ライオットを通してオールドスクール・メタルが好きになった(ニック)
YG:ところで、「Bloodstreets」(『THUNDERSTEEL』収録)はジャムっぽく始まりましたが、その際、何か2人で話していましたよね?
MF:そうだっけ? 憶えてないな…。あれは思い付きでそうしたんだ。普通にイントロを弾き始めることもあれば、先にちょっと何か弾いてから(曲に入る)…ということもあるんでね。
NL:時々、(役割を)入れ替えたりもするんだ。今日はマイクがソロを弾き始めたから、僕はEコードを鳴らすことになった。あの時、2人で話していたのは…士気を高めるようなことだったんじゃないかな?
MF:あ、そうか。「今日の観客は素晴らしいな! 彼等のために心からプレイしよう」というようなことだったのかも…。そもそも俺は、彼のギターの先生だったから、そんなことを言ったのかもしれない。
NL:最高の先生だよね!(笑) 実際、今日は良いヴァイブがあったと思う。
MF:いつもウマくいくとは限らないけど…。今日は(他のメンバーに)何も言わず、ひとりで弾いてみるところから始めようと思ったんだ。ただ「弾きたい」と思ったから弾いただけでさ…。
NL:時には、何があってもプレイし続ける…という状況になることもあるけど、今日は凄くリラックスした雰囲気の中でプレイ出来たよ。
MF:毎晩、同じプレイにはならないからな。インプロヴァイズするところもあるさ。良いプレイが出来る日もあれば、悪いプレイになる日もある。そこが楽しくもあるんだよね。何が出て来るか分からない…というところがさ。今日はそれがウマくいったんだろうな。
NL:僕にとっては、インプロヴァイズする時が一番大変だ。良いフィーリングで、満足がいくプレイが出来ることもあるけど、無様なプレイになってしまうこともある。でも、ああいった場面がセットに入っていると嬉しい。いつもワクワク出来るからね。
MF:今夜は、これから始まる5週間の長期ツアーの最初のショウだったとも言える。プライマル・フィアとヨーロッパを廻るんだ。ただ、前回のツアーは短期間で終わり、それから3ヵ月ぐらいリハーサルすらしていなくてさ…。おかげで──1ヵ所、恥ずかしいミスもしてしまったけど、それだってライヴの醍醐味なのかもね。
NL:(ヨーロッパ・ツアーを完了して)10月28日になったら、また色々と思い出すことになるよ。
MF:そうだな。新しい曲にも取り組んでいるから…。家にこもって練習するのもイイけど、ステージに上がってやるのとはやっぱり大違いだ。ステージに立ってから、本当の練習が始まる。
YG:新しい曲とは?
MF:新作(『ARMOR OF LIGHT』)からの4曲(「Victory」「Angel’s Thunder, Devil’s Reign」「Heart Of A Lion」「Caught In The Witches Eye」)だよ。
NL:前回のツアーでやった曲もあるけど、2回ぐらいしかやらなかったんじゃない?
MF:ああ。あとは「Messiah」とか…。
NL:「Armor Of Light」だね。
MF:そう。だから、(『ARMOR OF LIGHT』から)6曲やっている。ヨーロッパ・ツアーは公演地があまり離れていないこともあって、2度、3度と足を運んでくれるファンもいて、それで弾く曲を毎晩変えていたんだ。
YG:「Messiah」と「Armor Of Light」は、前回来日時にやってくれましたね?
MF:そうそう。だから、今回はプレイしなかったんだ。
YG:過去曲は結構定番化してきていますが、これまでに現メンツでやったことがない曲に取り組む予定は?
MF:やりたいなとは思っているよ。
NL:そうだね。
MF:でも、なかなか難しくて…。いま俺達は、みんな“昼間の仕事”を抱えている。このバンドだけで生計を立てているワケじゃないからね。それに、みんな家庭を持ってもいるし、これが精一杯なんだ。
NL:前回ここ(日本)に来た時は『THUNDERSTEEL』(’88年)の完全再現だったから、「On Wings Of Eagles」「Run For Your Life」といった、ライヴで初めて弾く曲を練習するのに時間を取られていたし…。
NL:ライオットの曲って、「この曲をやろう」「よし、じゃあ1日くれ」なんて簡単にはいかない。ちゃんとコナせるようになるまでに、数週間は必要だ。日常生活で色んなことが起こるし、昼間の仕事もあるし、ツアーから戻ったと思ったら、またすぐ(次の)ツアーに出ることもよくある。だから、セットリストでちょくちょく揉めるんだよ(苦笑)。でも、(色々な曲が聴きたいという)ファンの気持ちはよく分かる。実際、俺達もみんなと同じように感じている…けど、ただ単純に、なかなか時間が取れないのさ。
NL:新作からの曲にも、まだまだ慣れないところがあるしね。
MF:出来ることなら昼間の仕事を辞めて、毎日リハーサルが出来たら…とは思うよ。でも、現実はそうはいかない。時には(ツアーで)赤字になることもあるからな…。
YG:ニックは、「やってみたい」と思っている古い曲はありますか?
NL:最近、「49er」(’79年『NARITA』)が弾きたいと思っているんだ。
YG:イイですね!!
NL:だよな!(笑) あと、前にやったことがあるけど、「Alter Of The King」(『FIRE DOWN UNDER』収録)もイイと思う。「On Wings Of Eagles」も大好きになった。それから──え〜と、ちくしょう…すぐには思い出せないな(苦笑)。
YG:ディメオ時代の曲はどうですか? 「Nightbreaker」(’93年『NIGHTBREAKER』収録)とか。
MF:ほうほう、なるほどね。
NL:(『NIGHTBREAKER』なら)「Soldier」もイイんじゃない?
MF:ああ。あと、「Destiny」もやりたいな。いや、実際に話し合ってもいたんだよ。「Nightbreaker」もね。
YG:「Nightbreaker」はトッドに凄くハマると思いますよ。
NL:イイね! やろうよ!!
MF:でも、「Nightbreaker」はクレイジーな曲だから…(苦笑)。『THE PRIVILEDGE OF POWER』(’90年)にもクレイジーな曲が沢山あるな。
YG:「Dance Of Death」とか?
MF:そう! 大変(な曲)なんだよ。
YG:そういえば、WOAのバックステージでマイクに会った際、「また9月に日本へ行くけど、何かリクエストある?」と訊かれたので、「Dance Of Death」と即答したら、横にいたトッドが「うひゃ〜」という表情をしていました(笑)。
MF:(笑) 確か、’07年のジャパン・ツアーでやったよな? マイク・ティレリがヴォーカルで。
YG:ええ。トニー(ムーア)との“8808 the THUNDERSTEEL Reunion”の時もやってくれました。
MF:ああ、そうだった。ともかく、マイク・ディメオ時代でやりたい曲は、俺にも沢山あるよ。でも、トッドはデトロイト、ドニー(ドン・ヴァン・スタヴァン)はテキサスに住んでいるから、なかなか集まれなくてさ…。ホント、昼間の仕事がなければイイのに。そしたら何でも出来るのになぁ。あと、今は新曲を書くことにも集中しないといけない。RIOT Vは新しいバンドだからね。勿論、これまでのキャリアのことは大切に思っているけど、昔のバンドのままではいたくないから…。
NL:僕は「Riot」もやりたいな。
MF:それもイイね! 『IMMORTAL SOUL』(’11年)の曲だな。但し、あの曲もトッドが大変なんだよ。ヴォーカル・パートが幾つもオーヴァーラップするからね。
YG:今日はアンコールでラウドネスの2人が飛び入りして一緒に「Warrior」をプレイしましたが、事前にリハをやったりしましたか?
MF:サウンド・チェックの時、少しだけね。あれは光栄な出来事だった。しかも俺はこの後、ラウドネスのステージに出るんだ。
YG:楽しみですね! それもリハ済みですか?
MF:うん。やっぱりサウンド・チェックの時にね。でも、もう1回おさらいしておかないと。アキラから「ギター・ソロを弾け」と言われていてさ。いや〜、アキラとラウドネスの曲をやるだけでも緊張するのに、ソロを弾けだなんてどうかしてるよ…!(笑) しかも、「Crazy Nights」(’85年『THUNDER IN THE EAST』収録)なんだ! 大ヒットしたあの曲を、日本で弾け…だって?! いや〜恐ろしい(苦笑)。
YG:(笑)
MF:だから…もう、自分流で弾くしかないと思っている。アキラは俺のヒーローなんだ。大学生の頃に聴きまくっていたアルバムは3枚。(クイーンズライクの)『OPERATION:MINDCRIME』(’88年)と、(アイアン・メイデンの)『PIECE OF MIND』(’82年)と、『THUNDER IN THE EAST』だよ。大学に通いながら、毎日ずっと聴いていた。だから、彼等とそのアルバムから一緒にプレイ出来るなんて、本当に光栄なことだね。何しろ彼等は、アメリカでも人気のあるバンドで、あのアルバムは俺に大きな影響を与えたんだから。子供の頃、エディー・ヴァン・ヘイレンやランディ・ローズを聴いていたけど、それでもアキラのプレイには、「コイツは一体、何者なんだ?」と驚かされた。
アキラとは’90年──俺が2度目に日本を訪れた時に、連れて行ってもらったバーのステージでジャムり、2人でギターを弾きまくったことがある。“ROCK FEST BARCELONA”でも一緒に弾いた。そして今、また彼と共演することが出来るなんてさ…!!
YG:ニックにとっては、ラウドネスや高崎 晃はどんな存在ですか?
NL:サウンド・チェックの時、横で弾くのを聴いていたけど…ビックリしたよ。凄まじい才能だ。正直言うと、彼等と共演するようになるまで、あまり詳しくは知らなかったんだけど、それ以来、マサヨシ(山下昌良)がくれた彼等のアルバムをずっと聴いている。
MF:ニックが子供の頃、(アメリカには)メタルのシーンなんてなかったからね。俺達は’80〜’90年代を生きていたから、ラウドネスを知っていて当然だけど、’00年代のアメリカは……。
NL:そうだね。マイケル・シェンカーもアキラも、存在は知っていたものの、その凄さは理解していなかった。ライオットでプレイするようになり、オールドスクール・メタルをしっかりと勉強していく中で、好きな音楽になったんだ。
MF:俺が(ライヴを)観に行くよう勧めたんだよ。マイケル・シェンカーはマーク・リアリのお気に入りだったし。
NL:マイケルとは、何度か一緒にショウが出来たよね?
MF:4〜5回あったかな?
NL:ラウドネスもそうだけど、とにかく「凄い!!」と思いっ放しだったよ。
MF:ああ。「何てこった…!!」って感じだったろ?(笑)
NL:絶対に見逃せない経験だったな。
MF:あと、マーク・リアリのヴィブラートの影響源はブライアン・メイだしね。
NL:ところが、今のシーンには存在感がズバ抜けているプレイヤーが少なくて…。
MF:やっぱり肝はメロディーだな。
NL:そう。(往年の大御所は)メロディーやフィーリングが、今の音楽とは違うよね。
MF:リッチー・ブラックモアとか…そうだよなぁ。
NL:オールドスクールというか、もう世界が違う。“Different School”だな(笑)。
YG:ニックはライオット加入前、今とはスタイルが違っていたのですか?
NL:う〜ん…そうかも。マイクという先生についていたから、最初からオールドスクール・メタル寄りではあったけどね。ただ、マイクからはイングヴェイ(マルムスティーン)のフレーズを教わったけど──実は、モダン・メタルやデス・メタルも好きなんだよね。
MF:パンテラが好きだったよな。
NL:パンテラの存在は大きいよ。あのフィーリングが好きだ。正直、フラッシーでテクニカルなモノよりも、曲やリフのように、簡単に耳に残るモノに惹かれる。ランディ・ローズやトニー・アイオミなどがフェイヴァリットだね。ガキの頃から、家ではジ・オールマン・ブラザーズ・バンドやスティーヴィー・レイ・ヴォーンなどが流れていたし。
MF:ジミ・ヘンドリックスもよく聴いていたよな。でも、リー家で最もよくかかるのは(AC/DCの)『BACK IN BLACK』(’80年)なんだろ?
NL:うん。親父が好きだったからね。あと、ブラック・サバスとか、モーターヘッドとか。
YG:ニックが10代の頃、きっと同級生はそういう音楽を聴いていませんでしたよね?
NL:ないない(笑)。俺も当初は、クソみたいなデス・メタルとかスラッシュ・メタルを片っ端から聴いていた時期があったし。
MF:ある時は、「スリップノットを観に行った」と言っていたな。
NL:スリップノットとかKORNみたいなニュー・メタルも聴いていたよ。常に“メタル”が好きだったからね。今も大ファンなんだ。グラインド・コアからドゥーム・メタル、スラッジからニュー・メタルまで、あらゆるモノを聴いている。
MF:ラップは?
NL:ラップも好きだよ。オールドスクールも聴くし、ウータン・クランも聴く。何でも好きなんだ。すべてのバンドに気に入る要素がある。出来る限りすべてを吸収したいね。ライオットでは、真のクラシックなギター・プレイをやっていきたい。
MF:(モニターでラウドネスのステージをチラ見しながら)俺の出番は何時だっけ?
NL:19時20分ぐらいに行けばイイんじゃない?
MF:なら、もう少し時間がある。でも、ますます恐ろしくなってきたよ(苦笑)。
YG:このあと、プライマル・フィアとツアーをするそうですが、シンガーのラルフ(シーパース)は、セリオンのアルバム(’99年『CROWNING OF ATLANTIS』)で「Crazy Night」を歌っていましたよ。
MF:そうなの? そしたら、彼とも一緒にやれるとイイな!
YG:では最後に、そのヨーロッパ・ツアー以降の予定を教えてください。
MF:(’19年)1月にまたクルーズ・フェスに出る。“70000 TONS OF METAL”だ。その後は南米に行くかもしれない。あと、初めてアメリカで本格的なツアーを行なう予定だ。これまでも3〜4回ショウをやることはあったものの、ちゃんとしたツアーをヘッドライナーで行なうことはなかったからね。まぁ、クラブを廻るんだけどさ。アメリカはヘヴィ・メタルにとって活動が難しい場所だから…。あとは──さっきも言ったけど、新曲を書いている。来年の早い段階でアルバムに仕上げられれば…と思っていて。だから、凄く忙しい。きっと今の俺達は、とても良い状況にあると思う。マークがこの状況を見ていてくれたらな…。日本のファンにも感謝したい。みんな、どうもありがとう…!!