NWOBHMの申し子:ナイト・デーモン来日レポート! 2023.4.27@立川BABEL、2023.4.28@新宿Zirco Tokyo

NWOBHMの申し子:ナイト・デーモン来日レポート! 2023.4.27@立川BABEL、2023.4.28@新宿Zirco Tokyo

2011年の米カリフォルニアに、突如として産み落とされたNWOBHMの申し子:ナイト・デーモン。翌2012年のデビュー以来、筋金入りのオールドスクール精神を大開放してきたこの稀有なるトリオが、先ごろ初来日を果たした。今回、4月27日に立川、翌28日には新宿と、東京にて2公演を行なったのだが、実直なるその熱きメタル魂が、ライヴ・ステージにおいても見事に輝きを放っていたことを、まずは最初に報告しておきたい。

ナイト・デーモン

来日メンバーは、首魁ジャーヴィス・レザビー(b, vo)、2016年加入のアルマンド・ジョン・アンソニー(g)に加えて、新顔のブライアン・ウィルソン(dr)という3名。どうやら、2015年加入で今年春リリースの最新作『OUTSIDER』でも叩いていたダスティン・スクワイアーズは、いつの間にか脱退していたようだ。米フロリダにて、HELLWITCH、MIDNIGHT SPELL、FAETHOMなど幾つものバンドを掛け持ちし、あのイングヴェイ・マルムスティーンのバック・メンバーも務めているというブライアンは、来日の時点ではまだ準メンバーといった立場だった模様。だが、日本での安定したパフォーマンスが認められ、他の2人とも馬が合ったのか、その後5月下旬に“正式メンバーに決定!”とのアナウンスが出されている。

ジャーヴィス
Jarvis Leatherby

ブライアン・ウィルソン
Brian Wilson(dr)

2公演の演目はそれぞれ異なり、初日はベスト・セレクション、翌日はコンセプト・アルバム『OUTSIDER』全曲再現+αとなっていた。ただ、これまでにEP1枚とフル・アルバムが3枚、さらにカヴァー含むシングルを山のように発表している彼等としては、初の日本公演というのもあり、セットリストを組むのが大変だったとのこと。結果的にわりと新旧バランス好く選曲され、2日間でファンが望む代表曲、人気曲はほぼ網羅されていたと言えよう。

演奏面では、トリオでもここまで出来るのか…と、何度も感心させられまくり。両日ともイントロなど最低限のSE音源使用はあったものの、基本3人だけで全曲を演奏し、ヴォーカル・ハーモニーもしっかりコナしつつ、アルマンドはディレイやワウ、ハーモナイザーなどを駆使し、クリーン・トーンやアルペジオも絶妙に配して、文字通りライヴ感に富んだ有機的バンド・サウンドを創出。バックがベースだけになるソロ・パートでも、アルマンドのエモーショナルかつ歌心のあるプレイがオーディエンスの関心を強く惹き、音の薄さはあまり感じさせない。いや、「ここはギター2本あれば…」と思わされる瞬間もなくはなかったが、ところどころ敢えてトリオらしい隙間を活かし、装飾過多にしないことがむしろ功を奏していたようにも思う。

アルマンド・ジョン・アンソニー
Armand John Anthony

注目の『OUTSIDER』再現は、MCや曲紹介を一切やらず、終始ダーク・ホラーな世界観を保ったまま、最後まで一気に観せ/魅せ&聴かせたのが大正解! そもそも全編で35分もない、往年のアナログ・レコードを思わせるような尺のアルバムなので、もったいぶって引き延ばしたり、数曲毎にMCを入れてブツ切れにするよりも、全編ブッ続けの方がずっと効果的だ。しかも、“再現”のラスト「The Wrath」の静かなエンディングから、間髪を入れずセカンド『DARKNESS REMAINS』(2017年)冒頭曲「Welcome To The Night」のイントロにつなげるという展開がこれまた見事で、観客はひと息つくヒマもなく、ショウ後半も疾走曲が次々繰り出され、「ヘドバンが止められない…!」と、嬉しい悲鳴を上げ続けるしかなかった。

一方、初日公演では中盤にシン・リジィのカヴァー「The Sun Goes Down」(1983年『THUNDER AND LIGHTNING』収録)が飛び出し、この曲は『OUTSIDER』の日本盤ボーナス・トラックだからして、それこそ日本のファンのための最高のセレクトに。また新宿公演では、『DARKNESS REMAINS』からの「Maiden Hell」がアンコール1曲目で──これは、この日オープニング・アクトを務めたエンド・オールのシンガー:田中“さとつ”諭のリクエストだったそう。何でも、彼がジャーヴィスに「やって欲しいな〜」と言ったら、「よし、やってやるからお前も歌うんだ」となり、急遽飛び入りしてのダブル・ヴォーカルで披露されたのだ。そして、両日とも本編のハイライトとしてプレイされた「The Chalice」で、聖杯を手にした死神のようなキャラクター:ロッキーが登場し、大いにフロアを盛り上げていたことも特筆しておきたい。まるでアイアン・メイデンのエディのようなバンド・マスコットを擁するところも、何ともオールドスクール・メタルしていて最高ではないか!

アルマンド、さとつ
Satotsu(END ALL/右)

ナイト・デーモン ロッキー
ロッキー

デビュー当初、ガムシャラな疾駆感と渾身のリフ一発勝負でNWOBHMの息吹を21世紀に甦らせ注目を浴びたナイト・デーモンだが、コンセプト・アルバムの『OUTSIDER』ではより深みのある楽曲を交え、スロー&ムーディな曲想でもファンの心をガッチリ掴んでみせた。しかもその懐の深さを、今回のライヴでも遺憾なく発揮してくれたのだから、今後のさらなる進化に期待が高まる。個人的には、アルマンドのトニー・アイオミ&ブラック・サバスからの影響が、次作以降にどう反映されていくのかが楽しみでならない…!!

ナイト・デーモン 終演

ナイト・デーモン@立川BABEL、2023.4.27 セットリスト

1. Prelude
2. Outsider
3. Screams In The Night
4. Full Speed Ahead
5. Hallowed Ground
6. The Sun Goes Down(THIN LIZZY)
7. Curse Of The Damned
8. Mastermind
9. Ritual
10. Beyond The Grave
11. The Wrath
12. Heavy Metal Heat
13. Flight Of The Manticore
14. The Chalice
15. Darkness Remains

[Encore]
16. Night Demon

ナイト・デーモン@新宿Zirco、2023.4.28 セットリスト

1. Prelude
2. Outsider
3. Obsidian
4. Beyond The Grave
5. Rebirth
6. Escape From Beyond
7. A Wake
8. The Wrath
9. Welcome To The Night
10. Screams In The Night
11. Black Widow
12. Are You Out There
13. The Howling Man
14. Dawn Rider
15. The Chalice

[Encore]
16. Maiden Hell
17. Night Demon