去る4月中旬、久々に来日公演を行ない、新旧ファンを歓喜させたウド・ダークシュナイダー率いるU.D.O.。東京2日間のみの限定公演ながら、ウドの古巣:アクセプトの楽曲のみをプレイするダークシュナイダー名義のショウもあり、集まったオーディエンスは日替わりでアクセプト&U.D.O.による独産メタルの神髄を堪能しまくったことだろう。
注目すべきは、ウド(vo)以下、アンドレイ・スミルノフ(g)、ディー・ダマーズ(g)、スヴェン・ダークシュナイダー(dr)に加え、’18年にアクセプトから電撃脱退してファンを驚かせたピーター・バルテス(b)が、そのラインナップに含まれていたこと。しかもピーターは、離日後ほどなくU.D.O.に正式加入! その報には世界中のアクセプト&U.D.O.ファンが色めき立ったに違いない。
今回ヤング・ギター取材班は、ダークシュナイダー名義のショウを終え、U.D.O.としてプレイした公演2日目のサウンド・チェック後に、アンドレイ&ディーのギター・チームとピーターへの対面インタビューの機会を得た。まずは──’12年加入と、ウドを除けば現ラインナップで最も在籍期間の長いアンドレイ・スミルノフ&’18年加入のディー・ダマーズへのインタビューからお届けしよう。ステージでも抜群のコンビネーションを見せてくれた2人の、バンド&メンバーに対する熱き思い、そして、微笑ましい仲の好さにも注目して頂きたい…!!
メンバー同士つながってさえいれば、俺達はもっと強くなれる
YG:昨日(4月10日)のダークシュナイダーとしての初日公演はいかがでしたか?
ディー・ダマーズ(以下DD):最高だったよ! 日本へ来られて本当に嬉しい。僕にとっては初めての訪問だしね。実は今朝、早めに起きて色んなところを見て廻ったんだ。街の様子が知りたくて、出来るだけ沢山のところへ行ったよ。ポケモン・ショップにも行って、山ほどカードを買った(笑)。まるで子供の頃に戻ったみたいだったな! あと2週間ぐらいいられたらイイのに…。もっと行きたいところがあるんだけど、全然足りない!!
YG:日本のことは、他のメンバーから事前に何か教えてもらっていたのですか?
DD:いや…、みんな(観光目的ではなく)ライヴをやりに来ているだけだから。でも、「日本の観客は素晴らしい」ということだけは聞いていた。そういえば、ジェイデッド・ハートのベーシストのミュリ(ミヒャエル・ミュラー)と友達なんだけど、彼は「俺も連れて行ってくれ! また日本へ行きたいんだ!!」と言ってたな(笑)。とにかく、みんな「日本へ行くのは最高!」と思っているみたいだね。僕も「確かにそうだ!」と実感したよ。
YG:アンドレイは’16年のダークシュナイダー来日以来ですね?
アンドレイ・スミルノフ(以下AS):久々にステージに立ってみて、日本の観客は絶妙なバランス感覚を持っている…と感じたよ。クレイジーになり過ぎず、かといって静か過ぎることもなく、かなり高めの位置で、とにかくずっと楽しそうにしているんだ。極端なアップ&ダウンがない。俺はそういうのが好きだね。ステージにいて、とても満たされた気持ちになる。だって、オーディエンスも常にクレイジーでいられるワケじゃないだろ? (盛り上がりの)波があって当然だよ。でも日本では、(高めの位置を手で示して)これぐらいの盛り上がりがキープされるんだ。
YG:今回はピーター(・バルテス)と一緒ですが、彼は去年からヘルプ・メンバーを務めているようですね?
DD:うん。去年9月のヨーロッパ(・ツアー)からだ。初めてピーターと一緒にプレイしたのは、(’22年9月9日の)ベルリン公演だったかな? その後、色々なところを一緒に廻り、フィンランドを除く北欧各国にも行って、さらに(10月に)中南米ツアーもやり、(11月には)東欧方面や南欧でもプレイした。それで一旦は終了となったんだけど、今年に入って、またオーストラリアで再会したんだ。
AS:そう、3週間ぐらい前にね。
YG:レジェンドとも言えるピーターと、アクセプトの楽曲を一緒にプレイしていかがでしたか?
AS:何故か、昔からずっと一緒にやってきたかのような感じがしたんだ。まぁ、彼は元々このバンドのことをよく知っているし、俺達のやり方を熟知してもいて、そもそもが経験豊富なプレイヤーだからな。この業界で長年プレイしてきたから、メンバー同士の接し方なんて慣れたもんだし、誰とでも上手く接することが出来るスキルの持ち主で、すぐ新しい環境に馴染む方法も知っている。それに、(アクセプトのレパートリーは)自分が関わった曲だしね。だから、初めて一緒にやったショウで、すぐに「よし、これなら上手くいく」「大丈夫だ!」と感じたよ。「一体どんな人なんだろう…」なんてことは全くなく、リハーサルを2時間ぐらい一緒にやって、あとは共にビール・ジョッキを掲げればもう万事OKさ!(笑)
DD:そうそう(笑)。ショウもやり易かったけど、人間的に接し易い人だからね。
AS:個人レベルでの付き合いの方が(演者同士としてよりも)ずっと重要なんだよ。勿論、「どれぐらい上手いんだ?」なんて話にはならない。だって、このバンドでプレイしているのなら、上手いに決まってるんだからさ! 「これは弾ける?」「この曲はどう?」とか、そんなことは誰も訊いてこないよ。弾けて当然だし。その点、最初から彼は人間としてとても気さくだったな。
DD:ステージで一緒に過ごすのは2時間だけだけど、それ以外の時間も、1日中ずっと一緒だからね。演奏は2時間だけで、あとの22時間を一緒に笑って過ごして──だから、個人的な付き合いの方が重要なのは間違いない。勿論、演奏面でもフィットしたけど、人として一緒にいて楽しい…という今の状況は最高だよね。
AS:(ディーを見て)コイツはどうかと思うけど(笑)。
DD:おい、取材中だぞ!(笑)
AS:いつもうんざりさせられるんだ…。この取材が終わったら、もう顔も見たくない。
DD:うるせぇ! 俺もだよ!!
AS:ハイハイ(笑)。
DD:いやぁ〜、一日中こんな調子なんだ(笑)。
AS:今日も朝から一緒に街中を歩き回ったよ。ポケモンを何匹捕獲したか数えきれないぐらいだ!(笑)
DD:ステージ上でもコミュニケーションは欠かせない。誰かに向かって変顔してみたり…とかね!(笑)
AS:思うに──バンドって、ひとつのマシーンなんだよ。言うまでもなく、それぞれ個人的には色々な事情を抱えてはいる。例えば、子供が学校で問題を起こしたとか、奥さんの調子が良くないとか、そうした家庭内の問題もあるだろうし。ステージ上で演奏している時にも、ふとそうしたことを考えてしまう瞬間があるんだ。でも、誰かがそうして困った様子でいると、そいつを助けたいと思うだろ? 「今日は誰だい? 誰が悩んでいるのかな?」「よし、手助けが必要だな」…とね。それで、(肘を小突く仕草をしながら)「おい! 頑張ろうぜ!!」と言ってやる。そいつを独りぼっちにさせないことが大切なんだ。そうすることでチーム全体が押し上げられる。
DD:ああ、分かるよ。
AS:心の健全さを保つ…といったことさ。それがどれだけ大切なことなのか──感覚的なことで、なかなか説明し辛いんだけど、まずはバンド内におけるつながりをしっかり保っておく必要がある。ステージ上では、丸裸にされているも同然だからな。何もかもすべてを観客に差し出すような感覚すらある。でも、すべてにおいてメンバー同士つながってさえいれば、俺達はもっと強くなれるんだ。そうすることで、観客もハッピーになれると思っているよ。
DD:面白いよね。
AS:具合が悪かったり、熱を出すことだってある。そういう時、「大丈夫、やれるよ」「一緒に頑張ろう!」と言い合える関係だとイイな。あと、リーダーが「今日もやってやろうぜ!」なんてハッパを掛けたりとか。フットボールの試合みたいにさ。
DD:長い間、ずっと一緒に過ごしてきたから、「俺、大丈夫だから!」と口では言っていても、1%欠けているところが見えたりするんだよ。だから、お互い言葉を掛け合い、気分を高められるようにしている。
AS:ああ。それって凄く重要だよな。
YG:ディーはU.D.O.に加入して、もう5年になりますが、初めてのステージを憶えていますか?
DD:うん。そりゃもう、緊張したよ。それどころか、未だにそういうことってあるんだ。すべてが上手くいっている時に限って、アドレナリンが出過ぎて、頭が真っ白になったり…とかね。確か、ロシアのサンクトペテルブルクでの公演だったな。初めてこのバンドでプレイしたのは。
AS:当時、前のベーシスト(ティレン・フドラップ)も一緒に加入したんだっけ? それぞれにとっての初ライヴだったけど、俺達としては、最初っから助けてあげるワケにいかない。言ってみれば、泳ぎ方を覚えてもらうような場面だったからね。それでも2人は、(そうした状況に)飛び込んでいかないといけなくてさ。でも、俺達が「さて、どんな風にやってくれるかな?」と様子見していたら、見事にやり遂げてくれたよ。
DD:ただ、たっぷりリハーサルをやったし、プリ・プロダクションの時間もあった…にもかかわらず、いざステージに上がってみたら、全くの別モノだと思えて…。
AS:初ライヴってそういうモノだよね。いくら準備しても充分じゃない…というか。
YG:前のベースのティレンは、体調不良によりツアー途中で離脱してしまったようですが、そこから脱退にまで到ってしまった理由というと?
DD:あまり詳しいことは、俺達から話さない方がイイかもしれない。彼の決断だったし…。
AS:そう、最終的には彼自身で決めたんだ。当然、俺達も彼の決断を尊重したよ。