ウリ・ジョン・ロート等と共演経験を持つルカ・ポーマが様式美HRバンド:ムーン・レヴェリーを始動!

ウリ・ジョン・ロート等と共演経験を持つルカ・ポーマが様式美HRバンド:ムーン・レヴェリーを始動!

ウリは俺のプレイ・スタイルや音楽に対する姿勢を気に入ってくれた

ムーン・レヴェリー

YG:ところで、あなたはこれまでにウリ・ジョン・ロートやヴィニー・ムーア、キー・マルセロなどと共演してきたそうですね? それぞれバンド・メンバーとしてライヴやツアーに参加したのですか? それとも、ゲストで弾いたり、ジャムったり…といった形でしたか?

LP:俺はいつだって、友人でもある著名プレイヤー達のバンドの一員として、ツアーやライヴに帯同し、一夜限りのスペシャル・ギグにも参加してきたよ。ムーン・レヴェリーとしては、OLIVER DAWSON SAXONのグラハム・オリヴァー(g)をゲストに迎えて、スペシャルなショウを行なう機会にも恵まれた。俺はサクソンも大好きでね。あの時は、まずムーン・レヴェリーがオープニング・アクトとして演奏し、その後、俺達がグラハムと共にサクソンの曲をプレイしたんだ。そのパターンでは他にも、ウリとも行なっているよ。やはりムーン・レヴェリーがオープニングを務め、そのままウリのバック・バンドとしてのショウもコナしたのさ。

YG:ウリとはどのようにして知り合ったのですか?

LP:最初に会ったのは2004年だったな。彼がイタリアでUFOのオープニング・アクトを務めた時、「どうしても会いたい!」と思った俺は、バックステージに忍び込んだのさ。幸い、彼は凄く良くしてくれて、音楽の考え方などについて1時間以上も話し込んだよ。あの時はメチャクチャ嬉しかったな。それがキッカケとなり、彼との交流は今でも続いている。ちなみに、その時はUFOのギタリスト:ヴィニー・ムーアとも会ったんだ。その時、俺はまだ彼のことをよく知らなかったんだけど、それから数年後、ウリともヴィニーとも一緒にプレイすることになるなんて…本当にビックリだよ!!(笑)

YG:ウリと一緒にジャムっている動画が、YouTubeにありますね? 

LP:うん。ヨーロッパ各国やロシア、それからアラブ首長国連邦で彼とプレイしている動画が、YouTubeに山ほどアップされているよ。あと、キー・マルセロやヴィニー・ムーア、グラハム・オリヴァーやT.M.スティーヴンスなど、他にも多くのプレイヤーとの共演動画がある。ウリとはこんなこともあった。2005年に、俺はイタリアで最も有名なギター誌の取材を受けたんだ。その時、いかにウリが素晴らしいか語りまくっていたら、その翌年、彼が“SKY BAND”を率いて、スコーピオンズの旧友フランシス・ブッフホルツとイタリアを再び訪れた際、俺を取材した記者から「インタビューに同行してくれないか?」と頼まれたんだ。彼はスコーピオンズ脱退後のウリについて疎かったから、俺をウリの“エキスパート”として頼ってきたのさ。

そしたら何と、ウリは俺のことを憶えていてくれてね! 勿論、インタビューは大成功だ。すると、予想もしないことが起こった。何とウリが、俺をジャム・セッションに誘ってくれたんだよ。その数日後、俺が住んでいる街の近くで彼のライヴがあり、そこで「Dark Lady」(『IN TRANCE』収録)を15分間に亘り初めてセッションしたのが、例のYouTube動画だよ。お互いアドリブでソロの掛け合いをやったところ、ウリは俺のプレイ・スタイルや音楽に対する姿勢を気に入ってくれたようだ。

しかも彼は、俺が空いている時はいつでもセカンド・ギタリストとして誘うよう、イタリアでのマネージャーに言ってくれたのさ。それを契機に、色々な形で彼のバンドに参加し、世界中でステージを共にすることになった。時には彼のメイン・バンドのメンバーとして、またある時は特別なツアーやギグの一員としてね。いや、毎回必ず…というワケにはいかなかったけど、それでも現在に到るまで、彼との友情、そして演奏パートナーとしての関係はずっと続いている。もう永遠に感謝し続けるしかないよ。だって、ウリとの仕事があったからこそ、さらに多くの敬愛するミュージシャンとの出会いの機会が得られたんだからね。俺にとって、ウリの影響は本当に大きい。今後も作曲家として、また演奏家としても、ずっと影響され続けていくだろうな。

YG:ところで、ムーン・レヴェリーは2012年に結成されたそうですが、今回のアルバム・デビューまで8年もかかったのはどうしてですか?

LP:俺は絶対に妥協しないタイプの人間なんだ。バンドを始めた頃、ヨーロッパの音楽ビジネスはしばらく完全に死んでいるも同然だった。違法ダウンロードなんかのおかげでね! でも俺は、アルバムを出すのならベストな状態でなければ…と思っている。可能な限り、ベストなスタジオ、ベストなプロダクション、ベストなプロモーションが揃っていないとダメなのさ。なのに、当時の俺には時間も予算もなく、エネルギーにも欠けていた。

いや、予算を削って制作することも出来たよ。他のバンドにように…ね。しかし、そんなことをするつもりはさらさらなかった。100%で臨むか、それともやらないか──中途半端はゴメンだ。それで俺は、曲を書き続け、バンドとしてライヴを続けることを選んだ。そして数年前、アルバム収録曲を選定し、必要な作業を進める中で、マーケットの状況から「今がその時だ」と感じたのさ。ここで改めて、日本のみんなに感謝を述べたい。俺達のサウンドは世のトレンドから掛け離れているのに、日本のファンは俺の作品を愛してくれ、敬意も払ってくれた。君達のように音楽を注意深く聴き、酷い音質のデータを違法ダウンロードするのではなく、アルバムを買ってアーティストをサポートしてくれる国がまだあることに、俺は音楽への大いなる希望を感じている。日本のリスナーみんな、そして所属レーベルのルビコン・ミュージックとロックショッツ(Rockshots Records)には、本当に感謝してもしきれないよ!

YG:『MOON REVERIE』収録曲の曲作りはいつ行ないましたか? 様々な時期に書かれた楽曲で構成されているのでしょうか?

LP:殆どの曲は一気に書き上げた。さっき話したように、長年ライヴでプレイされてきた曲もあるけどね。一番古い曲はバラードの「Far Above」で、これは20年くらい前に書いた。色んな理由でこれまで未発表になっていたものの、俺はこの曲が大好きだし、アルバムの中でも特にお気に入りの1曲なんだ。だから、お蔵入りにはしたくなかった。他は概ね同じ時期に書いたけど、一番新しい曲は、多分「On The Edge」かな。

YG:『MOON REVERIE』を聴いて真っ先に思い出されたのは、ウリではなくイングヴェイ・マルムスティーンでした。やはり彼からの影響は、作曲面でもプレイ面でも大きいですか?

LP:イングヴェイは間違いなく、俺のプレイ面に最も大きな影響を与えた一人だ。ブルースとロックとクラシックを融合させた彼のスタイルは、いつだってユニークだし最高さ。正に真の天才だね。ミュージシャンとして秀でているし、何より俺が大好きな曲を何曲も書いている。でも、俺は多くの彼のフォロワーのように、ただプレイをなぞるようなことはしないよ。言うまでもなく、フレーズを一音々々コピーすることも絶対にない。実際、「On The Edge」「Far Above」「Into Glory」なんかは、イングヴェイが書くような曲とは程遠いだろ? 今回のアルバムには様々な影響がミックスされていて、それらがひとつになり、つながり合っている…ということなんじゃないかな。

YG:ちなみに、あなたが一番好きなイングヴェイのアルバムは?

LP:『FIRE & ICE』(1992年)だね。これまでで最も好きなアルバムの1枚だ!

YG:『MOON REVERIE』を聴いたリスナーから、“イングヴェイ・タイプのギタリスト”“ネオ・クラシカル・スタイルのギタリスト”として限定的に見られるのは避けたいですか?

LP:問題ないよ。確実に影響を受けているんだし、そこに俺の魂が共鳴するんだから。まぁでも、ルカ・ポーマとしてベストな存在になれるようこれからも頑張るよ!

YG:では、『MOON REVERIE』のレコーディング使用機材を教えてください。

LP:俺はすべて“ホンモノ”の機材だけを使っている。そこに妥協はない。言うなれば、野獣を手懐けるかのように扱う楽器が好きなんだ(笑)。だから、今どきのデジタル機材は一切使わないよ。ギターはフェンダー・ストラトキャスター。俺にとってのヒーロー達が使っているギターさ。俺は色々な年代のストラトを15本所有していて、他のギターを弾くことはない。中でも気に入っているのが、1998年製の“Voodoo Stratocaster”と1975年製の黒いストラトキャスターで、今回のアルバムでもその2本を弾いた。アコースティック・パートで使ったのも、フェンダーのギターだよ。あとは、EkoのエレアコとSakuraのクラッシック・ギター。”Sakura”は、俺が最初に手に入れたギターなんだ。

YG:ストラトキャスターはストックのままですか?

LP:いや、パーツを交換しているところもあるよ。ハードウェアなんかはヴィンテージものやリイシューされたものに換えたり、1977年製のネックとか、1962年型のブリッジとか、あと、ボディーをイングヴェイ・モデルのものにしたりとか。ピックアップも、ディマジオの“Virtual Vintage”や“HS-3”や“HS-4”のように、少し出力の大きいモノに載せ替えることがある。ストラトって、そうして色んなパーツを交換しながら、理想のギターに組み上げることが出来るのがイイよね! さらに必要とあらば、ネックや指板のラッカー塗装を剥がしたりもする。俺はあのベタベタする感触が好きじゃないんだ。

YG:アンプとエフェクターは?

LP:マーシャルの50Wヘッド“JCM 800”を、同じくマーシャルの2台のキャビネット──“1960A”と“1960BX”につなげて使用している。ペダルは最小限にとどめていて、ジム・ダンロップのワウ“Crybaby”、BOSSのノイズ・サプレッサー“NS-2”、MXR“Uni-Vibe”、あとはクリーンにブースト出来るよう改造したオーヴァードライヴなどだね。

YG:『MOON REVERIE』収録曲の中で、特にYG読者に注目して欲しいプレイを挙げるとすれば?

LP:「Forgiveness」かな。この曲には、ムーン・レヴェリーらしさが詰め込まれているよ。全体としてクラシカルで、ヴァースはディープ・パープル風、サビはメロディックだし、フラメンコっぽいクラシック・ギター・パートもあって、俺が受けた音楽的影響すべてが上手く反映されている。俺は’70年代のクラシカルなプログレ・バンド──例えばルネッサンスなんかも大好きなんだ。

 あと──もっと細かく言わせてもらえるなら、「The Raven」の3’06″からのクラシカルなパートとか、「End Of Times」の3’43″からのパートとか。どちらもバッハの影響が明確に出ている。前者では変わった感じで開放弦を使っていて、後者はハープシコードからインスパイアされたんだ(編註:記事最後の奏法解説を参照)。

YG:では最後に──ムーン・レヴェリーのような音楽性を目指しているYG読者に、何かアドヴァイスがありましたら…!

LP:俺から言えることは、自分の世界だけに閉じこもるんじゃなく、出来る限り沢山のプレイヤーと一緒にプレイしよう…ということだね。あと、家のパソコンの前といった生ぬるい環境でプレイするのではなく、沢山ライヴの生演奏を経験して欲しい。それが君達のミュージシャンシップを育て、キャラクターをつくり上げ、ステージで起こり得る様々な状況に対処する方法も教えてくれるから。さらに──もうひとつ。アンプと楽器は“ホンモノ”を使って、常に自分のプレイを録音し、それを自分で聴いて、厳しい目と耳で自己分析すること…! Rock on!!

Luca Poma

INFO

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2020年発表

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