「昔のバンドのままではいたくない」マイク・フリンツ&ニック・リー ライオット 2018.9 来日インタビュー

「昔のバンドのままではいたくない」マイク・フリンツ&ニック・リー ライオット 2018.9 来日インタビュー

昨年秋、ラウドネスとの豪華カップリングにてダブル・ヘッドライナー・ショウを行なったライオット(RIOT V)のインタビューをお届けしよう!!

彼等は同年3月にも来日し、名作『THUNDERSTEEL』(’88年)のリリース30周年を祝う全曲再現ライヴを行なってくれたが、それからわずか約半年での日本再上陸にファンは大歓喜! 同年4月リリースの最新アルバム『ARMOR OF LIGHT』から「Victory」「Angel’s Thunder, Devil’s Reign」「Heart Of A Lion」「Caught In The Witches Eye」がプレイされ、当然ながら、往年の代表曲/人気曲も次々と飛び出した白熱のステージに、みんなヘドバンとシンガロングが止まらなかったに違いない。しかも、アンコールで披露された必殺曲「Warrior」(’77年『ROCK CITY』収録)には、ラウドネスから二井原 実(vo)&山下昌良(b)が飛び入りし、さらなる熱狂が巻き起こったのであった。

そして──演奏を終えて間もなく、バックステージにて行なわれたのが、師弟コンビ:マイク・フリンツ&ニック・リーへの本インタビューだ。ただ、「Warrior」での共演のお返しというか、今度はラウドネスのアンコールで、ライオットからマイクとトッド・マイケル・ホール(vo)、ドン・ヴァン・スタヴァン(b)が客演することになっていたため、マイクはどうも気が気じゃない様子。いや勿論、共演への期待感も大きかったのだろうが、程なくラウドネスのショウが始まり、マイクだけでなくニックも、楽屋のモニターに映るその様子を度々窺いながらの取材となった…!

ライオット公演ベスト3はバルセロナと’89年〜’90年の東京だ(マイク)

マイク・フリンツ(以下MF):ライヴは観てくれたよね? どうだった?

YG:最高でした! オーディエンスもみんな歌いまくりで、お2人のコンビネーションも抜群で…!!

MF:それは良かった! でもね、実はロスト・バゲージに遭って大変だったんだよ。

YG:えっ! 機材は大丈夫だったのですか?

MF:それは何とかね…。でも、スーツケースが出てこなくて、着の身、着のまま…って感じでさ(苦笑)。ライオットって、飛行機移動でツアーする度に何かしらトラブルに巻き込まれるんだ。前回の(ヨーロッパ)ツアーでは、ギターが出てこなくて、毎晩ギターを借りるハメになっちゃったしね…。

ニック・リー(以下NL):そう、毎晩だったよ。ドイツの“Wacken Open Air”(以下WOA)に出る直前になって、やっと機材が届いたんだけど、その前のショウは毎晩、誰かにギターを借りてコナしていたんだ。

MF:オープニング・アクトのバンドがギターを貸してくれて…。あと、ストラップも…ね!(笑)

NL:うん。だから毎晩、違うギターを弾くことになってしまって…。

MF:俺は2本持って出たうちの1本が紛失しただけだったから、もう1本ので何とか乗り切ることが出来たけど、ニックは1本しか用意していなくて、借りるしかなかったんだ。

NL:ある晩、借りたレスポール・カスタムがなかなか良かったりもしたんだけどね(笑)。でも、インプット・ジャックが付いていなかったから、前座バンドのベーシストに頼み込み、ベースからジャックを外して取り付けてもらったんだ。

MF:それも開演5分前に…ね! あれはロンドンだったっけ?

NL:そうだね。結局あのツアー中、ちゃんと自分の機材でプレイ出来たのは、WOAとスペインのフェス(“Leyendas Del Rock”)だけだったよ…。

YG:WOAでのショウは私も観ましたが、異常な熱波による酷暑で演奏するのも大変だったのでは…?

NL:ああ。ドイツ滞在中はずっと暑かったね。それなのに空調がないことが多くて、(ライヴ中以外にも)大変な思いをしたよ。

MF:ホテルやライヴハウス、そしてヴァン(ツアー・バス)にも空調が付いてなくてさ。夜は寝られないし、死ぬ思いをしたな。ドラマーのフランク(ギルクリースト)なんて、ベッドを(部屋の)外へ持ち出して、夜を明かしていたし。本当だよ!(笑) 窓に網戸がなくて、開けっ放しにしていたら虫に刺されるし、汗はかくし、とにかくキツかったなぁ…。

NL:(華氏)95度(=摂氏35℃)の中、エアコンのないヴァンに乗っているのは辛いね…。それでも、ショウはどこでも素晴らしくて、観客がみんなとても喜んでくれたのが救いだったけど。

MF:どんな辛いなことがあっても、俺達は心からのプレイをするからね。それに、WOAはこれまでで最大規模のフェスだったんだ。出番が早くて、12時頃には演奏開始したから、観客の数はそう多くはなかったけど…。多分、3千人ぐらいだったんじゃない? WOAには以前にも出演したことがあって、その時(’98年)は今回よりも人が多かった。2万5千〜3万人はいたと思う。マーク・リアリ(g:故人)、ピート・ペレス(b)、マイク・ディメオ(vo)がいた時のラインナップだよ。あの時のショウは、俺の中でベスト3に入るな。あとは、’89年と’90年の東京公演さ。他にも、RIOT Vとしてやったバルセロナでのショウも良かったけど。

YG:’15年の“ROCK FEST BARCELONA”ですね?

MF:そうだ。あの時は3万人の観客に迎えられたよ。ジューダス・プリーストのすぐ後の出番でね。2つあるステージの一方から、“Living After Midnight〜♪”と聴こえてきた5分後に、もう一方のメイン・ステージで「Thundersteel」からショウをスタートさせる…という状況だった。あの時の観客も凄い盛り上がりだったな。恐ろしいぐらいだったよ!(笑)

NL:僕にとっては、最も観客が多く、最もクレイジーになってくれたライヴだったね。

MF:マーク・リアリが亡くなってから、あんなに大きな会場でプレイしたのは、あのバルセロナが初だ。それに、ジューダス・プリーストの次に登場したというのも凄い。そして、俺達の次はヴェノムだよ。とにかく強烈だった。

NL:クルーがいなかったんで、自分でアンプの音出しをやったんだけど、その最中に、隣のステージからロブ・ハルフォードが鳴らすハーレーの爆音が聞こえてくるんだよ! 「今、アッチはどうなってるんだろう?」と、もうそれが気になって、気になって…(笑)。しかも、みんなに見られながらのサウンド・チェックだろ? そんな状況で、ジューダス・プリーストの演奏中に準備をするなんて、とにかくクレイジーだったね。

MF:ああ、最高さ!!

RockFestBarcelona_flyer

アキラ・タカサキに弦を譲ってもらったんだ(マイク)

YG:そして、ロストバゲージは今回も…?

NL:うん。ニューヨークから日本へ来る途中、トロントで乗り継ぎがあったんだけど、トロントへ向かう飛行機が遅れてしまい、羽田へ向かう便に間に合わなくなって、急遽モントリオール経由に切り替え、成田へ向かったんだ。でも、そのゴタゴタもあって、僕のスーツケースとペダル・ボードが届かなくて…。

MF:俺もスーツケースがないから、ここ2日間、同じ服のままだ(苦笑)。

NL:ホント…最悪だよね。これも“ロックンロール・ライフ”ってヤツなのかな?(笑) でもさ、自宅のアパートを出た時と同じ格好でライヴをやるなんて──果たしてそれが“ロック”なのかどうか…。

YG:では、今回日本へ持ってきたギター周りの機材を確認させてください。

MF:俺はレスポールと、アーム付きのクレイマーを持ってきた。レスポールは日本製だよ。オーヴィルさ! だって、日本でプレイするんだからね。しかも、日本で作られたとはいえギブソン(Orville By Gibson)に変わりはないし、とにかく素晴らしい音が出せるんだ。手に入れたのは4〜5年前だったかな? 中古だったよ。ギブソンのギターを安く買いたい──それならオーヴィルを選べばイイと心得ていたんでね。日本製のクオリティの高さは折り紙付きだから、俺の友人達も、みんなオーヴィルを探しているよ。あ〜でも、あの品質の良さをバラしちゃったから、これでみんなオーヴィルを買いに走ってしまうかもしれない…(苦笑)。

YG:クレイマーはSTシェイプですよね?

MF:そう。’80〜’81年製かな? 弾き心地が気に入っている。ただ、オリジナルのギターはボディーがちょっと重過ぎたから、ライト・スワンプ・アッシュに交換した。いや…実を言うと、ネックだけを残して、全体的に組み直したんだ。ボディーもピックアップも異なるし、フィニッシュもタング・オイル(桐油)を使って、自分で仕上げたから。ピックアップは、ブリッジ側がEVHで、ネック側はリオ・グランデ製。あと、フロイドローズのトレモロ・ユニットも搭載してある。

NL:僕はヴィジェを2本持ってきたよ。

YG:それぞれどんな仕様でしょう?

NL:“GV Rock”が2本あって、それぞれピックアップが異なる。元々ヴィジェのギターには、ドイツ製のアンバー・ピックアップが載っているんだけど、1本はブリッジ側のみセイモア・ダンカンの“Distortion”に換えたんだ。ちょっと違うものを試してみようと思ってね。結果、凄くタイトなサウンドになった。もう1本はバックアップ用で、ディマジオのラム・オブ・ゴッドのマーク・モートンのモデル(“DP245 Dominion”)が載っている。

YG:それぞれ2本のギターのチューニングは同じですか?

MF:ああ。スタンダードだよ。他のバンドみたいにチューニングを下げたりはしない。レギュラーでやっているんだ。

YG:マイクは、STシェイプの方が高音弦の鳴りが良いように感じたのですが…? 特に「Outlaw」(’81年『FIRE DOWN UNDER』収録)などで…。

MF:そうだったんだ? 面白いな。実は今日、それぞれのギターに異なる弦を張っていてさ。俺の弦は行方不明中のスーツケースの中に入っているから、アキラ(高崎 晃)に弦を譲ってもらってね。彼はアーニーボールとエンドースしているんだ。俺も4ヵ月前からアーニーボールに切り替え、今は俺もニックもエンドース契約を結んでいるんだけど、普段の亜鉛が使われている弦とは違って、彼(高崎)のはコバルト製。とてもブライトなサウンドが特徴的な弦さ。それで、レスポールにはアキラのセットをフルで張り、クレイマーは低音側の3本だけアキラのセットを使って、下の3本(高音弦)はニックのアーニーボール“2223 Super Slinky”を張ってみた。

NL:“Heavy Bottom”的(低音弦のゲージが太め)だね!

MF:そうそう。だから、高音弦がよりクリアに聴こえたのかな? 低音弦が太過ぎたのか、ギターの状態が不思議な感じになっていたけど、それでも問題なかったんだね。(演奏中は)すっかり忘れていたけど、服はないし、弦はないし…で、大変だったんだ(苦笑)。

YG:バンド・サウンド全体も、とてもクリアで素晴らしかったです。2階席で観ていたのですが、ショウによっては、1階フロアと音が全然違うこともあるのに、全く問題ありませんでした。

MF:ステージ上のサウンドも凄く良かったよ。ラウドネスのスタッフがやってくれたと思うけど、イイ仕事をしてくれた。いや〜、嬉しいね。普段から俺達を担当しているワケじゃないのに──実にありがたい!

YG:ニックはどんなキッカケでヴィジェを弾くようになったのですか? 以前はギブソンのレスポールを弾いていましたよね?

NL:前はオーヴィルのレスポールを弾いていたよ。

MF:俺がいま弾いているモデルと同じだ。

NL:そう。マイク・フリンツ仕様…かな?

MF:俺のカスタム・ショップの特製さ!!(笑)

NL:(笑) ある時、ヴィジェで働いている友人に勧められて、試奏してみたら気に入って、エンドースの世話もしてくれるということで、それから使い始めた。’16年からかな? 最初はブラックの“GV Rock”を提供してもらって、2〜3年弾いていたんだけど、今のギターは僕専用に作られたモデルだよ。あと現在、新しいギターを作ってもらっているところでね。トレモロ付きでストラトっぽいシェイプになりそうだ。凄く楽しみだよ。