ダークシュナイダー:より“本物”に近づいたアクセプト再現曲! 渋谷ストリームホール 2023.4.10

ダークシュナイダー:より“本物”に近づいたアクセプト再現曲! 渋谷ストリームホール 2023.4.10

ジャーマン・メタルを象徴するヴォーカリストにして、メタルを歌うために生まれてきた男:ウド・ダークシュナイダーが約7年ぶりに来日。東京のみで行なわれた2日間のショウは、ダークシュナイダー名義で古巣アクセプトの楽曲のみをプレイする初日、自身の活動における“本道”であるU.D.O.でのオールタイム・ベスト選曲の2日目という、それぞれ異なるメニューが設定されていた。両日ともにメンバーは変わらないが、実質的に2つのバンドを観られるわけだ。近年はウドを生で観る機会がなかなか得られなかった日本のファンにとってみれば、なんとも贅沢なプレゼントである。

まずは第1弾として、ダークシュナイダーのショウから見ていこう。

4月10日(初日)/DIRKSCHNEIDER

本家のアクセプトは別のシンガーを立てて活動しているが、こちらでは正真正銘オリジナル・シンガーの歌でアクセプトの曲が聴ける。その話題性もあって世界中のメタル・ファンを熱狂させてきたダークシュナイダー。会場は当然のごとく満杯の観客で溢れかえっていた。息つく間もないツイン・リードが光る「Starlight」に始まり、「Living For Tonite」「Midnight Mover」「Breaker」…言うまでもなくプレイされるのはメタル史に燦然と輝く名曲ばかりだ。

2016年にダークシュナイダー名義で来日した時からはラインナップに変更が生じている。ウド以下、その参謀役を10年にわたって務めているアンドレイ・スミルノフ(g)、ウドの息子であるスヴェン・ダークシュナイダーという面々は不動だが、現在ツイン・ギターの片翼は2018年加入のディー・ダマーズが担当。そしてベースはあのピーター・バルテス──2018年に本家アクセプトに別れを告げてファンを驚かせた彼は、2022年にティレン・フドラップが離脱したU.D.O.にサポート・メンバーとして加わっていたのである。既報の通り、日本公演後に正式メンバーとしての加入が発表されたピーターだが、この時点ではあくまで助っ人という立場。だが彼の存在はあまりに大きかった。序盤は音響にやや難があり、ベースがやたらと大きく聴こえる問題があったとは言え、それを差し引いても彼の弾丸サウンドは、かつてのアクセプトに感じられたグルーヴ感そのもの。前回来日時よりもバンド・サウンドが圧倒的に本家へ近づいていた最大の理由がこれだ。

ピーター&ウド
Peter Baltes (l.) & Udo Dirkschneider

もちろんピーターがいるからだけではない。7年前はやや優等生的だったスヴェンのドラムは重厚な迫力が増し、アンドレイのギター・プレイはウルフ・ホフマンの味わい深さを一層理解した上で完全に自家薬籠中の物としてしまっている。「Living For Tonite」のソロは元々ウルフではなくヨルグ・フィッシャーが弾いていたものだが、これに関してもオリジナルのラインを保ちながら、モダンな無骨さと華麗さを併せ持つアンドレイ流スタイルにしっかりアップデートしていたのは流石だ。

スヴェン・ダークシュナイダー
Sven Dirkschneider
アンドレイ・スミルノフ
Andrey Smirnoff

大方のソロはアンドレイが担当していたが、日本初見参となったディーも余裕の表情でステージを駆け回りながらタイトなバッキングを弾き、存在感ではまったく負けていない。「Screaming For A Love-Bite」などは彼がリードを執り、こちらはアンドレイと対照的に自己流フレーズに置き換えているパートが多かった。

ディー・ダマーズ
Dee Dammers

そして何より、ウドの歌唱が以前にも増して好調であることは記しておかなければならない。原曲よりもKeyを落としているとは言え、「Starlight」のように突き刺さるシャウトを繰り返す曲も余裕でこなしているのは驚きだ。来日直前に誕生日を迎え、御年71。ここに来てパワーアップするとは恐るべし。

ウド・ダークシュナイダー
Udo Dirkschneider

ウド・ダークシュナイダー

「Neon Nights」や「Princess Of The Dawn」、「Restless And Wild」などなど、どの曲でもオーディエンスは歌う、歌う、歌う。どの曲でどう盛り上がったといちいち解説する必要もないほど、バンドと観客が一体となって全速全開のテンションが常に持続されたままステージが進んでいく。「とてつもなく古い曲だ」というウドとピーターのトークで始まった「I’m A Rebel」を最後に本編は終了したが、これで本当に終わるわけもない。アンコールはまず「Metal Heart」。ベートーヴェンの「エリーゼのために」を導入するというクラシック好きなウルフ・ホフマンのためにあるような曲だが、「トッカータとフーガ」のメロディーでファンを煽るという発展的アイデアで“アンドレイの持ち曲”にしてしまっていたのが見事だ。

残る2曲はアンドレイとディーのツイン・リードが華麗に決まる「Fast As A Shark」、そしてディーとウドのブルージーな掛け合いに続いて歴史的名リフが切り込んでくる「Balls To The Wall」。文句なしの演目だ。無理やりいちゃもんを付けるならば、前回来日時に比べて時間が短く、曲数がかなり減っていたことぐらいか。

ウドの喉が絶好調であることに加え、ピーターを含むバック陣は“本物”のパフォーマンスを見せてくれる。もう乱暴に言ってしまうと──これはもう名前が違うだけで、アクセプトそのものと考えて構わないのではないか。

DIRKSCHNEIDER @SHIBUYA STREAM HALL 2023.4.10 セットリスト

1. Starlight
2. Living For Tonite
3. Midnight Mover
4. Breaker
5. London Leatherboys
6. Neon Nights
7. Princess Of The Dawn
8. Restless And Wild
9. Midnight Highway
10. Screaming For A Love-Bite
11. Up To The Limit
12. I’m A Rebel
[encore]
13. Metal Heart
14. Fast As A Shark
15. Balls To The Wall