Yukihide “YT” Takiyamaが2ndソロ発表「切り開かれていない土地を開拓した人たちが昔いて、その残像を追っている…」

Yukihide “YT” Takiyamaが2ndソロ発表「切り開かれていない土地を開拓した人たちが昔いて、その残像を追っている…」

“次の一歩はどうしよう、どう踏み出そう”みたいな、そういうことを考えてできた曲

YG:5曲目「Where My Head is」はインストで、ベースのリフから始まる雰囲気がもろに’80年代のロック・フュージョンだなと思いました。

YT:前作にもこういうタイプの曲を入れているんですけど、僕の中ではジェフ・ベックなんですよ。特にフレーズを考える時は念頭にありました。ただそんなベックっぽいものでも、ファズ成分強めで弾いてますし、やっぱり綺麗なフュージョンにはならないんですけどね。少し潰れたようになってしまうというか。

YG:このタイプの曲は例えば、コード進行だけ最初に決めて、とりあえずアドリブで弾いて出てきたもので曲を作る…みたいな感じですか?

YT:僕の場合はだいたいギターのリフから作ることが多くて、この曲も初めにベースのリフが出てきたんですよ。いや、ギターで作ったのをベースに置き換えたのかな? どっちだったか憶えていないですけど、その時にメロディーの初めのフレーズが既に頭の中にできていたんです。あとはそこからコード進行や、その後の展開もすんなりできた感じですね。

YG:この曲はどんな情景を思い浮かべて?

YT:もうタイトルのままで…すごく必死でいろんなことをやっている時に、考えすぎてぼーっとすることがあるじゃないですか。集中していると逆に一瞬、はっきり見えなくなる時があるみたいな。そういうイメージの曲です。

YG:YTさんが仕事でテンパってる時は、こういうテンポ感なんですね(笑)。

YT:いや、そういうわけじゃないんですけどね(笑)。頭を使いすぎて頭が動いていない、ちょっと疲れもある…みたいな感じですか。

YG:なるほど(笑)。そして6曲目「Go On」、これは冒頭のリフが、歪んだ「Sunshine Of Your Love」(クリーム)みたいな。

YT:確か一番初めに作った曲なんですよ、アルバムの中で。もともとワーキング・タイトルが「Next Giant Leap」だったんです。「次の一歩はどうしよう、どう踏み出そう」みたいな、そういうことを考えてできた曲ですね。

YG:面白いですね、それがアルバムのタイトルになったというのは。

YT:何かこう、満足していない状況でも、前にとにかく進んでいかないと、結局何もできない…ということってあるじゃないですか。そういう葛藤がありながら、とにかく自分には音楽しかやれることがないんだ!と。リフの感じとかも荒々しいところは、そんな葛藤している自分をそのまま出したんです。

YG:この曲がアルバム制作の一発目に出てきたというのは、方向性を決める上で良いスタートだったと言えそうですね。

YT:そうですね、この曲が出てきたからだいぶ固まったと思うんですよ。

YG:ギター・ソロは、少しアウトして、でもその後上手く戻ってちゃんと解決している感じが、ダーティだけど知的…みたいな相反するものを感じたんですが、これはアドリブですか? それとも作り込んだもの?

YT:両方ですね。初めはアドリブでバーっと弾いて、それを聴きながら「ここはこういう方向に行ったら面白いかな」というところで、フレーズを作っていって。で、レコーディング時にはフレーズをもう少しまとめた形にしました。

YG:非常にYTさんらしさが出ていると思いました。そしてヴォーカルがまた、新しい歌い方ですよね、日本語詞ですし。忌野清志郎さんや近藤房之助さんみたいにブルージーなニュアンスがあったり、稲葉浩志さんのような瞬間も感じられたりしたんですが。

YT:いやあ…光栄ですね。影響を受けたなんて口が裂けても言えないです(笑)。そんな方々みたいに歌えませんから。でも、もう必死に歌いました。すべての曲に当てはまるんですけど、綺麗に歌おうという意識はないんですよ。多少音程がずれていてもいいと思って。音程がきちんと取れていないとか、滑舌がしっかりしていないとか、そういうのもそのまま残すようにしたんです。

YG:でもブルースって、そういうところに味が出るものですし。

YT:ブルース系シンガーに影響を受けたように感じられたのは、多分僕がずっと聴いてきたから…というのもあるとは思うんですけど。

Yukihide “YT” Takiyama

YG:そして7曲目「Strangers on Mars」。これはもう、タイトル通りの情景を思い浮かべた曲ですか?

YT:そうですね。今、いわゆる“Next Giant Leap”…つまり「人類にとっての次の大きな一歩」だと言われていることって、火星の開拓ですよね。そういう分かりやすい意味で“Mars”という言葉を入れたんですけど、要は新しい場所に誰かが踏み出した時、その人はそこでは“Stranger”だと。日本語だと何て言うのがいいんですかね? いきなり来たよそ者、みたいなものかな。そういうイメージですね。

YG:頭のリフのところ、ものすごいファズの音ですよね。ダーティだけどギリギリ音程感がある、絶妙の線を狙っているというか。おそらくツマミの設定を、「ここじゃない、ここじゃない」みたいに延々探っている作業があったんだろうなと思ったんですが。

YT:ありました(笑)。こういうファズの音、大好きなんですよ。発振してプープー言ってしまっているような。

YG:だからといってZ.VEXの“Fuzz Factory”みたいにノイジーなところまで行くと、わけがわからなくなっちゃうし。

YT:そうなんです。“Fuzz Factory”も持ってはいるんですけど、今回は使いませんでした。どうしてもフレーズが見えなくなるので。あれはやっぱり飛び道具的なものというか。

YG:リードの音が少しブルースハープっぽいというか、別の楽器の音に聴こえたんですけど、これは特別な何かをしてるわけでもない?

YT:ファズの音ですね。デス・バイ・オーディオの“Fuzz War”ってあるじゃないですか。あれをボグナーのクリーン・チャンネルに通して、スライドで弾いてるんです。

YG:なるほど、それがたまたまブルースハープっぽく。

YT:アタックが弱くなりますからね。スライドはアルミでできたバーで、ちょっとトーンが普通のバーと違うのもあると思います。

YG:そして8曲目「Celebration of the New Sun」。ここまでと全然違う、アコースティック・ギターのみのソロ曲ですが、これは一発録りですか?

YT:そうですね。もちろんその一発の前にすごく練習しましたけど(笑)。全体の始まりか終わりを、すごく静かな曲にしたいという思いが漠然とあって、ガット・ギターを弾いていた時にこの曲がスッとできたんですよ。あんまり考えずに出てきた曲なんで、いけるかも…と。

YG:コンプレッサーが深めにかかっていて、右手左手のタッチが如実に出る感じが、この音作りで録るのは難しいだろうな…と思いました。

YT:生々しさが欲しかったんですよね。キュキュッっていう音とかが、全部入ってほしかったんですよ。歌モノでもそうですけどね、息を吸っている音とかもできるだけ入れたいと思って。

YG:曲のタイトルはどういう意味合いですか?

YT:その日が終わって、次にまた新しい日が始まるという…プラスにもマイナスにも取れますけど、僕の中ではポジティヴな捉え方なんです。1日をとりあえず全力でやって、満足いかなかったりすることもあるんですけど、終わったらまた次の日が始まるんだから、グダグダ考えてもしょうがないか…みたいな。

YG:今はわりと砕けた表現でしたが、それをこういうタイトルに落とし込むと、逆に大仰な感じですね(笑)。

YT:もうちょっとかっこよく説明できたらいいんですけど(笑)。

YG:いや、そのミスマッチはすごく面白いです。続いて、機材も教えていただけますか?

YT:アンプは基本、いつも使ってるボグナー“Ecstasy”の20周年モデル。ファズを使う時はあれのクリーン・チャンネルにつないでます。今回は歪みの深いチャンネルは使っていないかもしれない。ファズはさっき言ったデス・バイ・オーディオの“Fuzz War”を、ほぼ全曲で使ってるんじゃないかな。他にもファズはいくつか使っていて…フォックスロックスだったかな、名前は忘れちゃいましたけど、1オクターヴ上と下の音が出せるやつとか、あとエレクトロ・ハーモニックスの“Big Muff π”とか。ラムズヘッド期のやつですね。それに320 Designの“Strung Fuzz”も使いました。で、コンプはボグナーの“Harlow”というペダル。ギターは大半が1978年製の黒いギブソン・レスポール・カスタムです。今回の曲はほぼあのギターで弾いていると思います。

YG:YTさんの以前からの作風だと、アンプはプラグインを使ってもおかしくはないですが、やっぱり生アンプじゃないとダメですか?

YT:ダメというか、生アンプの音が単純に好きなんです。ただ、今回スピーカー・キャビネットのシミュレーターを使ったりはしました。トゥー・ノーツの“Torpedo”のプラグイン版の“Wall Of Sound”というヤツを。自分の持っているスピーカーのIRも入れてあるし、あと昔のセレッション・グリーンバックとか、その辺はいくつか試したのもあります。

YG:スピーカー・シミュレートの分野に関しては、ここ何年かで急激にクオリティが上がりましたもんね。

YT:すごいことになりましたよね。あれの良さって、でかいキャビネットのシミュレートもいいんですけど、小さなボロボロのキャビネットなんかもシミュレートされてたりするじゃないですか。そういう音が欲しい時にいいんですよね。「Strangers on Mars」のファズがプープー言ってる音とかは、もう本当に小さいスピーカーのシミュレートを通してあります。

YG:…といった具合で、聴きどころ満載のアルバムになりました。8曲入りですが、密度的にはもっとありそうな濃さですね。

YT:本当は15曲ぐらいできていたんです。

YG:じゃあすぐに次のアルバムを作れますね(笑)。

YT:どうでしょう?(笑) でも、次を出す頃にはまた考え方が変わってそうですし。

YG:確かに。ソロ・アルバムって別に、ネタがあるからとりあえず出しておこう…みたいなものではないですし。

YT:自分のその時の心境と合っていないと、しっくりこなくなっちゃいますからね。

YG:では最後に読者に、何かメッセージをいただけると。

YT:ちょっと壊れたものというコンセプトで作ったんですけど、メロディーは丁寧に作ったんで、楽しんでいただけると嬉しいです。あと来年予定しているソロ・ライヴの方も、ぜひよろしくお願いします。1月12日にあるんですけど、それは3ピースでやるつもりで…今回のアルバムのコンセプトそのままですね。シンク・トラックなんかも流さない、とにかくプリミティヴな、3人のミュージシャンが集まってバっとやるようなライヴにしようと思っています。アルバムを今回で合計2枚出させていただいたので、ようやく自分たちの曲だけでセットリストを組めますし。ベースは今作に参加してるGinで、ドラムはGLAYのバックなどで叩かれている永井利光さん。駄目元で頼んでみたら、たまたまスケジュールがその日は空いていたんですよ。絶対に楽しいライヴになると思います。

INFO

Next Giant Leap カバー画像

Next Giant Leap / Yukihide “YT” Takiyama

B ZONE | CDリリース:2024年9月25日

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収録曲
1. Echoes of the Last Runner
2. Bigger on the Inside
3. Afterburner
4. No One of a Kind
5. Where My Head is
6. Go On
7. Strangers on Mars
8. Celebration of the New Sun

YUKIHIDE “YT” TAKIYAMA EXCLUSIVE LIVE「NEXT GIANT LEAP」ライヴ情報

日程:2025年1月12日(日)
会場:池袋harevutai
開場 15:30 / 開演 16:00
詳細・お問い合わせ:ディスクガレージ

公式インフォメーション:
【YT】Yukihide “YT” Takiyama