年4月来日

奥村:ファンにとっては待望でしたね。ギターのペル(ニルソン)は、他のバンドでは何度も来日してますが…。

斎藤:確かに、来日の度にバンドが違う…という。メシュガーに、ノクターナル・ライツですね。

Yama:ペルは、見た目はドワーフみたいですが、意外とお茶目なヤツでした。

奥村:とにかく巧いギタリストですよね。プレイも丁寧で。まぁ、メシュガーに起用される時点で、巧くないワケがないんですけど。一方のオムギャザは、ヴォーカルの存在感が他を圧倒してる印象ですね。ギターのマーカス(ヴァンハラ)も、どっちかというとインソムニウムの方が、より個性が出せているのでは?

Yama:ペルはデジタル機材にコダワってましたけど、マーカスは違いますよね?

奥村:そうですね。マーカスはもっとオールドスクールなイメージ。テクよりもフィーリング重視だし。そういう意味では、かなり対照的なギタリストでした。

※特別編:来日時のペル・ニルソン&マーカス・ヴァンハラ機材トークはこちら

斎藤:それから4月には、“Metal Female Voices Fest”もありました。メイン・アクトは、フュールリーヴズ・アイズですね。

:2019年4月来日

リーヴズ・アイズ:2019年4月来日

奥村:フュールはギタリストが2人ともバカテクでした。ツイン7弦で、ゴシック・メタルかと思わせて、プログレ要素をガッツリ盛り込み、さらにシュレッドも満載なのが面白い。

斎藤:どっちのバンドも初来日ですよね?

Yama:そうです。

奥村:フュールはバンドが…というよりも、アンネケ(ファン・ヒェルスベルヘン:vo)の日本初上陸に、ザ・ギャザリング時代からのファン達が号泣してました。

Yama:ネット上でも、あちこちでみんな「アンネケ」「アンネケ」って言いまくってましたね(笑)。

斎藤:リーヴズ・アイズは、ヴォーカルが代わってどうでした?

奥村:やっぱり、(オリジナル・シンガーの)リヴ・クリスティーネのイメージが未だに強いので、リヴで来日して欲しかった…という初期からのファンは多かったかも。ただ、歌の巧さという点では、リヴって線が細くて声量もないのもあって、(現シンガーの)エリナ(シーララ)の圧勝でした。

Yama:私もリーヴスは、やっぱりリヴのイメージが強いけど、今のヴァイキング風味が強くなったサウンドには、むしろエリナの方がハマってると思いました。

斎藤:リーヴズのギタリストは?

奥村:トーステン(バウアー)はギタリストというよりソングライター・タイプなので…。そういえば、もうひとりのギタリスト:ピート・シュトライトは日本に来てないんですよね? 以前からヘルプをやってるミッキー・リヒターが代役で来て…って──その後ピートが脱退し、ミッキーが正式加入してる!

Yama:リーヴスはメンバー・チェンジが多いイメージ。というか、フュールのギターの片割れは、リーヴスのライヴを手伝ったこともあるそうで。

奥村:(ネット検索して)ホンマや! フェリー(ダイセンス)がツアー・ベーシストをやってる。まぁいずれにしても、フュールのギタリストは、2人ともメチャクチャ巧いんで、これを機に是非とも注目して欲しいですね〜。

斎藤:5月に入って──フローズン・クラウンとか、アヴァンタジアとか。

奥村:フローズン・クラウンはパ●●ラが…(笑)。

斎藤:それだけですか?(笑)

奥村:正直あまりライヴ慣れしていないという印象が強かったので、次回に期待…ってとこでしょうか?

斎藤:アヴァンタジアは、ヨルン(ランデ:vo)が久々に来たんでしたっけ?

奥村:いや、ヨルンは’16年の来日にも参加してました。不在だったのは、’13年かな? 今回はマイケル・キスクがいなくて、どうかな…と思ったんですけど、それを忘れさせるぐらい、ジェフ・テイトが素晴らしかった! それから、アマンダ・サマーヴィルの代役で来たエンドリアン・カワンがまた凄くて。

斎藤:今回もやっぱり「Chalice Of Agony」はやっていない?

奥村:以前にトビー(トビアス・サメット:vo)から、じきじきに「やらない」と言われました(苦笑)。実は以前に、エドガイでやってたりするんですけど…。

斎藤:(マイケル・センベロのカヴァー)「Maniac」はやったんですね!

奥村:あとアヴァンタジアは、普段はプロデューサーのイメージが強いサシャ・ピートが、メイン・ギタリストとして活躍している点も要注目です!

斎藤:あと5月には、恒例の“SUOMI FEAST”もありました。僕は(トリの)ビースト・イン・ブラックしか観られなかったのですが…。

ビースト・イン・ブラック:2019年5月来日

奥村:今回もアントン(カバネン)&カスペリ(ヘイッキネン)のツイン・リードが炸裂しまくってましたね!

斎藤:久々に速弾きを見ていて「楽しい!」と思いました(笑)。初来日を見逃していたので、楽しみにしていたのですが、期待以上でしたね。

奥村:あの2人は、互いにエゴがないのも素晴らしい。どっちも凄まじいシュレッドを連発して、“火花散るツイン・リード”って感じなのに、あんま“バトル”という感じでもないし。

斎藤:バンドとして“魅せる”べきモノを完全に仕上げているという印象ですね。

Yama:ビースト・イン・ブラックはみんなに愛されているバンドです。初来日の時もそう感じましたが、ますますそうなってきているかと。

斎藤:僕はU.D.O.で弾いている時にカスペリのファンになったんですが、あの頃より活き活きしていて良かったな…と。

Yama:カスペリは一見とっつき難いんですけど、実は意外とフレンドリーなヤツですよ。あと──裏話としては、初来日時にウチが用意した空調ファンが気に入ったようで、今回「買って帰りたいから手配してくれ」と言われました。メンバー全員分だから、全部で6個お買い上げ。しかも、持って帰る用のケースも用意していて!(笑)

斎藤:スワロウ・ザ・サンブリュミルはどうでしたか?

スワロウ・ザ・サン:2019年5月来日

奥村:スワロウ・ザ・サンは貫禄ありましたね。ブリュミルは…もうちょっと勢いが欲しいかな〜。そういえば、今回ブリュミルは、現バトル・ビーストのヨーナ・ビョルクロート(g)がちゃんと来ていたんですよね?

Yama:はい。初来日の時は、バトビーのUSツアーと日程が重なって、代役のギタリストが来ましたけど。

斎藤:アントンとヨーナの間には、何かわだかまりのようなモノがあったりしませんか?

Yama:そこはウチも気になったんで、ぶっちゃけ訊いてみたんですよ。そしたらアントンは、「全く問題ないよ」と。多分、彼が脱けた後のメンバーについては、(アントンの解雇と)直接の関連性がないから、大丈夫なんでしょうね。

奥村:そういえば、ビースト・イン・ブラックって、東京公演初日にアンコールをやりませんでしたよね…?

Yama:ああ〜、あの時は単純に「忘れてた」そうです(笑)。

奥村:マジですか!

Yama:「何で今日、短かったの?」と訊いたら、「あ…いけね!」みたいな。なので、翌日は本来の予定通りのセットでやったという。しかし、忘れるなんて初めてですよ(苦笑)。

斎藤:続いて6月。ラプソディー・オブ・ファイアが再来日しました。

奥村:一応(?)本家の方ですね。

Yama:これは私も観ました。

奥村:出音が妙に小さかったですよね?

Yama:そう。だから、せっかくの楽曲の迫力がかなり殺がれてて…。

奥村:アンプにマイキングせず、卓に直だとそうなっちゃうのかな?

Yama:マイキングの有無はそんなに影響しないと思いますよ。もしかしたら(アレックス)スタロポリ(key)の意図もあったのかも?

奥村:でも以前のインタビューで、(スタロポリは)「よりパワフルなサウンドが欲しくて、リズム・ギターをよりヘヴィにすることで、それは達成されたと思う」と語っていたんですけど…。

斎藤:前回来日時は、出音も良かったですよね?

奥村:う〜ん…今回ほどではなかったけど、やっぱり全体的に音が小さかったような。オーケストレーションばかりが前に出て、ギター・ソロも聴こえ難くて…。

斎藤:でも、ラプソみたいなシンフォニック・メタルだと、『YOUNG GUITAR』的なギター優先の考え方は異端なのかもしれませんね。

あと、6月はルシファーも来てますね。来日は2度目ですが、ニッケ(アンデション:dr)が加入してからは初ですよね?

奥村:そうです。ギャズ・ジェニングスがいなくなって、ツイン・ギター編成になり、すっかりニッケが仕切ってました。それで、ドゥーム色よりもロケンロー的な面がより強く出るようになっていたかと。モーターヘッドの「Bomber」と、ZZトップの…というか、モタヘ・ヴァージョンをお手本にしたような「Beer Drinkers And Hell Raisers」をカヴァーしてましたし。

斎藤:ニッケがいたら(モーターヘッドのカヴァーを)やらざるを得ないでしょうね。

奥村:ギター・パートに関しては、ギャズがいなくなって、カテドラルっぽい要素が薄まったのは、バンドにとって良かったのでは?

斎藤:お次は、ヴェノム・インクガールスクール

ヴェノム・インク:2019年6月

ガールスクール:2019年6月来日

奥村:ヴェノム・インクの記憶が曖昧で…。ガールスクールの取材をやっていたから…でしたっけ?

斎藤:いえ、取材は開場前だったので、奥村さんは(ヴェノム・インクも)観ているハズですよ。僕は遅れて行って、ガールスクールの途中からだったんで、ヴェノム・インクは丸々観逃したのですけど…。

奥村:そうか…。あ〜でも、ちょっと思い出してきたかも。(ショウ)終盤の「In League With Satan」から「Countess Bathory」の流れとか…。

斎藤:ヴェノム・インクは、ドラマーがアバドンじゃなくなってたんですよね?

奥村:そうそう。でも、新しいドラマーは、結構アバドンっぽく叩いていて…。

斎藤:あと、ヴェノム・インクのメンバーが、ガールスクールのショウに飛び入りしてました。

奥村:ZZ TOPのカヴァー「Tush」ですね! デモリションマン(b,vo)だけでなく、マンタス(g)まで歌ってました。

斎藤:ガールスクールは、デニス(デュフォード:dr)の体型に驚きましたけど(苦笑)、ドラムの音のデカさにもっとビックリしました。

奥村:デニスは前回来日時から若返ったかのようでした。彼女達もモーターヘッドのカヴァー(「Bomber」)をやってましたが、他の疾走曲も含めて、デニスのドラミングが(モータヘッドの)アニマル(フィル・テイラー)みたいで。

斎藤:確かに、昔の(ライヴ)音源を聴くよりも、ずっとパワフルだったと思いました。

奥村:オリジナル・メンバーの2人(デニスとギター&ヴォーカルのキム・マコーリフ)は還暦超えなのに、本当にパワフルですわ。オバチャン・パワーに圧倒されまくりました!(笑)

対談記事の“後半戦”!
2019年の来日公演モロモロを振り返る:パート2