U.D.O.が日本のファンに向けて新旧楽曲を披露! 渋谷ストリームホール 2023.4.11

U.D.O.が日本のファンに向けて新旧楽曲を披露! 渋谷ストリームホール 2023.4.11

ジャーマン・メタルを象徴するヴォーカリストにして、メタルを歌うために生まれてきた男:ウド・ダークシュナイダーが約7年ぶりに来日。ダークシュナイダー名義で古巣アクセプトの楽曲のみをプレイする初日公演のレポートに続いて、自身の活動における“本道”であるU.D.O.でのオールタイム・ベスト選曲が披露された2日目のレポートをお届けしよう。

4月11日(2日目)/U.D.O.

この2日目、いきなり厳しい話になってしまうが、満員御礼の前日に比べて集客にかなりの差があった。やはり初日はアクセプト楽曲限定というバリューが大きく働いたのだろうか。何故アクセプトと違ってU.D.O.の来日がなかなか実現しなかったのか、その現実を突きつけられてしまった気もする。が、コアなファンにとってはこの2日目こそが正念場と言っても過言ではない。U.D.O.が過去に来日したのは2004年6月の一度のみ。ウド以外のメンバーが現在と全く違う19年前のことだった。しかもその時は同年発表の『THUNDERBALL』からの選曲とアクセプト楽曲が大半を占めるセットリストで、 日本で人気の高かった初期U.D.O.楽曲はごくわずか。つまり日本のオーディエンスは35年超の歴史があるU.D.O.の曲をほとんど生で聴いていないのだ。言ってみれば初日のダークシュナイダーはお約束的な選曲で、サプライズはなかった。それに対して日本初披露の曲が多いと予測される2日目の方が、何が出てくるか分からないというお楽しみに満ちていたと言える。

ウド・ダークシュナイダー
Udo Dirkschneider

1曲目からして必殺の「Animal House」。普段のライヴならクライマックスに位置する曲をいきなりぶつけてきたことで、日本のファンのために特別なセットを組んでくれたことがまず分かる。前回来日時もそうだったように、ライヴでは長らくシングル・ギター・ソロにアレンジされていたのだが、アンドレイが加入した2013年以降はスタジオ版に近いツイン・ギターの掛け合いに戻されている。ようやく日本のステージでも本来の形で生演奏されたわけだ。

ディー、ウド、アンドレイ
Dee Dammers (l.), Udo & Andrey Smirnoff

アンドレイ・スミルノフ

1987年発表のデビュー曲に続いたのが、最新作『GAME OVER』(2021年)に収録されていた現在のU.D.O.らしいミステリアスな「Holy Invaders」だったという流れも面白い。この曲でソロを弾いたのは、作曲時にアイデアの要となったディー。この日は前日と打って変わって彼がリードを担当する場面が多く、初期のスピード・チューン「Go Back To Hell」でも、1997年の再結成時の狼煙となった思い出深い「Independence Day」でも、ディーのトリッキーなテクニックが強烈なインパクトを残した。前日のショウを観た時点でアンドレイとディーのコンビネーションが鉄壁であることはよく分かったが、伝統的な技術をモダンに洗練させた前者、クラシックなHR/HMに影響されつつ現代的なシュレッドを土台にした後者という組み合わせの妙が、U.D.O.楽曲ではよりはっきりしてくる。

ディー・ダマーズ

怪しいコーラスで盛り上げる「Wrong Side Of Midnight」、最新作のAC/DC的な「Kids And Guns」といったシングル曲が並んだ後、スヴェンのアグレッシヴなドラムのイントロが始まった。これはまさか…の期待に応えて鳴り響いたリフは、U.D.O. 屈指の技巧チューン「Timebomb」。この時のオーディエンスの爆発ぶりは凄まじかった。スタジオ版よりもメロディックに整えられた激烈なプレイをアンドレイとディーが見事に決めたことで、会場のテンションも一気に上昇。バンド初期に在籍した巧手マティアス・ディートがいなければ当時の曲を再現できないと考えているオールド・ファンも少なくないようだが、そんなものは失礼な先入観に過ぎないと証明してくれた見事な演奏だった。

スヴェン・ダークシュナイダー
Sven Dirkschneider

U.D.O. バンド ステージ側

インダストリアル的要素の導入を追求していた時期の「The Bogeyman」を挟んで、本編最後はタイトル通りのメタル賛歌「Metal Never Dies」でひとまず幕を閉じた。さらに1回目のアンコールでは「Holy」「Man And Machine」「One Heart One Soul」などなどU.D.O.ならではのアンセミックな曲が続き、重々しく気高いコーラス・パートは自然と大合唱を誘発した。

U.D.O.楽曲のパートはここまで。1曲も選ばれていないアルバムもいくつかあったが、1987年の結成から一時解散までのマティアス・ディートが在籍した高性能メタル期、’90年代末の再結成~’00年代の実験期、アンドレイが加入して以降の正統派メタル復活期と、ほぼ全時代をフォローしたオールタイム・ベストの看板に偽り無しのセットリストだ。

ウド&アンドレイ

ピーター・バルテス
Peter Baltes

アクセプト楽曲を5曲プレイすることが事前にアナウンスされていたため、2度目のアンコールは“おまけのアクセプト編”となることは予想できたが、実際のところは「Metal Heart」「Balls To The Wall」という’80年代名盤のタイトル曲2つのみに終わった。ただ、ここまでの充実ぶりに「アクセプトはいいからもっとU.D.O.を聴かせてくれ」と思っていたファンも多いに違いないし、2曲でもう十分だとも思えた。もっとも、このメタルのアイコン的な名曲2連弾に文句を言う者などいるわけもなく、会場全体を揺るがすかの大合唱と共に大団円を迎えたのは言うまでもないが。

本物のメタルを2日間、しかも全く異なる選曲で全身に浴びることができた今回の来日。そもそもダークシュナイダーという別働隊は「U.D.O.のライヴで毎回アクセプトの曲をやらなければいけないプレッシャーから解放され、U.D.O.はU.D.O.の曲のみでライヴを行ないたい」という問題を解消するためにスタートしている。このプロジェクトが別個に存在するおかげで、今回のようにアクセプト/U.D.O.の曲を分けて(2曲の例外はあったが)均等に楽しむ機会を得られることになったし、’70年代ハード・ロックから受け継いだエッセンスを硬質化させたアクセプト、より自由なアプローチを様々な形で試しながら進化するU.D.O.と、ウドが関わってきた2バンドの違いを明確に味わうこともできた。ちなみに同一地域でダークシュナイダーとU.D.O.が立て続けにライヴを行なった例は日本国外でもかなり稀。これは日本のファンも誇っていいのではないだろうか。

彼らが日本を去った直後、ピーターの正式加入がアナウンスされている。相性の良い2人の凄腕ギタリストとパワフル・ドラマーだけでなく、“本物”のベースがいよいよ参加。ウドはまさに歴代最強のラインナップを手に入れたのである。彼らのさらなる快進撃がいよいよ始まりそうだ。

U.D.O. バンド全景

U.D.O. 終演 挨拶

U.D.O. @SHIBUYA STREAM HALL 2023.4.11 セットリスト

1. Animal House
2. Holy Invaders
3. Go Back To Hell
4. Never Cross My Way
5. Independence Day
6. Wrong Side Of Midnight
7. Kids And Guns
8. Time Bomb
9. The Bogeyman
10. Metal Never Dies
[encore 1]
11. Holy
12. Man And Machine
13. One Heart One Soul
[encore 2]
14. Metal Heart
15. Balls To The Wall