“ドンシャリ”ってどんな音?
’80年代のL.A.メタル関連の記事を読んでいるとドンシャリ・サウンドというのがよくあるんですが、具体的にどんなサウンドなんでしょうか? また、ドンシャリ・サウンドの典型的なアルバムがあれば教えて下さい。
(NSF100/10代/男性)
低域と高域が強調されたギター・サウンドのことです
ありますね〜、ドンシャリ・サウンド!! 意味的には、低音域(Low)と高音域が強調されたギター・サウンドのことです。言い換えると中音域が控えめになっている、ということですね。極端な例ですが、アンプのイコライザーで言えばTrebleとLowの音量を10まで上げ、Middleを0に近づけたような設定です。グラフィック・イコライザーでいうと、各帯域のスライダーをU字型にしたような感じですね(写真)。低域が“ドン”、高域が”シャリシャリ“…という言葉の表現が、そのままサウンドを表す用語として定着したようです。
なぜこのようなサウンドが流行り出したのかについては諸説ありますが、’80年代に入って急激に進化したシンセサイザーを用いたバンド・サウンドの中においては、バッキングをドンシャリに設定するとアンサンブル上溶け込みやすいと言われていました。また、そのバックの上で弾くギター・ソロは、より際立って聴こえるようにもなります。一過性の話ではなく、今現在もバンド全体のサウンドを考慮した上でドンシャリ・サウンドを好んで使用するギタリストは多いですよ。
典型的なアルバムといえばやはり、’80年代を席巻したバンドの作品でしょうか。ラットやシンデレラ、ドッケンあたりが当時リリースしていたアルバムが良さそうです。特に’80年代当時のロック・サウンドやギタリストのトーンは、個々の違いはあるものの広い意味でみんなドンシャリでした。個人的に印象深いのは、TOTOのスティーヴ・ルカサーでしょうか? ’80年代中期、ジェフ・ベックやサンタナと同じステージに立ってセッション・ライヴを行なったことがありましたが、その時の彼のサウンドはまさに“ドンシャリ”もいいとこでした。ただ残念ながら、ベックやサンタナの太く抜けてくるサウンドとの対比が激しく、若干聴き取りづらくなってしまうことも…。バンド・アンサンブルにおいては音作りの1つとして有効な手法ですが、ギター・バトルみたいなシチュエーションでは逆効果だったりするところが難しいですね。話がそれましたが…(笑)。
他にはメタリカの「Battery」(’86年『MASTER OF PUPPETS』収録)など、初期作品のバッキングは典型的なドンシャリですね。彼らに代表されるように、’80〜’90年代のスラッシュ・メタル・シーンでは、攻撃的なサウンドを求めてドンシャリな音作りを主体にするバンドが目立ちます。また、パンテラのダイムバッグ・ダレルは、アンプに真空管ではなくソリッドステートを用いたランドール製のモデルを使用したことでドンシャリの極みを確立し、’90年代半ばのメタル・シーンを席巻したことでも有名です。
今回はメタル系に偏った解説でしたが…それぞれのギタリストが個性を追求しながら辿り着いたドンシャリ・サウンド、是非あなたも研究してみて下さい!