人気オーディション番組『アメリカン・アイドル』出身ながらガチのメタラーとして注目を浴び、ジューダス・プリーストと共演したり、クワイエット・ライオットのシンガーに抜擢されたり…と、特異なキャリアを築いてきたジェームズ・ダービン。彼を中心とするHR/HMプロジェクト/バンドのクリーンブレイクが、セカンド・アルバム『WE ARE THE FIRE』をリリースする!
2022年に『COMING HOME』でデビューしたクリーンブレイクだが、同作でリズム隊を務めたストライパーのペリー・リチャードソン(b)&ロバート・スウィート(dr)は、今回は不参加。ただ、『COMING HOME』でも見事な仕事っぷりで絶賛されたライオットのマイク・フリンツ(g)は引き続き起用…ということで、先日“RIOT祭”で来日してファンを歓喜&感涙させた彼を掴まえ、クリーンブレイクと『WE ARE THE FIRE』のあれこれについて語ってもらった…!!
ジェームズのパフォーマンスは全エピソードをチェックしていた
YG:クリーンブレイクのギタリストとしてのインタビューはこれが初ですので、まずはこのプロジェクト/バンドに参加することになった経緯から、改めて話して頂けますでしょうか?
マイク・フリンツ(以下MF):クリーンブレイクはジェームズ・ダービンがイタリアのフロンティアーズ・ミュージックと契約したことで誕生したんだ。彼等はまず、ストライパーからベースのペリー・リチャードソンとドラムのロバート・スウィートをリクルートし、俺は最後に参加することになった。つまり、俺が加わる前から、その3人がメンバーだったのさ。俺については、友人のジャイルズ・ラヴァリー(ウォーロード、アルカトラスのシンガー)から連絡があって、プロデューサーのアレッサンドロ・デル・ヴェッキオが、「このプロジェクトにマイクはどうかな?」と興味を持っていると教えてくれたんで、喜んで引き受けることにしたんだよ。大学時代にストライパーを観て以来、彼等の大ファンだったのもあってね。
YG:ジェームズのことはご存知でしたか?
MF:ああ。『アメリカン・アイドル』に出ていた頃から知っていたよ。彼のパフォーマンスは全エピソードをチェックしていたし、「コイツは素晴らしい!」と思っていたんだ。その後、クワイエット・ライオットに加わったことも知っている。だから、クリーンブレイクでギターを弾くよう依頼があった時、二つ返事でこのプロジェクトに参加しようと思ったのさ。
YG:ファースト・アルバム『COMING HOME』の作曲クレジットを見ると、あなたはジェームズやアレッサンドロと共作していますね?
MF:アレッサンドロには3曲分のデモを送ったんだ。すると、そのうち2曲についてフロンティアーズからOKが出た。「We Are The Warriors」と「Still Fighting」さ。そして、どっちもアレッサンドロが歌詞とヴォーカル・メロディを加えた形で、『COMING HOME』に収録されることになったんだよ。
『COMING HOME』のことは、とても誇りに思っている。ジェームズは本当に素晴らしいヴォーカリストだ。だから、ライオットでトッド・マイケル・ホールのためにギターを弾くのと同じくらい、幸運かつ光栄なことだと感じているよ。勿論、ペリーとロバートも素晴らしい。2人とも凄くナイス・ガイで、共に貢献できて嬉しかったな。アレッサンドロもまた本当に恵まれたミュージシャンであり、ヴォーカリストであり、一緒に仕事をするのに最高のヤツだ。作曲とプロデュースでも見事な仕事っぷりだったしね。
YG:『COMING HOME』リリース後、クリーンブレイクとしてライヴを行なったことは?
MF:残念ながら、ライヴを行なう機会には恵まれなかった。みんなのスケジュールが合わなくてさ。それに、どの曲でもギターを3〜4本は重ねているんで、もしライヴで演奏することになったらセカンド・ギタリストを加える必要もあったしね。
YG:今回のセカンド制作は、もう『COMING HOME』の時点で決まっていましたか? それとも、当初は単発のプロジェクトだったのでしょうか?
MF:最初からセカンドありきで動いていたと思う。俺が契約書にサインした時、アルバム2枚ということになっていたしね(笑)。
YG:新作『WE ARE THE FIRE』にストライパーの2人が不参加となった理由はご存知ですか?
MF:いや…実を言うと、ペリーとロバートに何が起こったのか、俺はよく知らないんだ。当然、彼等がストライパーで忙しくしているから…というのもあるんだろうけど。そういえばストライパーとライオットは、KISS主宰の船上フェス“KISS KRUISE”で2022年に共演したんだよなぁ。
YG:セカンド『WE ARE THE FIRE』の制作が始まったのはいつでしたか?
MF:確か、1年ぐらい前だったと思う。レコーディングに取り掛かったのは(2023年)11月だったかな。
YG:今回、あなたとジェームズの名前がクレジットされている楽曲は「Resilience In Our Souls」のみですね? 前作ほど共作をやらなかったのはどうしてでしょうか?
MF:元々は何曲か書いて提供するつもりだったんだ。でも、最初の曲を送った時点で「既にアルバムの楽曲は書き終わっている」と言われて、もうアレンジも終わっている…とのことだった。ヴォーカル・ラインはアレッサンドロとジェームズが加えたようだが、それぞれどれぐらい貢献したのか、それは俺には分からないな。
YG:アレッサンドロが仲間と書いた曲は、あなたの許にどのような状態で届けられるのですか? ギター・パートは既に書かれているのでしょうか?
MF:ラフでシンプルなギター・トラックが送られてくるんだ。ただアレッサンドロは、リズムにしてもソロにしても、俺がベストだと思うことを「自由にやって良い」とハッキリ言ってくれていたよ。
YG:『WE ARE THE FIRE』収録曲のギター・パートはすべてあなたが弾いていますか? それとも、アレッサンドロや他のプレイヤーが一部を弾いていたりもするのでしょうか?
MF:俺が知る限り、このアルバムに入っているギター・パートはすべて俺自身のモノだ。まぁ、アレッサンドロが何かを忍び込ませた可能性もなくはないし、プロデューサーである彼が望めばいつでもそうできるハズだけど、それはないと思うな。
“ソロは曲の中の曲だ”と教わってきた
YG:では、『WE ARE THE FIRE』のレコーディングで使用したギター周りの機材を教えてください。ギターは複数本使いましたか?
MF:リズム・ギターのほとんどは、セイモア・ダンカンのピックアップと“Evertune”ブリッジを搭載したLTD“EC-1000”で弾いた。一方ソロは、ギブソンのカスタム・ショップ製レスポールとピーヴィー“Wolfgang”を使い分けたよ。
YG:アンプは何を使いましたか?
MF:ケンパーでマーシャル、フリードマン、EVHアンプのモデルを選んで使ったんだけど、アレッサンドロが俺のチョイスを気に入らなかった時のためにリアンプできるようダイレクト・トラックも録音した。でも、彼がリアンプしたかどうかは分からないな。
YG:エフェクターはどうでしょう?
MF:エフェクト・ペダルは使ってないよ。プロファイルにあるサウンドのみを使用しただけだ。まぁ、アレッサンドロが好みに応じて、あとからエフェクトを追加しているとは思うけどね。
YG:全曲のチューニングを教えてください。
MF:「Never Gone」「Love Again」「We Are The Fire」「Resilience In Our Souls」はノーマル・チューニング、「Start To Breathe」「Deal With Yourself」「Can’t Lose Hope」は全弦半音下げ、「Unbreakable」「Breathless」はドロップD(6弦のみ1音下げ)、「Bide Our Time」は全弦1音下げで、「Warrior’s Anthem」はドロップC(全弦1音下げ+6弦のみさらに1音下げ)だ。
YG:『COMING HOME』と比べると、新作『WE ARE THE FIRE』ではよりブリティッシュ&ヨーロピアンな楽曲が多いように感じました。
MF:それを目標にする話し合いをもったりはしなかった。だから、結果的にそうなっただけ…だけど、俺は元々ヨーロピアンなムードが大好きだし、ずっとそうしてきたよ。
YG:ギター・ソロは気負いなく、リラックスして伸び伸び弾いているような印象です。どれも実にあなたらしいソロだと思いましたが…?
MF:そう言ってもらえて嬉しいよ。でも、特に意識したりはしていないんだ。いつも最初は、何度も何度も即興で演奏し、それを録音しておく。それで「良くなってきたな」と思ったら、気に入らないトラックを消して一番良いと思った5トラックだけを残し、その中から一番良い部分を選んで組み合わせていくのさ。そして最初へ戻り、その気に入った部分をつなぎ合わせたソロを改めて最初から最後まで演奏してみる。俺はずっと「ソロは曲の中の曲だ」と教わってきた。結果的に、今回もなかなか上手くいったんじゃないかな?
YG:ギター・ソロを入れる箇所は最初から決まっているのですよね? それとも、あなたが「ここでもソロを弾きたい」と言える余地はありましたか?
MF:アレッサンドロは、俺が好きに演奏する自由を与えてくれる。今回もソロを入れるべき場所は、幾つか明確に存在していたね。
YG:ライオットで弾く時と、このクリーンブレイクや他のバンド、プロジェクトで弾く時とでは、違うことをやろうと思いますか?
MF:いつも自分らしくいよう…と努めているよ。俺は美しいメロディが好きなんだ。あと、ハーモニーも好きだし、ちょっとした速弾きをやるのも好きだ。それから、演奏に少しユーモアのセンスを持たせることもよくやるし、一緒に口ずさめるギター・パート、口笛で吹くことのできるソロというのも心掛けているよ。
YG:『WE ARE THE FIRE』収録曲の中で、ヤング・ギター読者に最も注目して欲しいプレイというと?
MF:申し訳ないけど、どれか選ぶのは難しいな…。ひとつ言えるのは、俺のギターが楽曲に何かプラスになることをもたらしていれば…ということだけだ。そうだと嬉しいんだけど。つまり、すべては楽曲次第なんだ。だから、特に“これ”と指定できるプレイはないね。
YG:『WE ARE THE FIRE』に伴い、今後ライヴ/ツアーを行なう可能性は?
MF:繰り返しになるけど、みんな多忙でスケジュールに追われているから、現時点では何も予定は立っていない。残念ながら…ね。
YG:先日のライオット来日公演は、ヴァレンティノ・フランカヴィラとの共演も含め、大いに楽しませてもらいました! 次回は是非、ジェームズと一緒に来日して、ライオットとクリーンブレイクのダブルヘッダーでファンを喜ばせてください…!!
MF:ありがとう! そうできたら最高だね。ヴァレンティノは実に素晴らしい! 才能に満ちたギタリストで、人柄も最高なんだ。彼に会えて本当に良かったと思ってるよ。うん、次回はクリーンブレイクとして日本に戻って来られたらイイね…! ヤング・ギターにも感謝している。ライオットでの35年間、 沢山のインタビューやサポートをしてもらったからね。いつもありがとう!!
INFO
日本盤公式インフォメーション
We Are The Fire – Avalon Label|Tokyo Japan