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ドイル 『DOYLE II: AS WE DIE』2017来日インタビュー

インタビュー●上田慎也 Shinya Ueda Pic: Kanon Madness

俺のピッキング・ハーモニクスのやり方は間違っている

Doyle 2017 2

YG:’14年の来日時にインタビューさせていただいた時、前作の『ABOMINATOR』(’13年)について「レコーディングには2年もかかって、結果的に25曲録った。『ABOMINATOR』とは別にもう1枚アルバムがある」とおっしゃっていましたが、新作の『DOYLE II:AS WE DIE』はその“もう1枚のアルバム”ということでしょうか?
D:ああ、『ABOMINATOR』を作った時に、このアルバムのすべての曲が揃っていたよ。ドラムとヴォーカル以外は、すべて同じレコーディング・セッションで録られたものだ。

YG:例えば、ミスフィッツでプレイしたことでインスパイアされ、新たに曲を書き下ろした…というようなことはありませんでしたか?
D:ミスフィッツでプレイしたところで、俺には何ら影響はないよ。

YG:『DOYLE II〜』は『ABOMINATOR』と同時期にレコーディングされたとのことですが、あのアルバムとは雰囲気が違うという印象を受けました。今回の『DOYLE II〜』の方が収録曲にヴァリエーションがあるというか、曲調が多彩だと感じたのですが…、ご自身ではどう思われますか?
D:ああ、俺もそんな気がするよ。でも、それもたまたまだよ。すべての曲が揃ったところで、まずは『ABOMINATOR』用に「1曲目はこれで、次に何を持って来たら合うかな?」という風に考えながら収録する曲を決めていった。そして『DOYLE II〜』にはそれ以外の曲が入っていて、かなり昔に書かれた曲も入っているんだ。

YG:なるほど。ちなみに、あなたは普段どのようにして曲作りをしているのですか? 日頃から曲を書いて、ギター・リフを書き溜めたりしているのでしょうか?
D:ああ、その通りだ。ギターを弾くたびに何か曲を作ろうと試みているよ。頭に浮かんだものは、とにかく早いうちに外に出さなきゃいけない。忘れてしまうからね。と言っても、忘れてしまうのは右手のリズムなんだよ。頭に浮かんだものをいざギターで弾こうとすると、音は確かに合っているんだけど「おかしいな、こうじゃないぞ…!」って、ノリが全然違ってしまっていることがある。それは右手の動きが分からなくなってるからなんだ。だから、そうやって出来たものは携帯電話に録音しておいて、どの音をどう弾いたのか声に出して残しておく。ただギターの音を録音しておくだけだと後からどうやって弾いたのか分からなくなるから、言葉で「どこどこをどうやって弾いた」ってね(笑)。

YG:それを後で聴いて、まとめて曲にしていく…という感じですか?
D:いや、「Abominator」(『ABOMINATOR』収録)や「Kiss Me As We Die」(『DOYLE II〜』収録)なんかは1曲まるごと、そのままアイデアが浮かんだ。忘れないうちに記録に残そうと焦ったよ(苦笑)。もちろん、1つリフが書けたら、以前に録音しておいたものからそれに合いそうなパーツを探してきて、「よし、これと一緒に繋げてみるか」ということもあるね。

YG:では『DOYLE II〜』の内容について。まず1曲目の「Kiss Me As We Die」には、アーチ・エネミーのアリッサがコーラスで、マイケルがギター・ソロでゲスト参加していますね。ドイルから彼らに参加を要請したのですか?
D:ギター・ソロについては、最初は俺が自分で弾こうと思っていたんだよ。あのセクションでは「どこか別の方向に向かいたいな…」と思っていて、マイケルのプレイにインスパイアされたソロを入れてみようと考えたんだ。アーチ・エネミーのライヴを観て、マイケルは凄く腕の良いギタリストだと思っていたし、「俺もあんな風に弾けたらいいなあ」なんて思っていたからね。それで彼のように弾こうと思ったんだけど、やっているうちに「何だ、チクショウ!」…って、俺に彼のようなプレイができるわけがないんだよ(苦笑)。すると偶然にも、マイケルからメールが送られてきた。「俺のために、1曲ソロ・パートを空けておいてくれよ!」だって。喜んでOKしたよ。だって、マイケルが弾けば当然“マイケル・アモットらしいソロ”になるだろ!(笑) でも俺から「頼むから、凄〜くゆっくり弾いてくれ。それから12fより上には行かないでくれ。ライヴでは俺が弾かなきゃいけないから、難しいものにはしないでくれ!」とお願いしたよ。

YG:なるほど(笑)。そして実際にでき上がってきたものを聴いて、どう思いましたか?
D:もちろん気に入ったよ! その後、マイケルとはアーチ・エネミーのライヴ会場で何度も会っているんだけど、彼は練習やウォーム・アップで忙しくしているから、彼にソロを弾いて見せてもらうのは気が引けてね…。それで、このアルバムのミックスを担当したニックに「お前、このソロがどんな風になってるか、ちょっとコピーしてくれないか?」と頼んだんだ。そして俺がトイレに行って戻ってきたら、「できたよ!」っていうから、「えっ、もう!?」って(笑)。そしてニックが弾いているところを撮影しておいた。俺はその映像を自宅に持ち帰り、ちゃんと弾けるようになるまで100回は練習したよ!(笑) 指が痛くて死にそうだったけど、その甲斐あって弾けるようになった。まぁマイケルみたいに上手くはないけどね。でも、俺にしてはよくやってるよ。

YG:アリッサについては?
D:俺はアリッサにも歌ってもらいたいと思っていたんだけど、その時、彼女はどこかのスタジオでディレインかどこかのバンドのゲスト・ヴォーカルのレコーディング中でね。でも俺がスタジオで作業をしていた時に彼女から電話がかかってきて、「今からそっちに行って、歌うから」って。「えっ、だってまだ曲も聴いてないのに…」って言ったんだけど、彼女は「大丈夫!」と言って、こっちのスタジオに来てくれた。それでまず曲を聴いてもらい、彼女が「どんな風に歌えばいい?」と聞くから、「天使のようでいて、不気味な感じで…」と伝えたら、彼女はCDで聴けるあの感じで歌ってみせてくれたんだ。「まさにそれだよ! それを求めていたんだ!」ということで、あのコーラスを歌ってもらったんだ。

YG:なるほど。この「Kiss Me As We Die」を始め、例によってアルバムの至るところでピッキング・ハーモニクスが鳴りまくっていますね。ピッキング・ハーモニクスで“個性”を感じさせるというのは、HR/HMシーンではザック・ワイルドかドイルか…というほどあなたのトレードマークになっていますよね。
D:おいおい、俺をザック・ワイルドなんかと一緒の枠に入れないでくれよ。俺のことを買いかぶり過ぎている(笑)。ザックは本物だが、俺は間違ったやり方をしているんだから。正しいやり方を、誰も教えてくれなかったからな。ライヴで一緒になったヤツにやり方を見せてもらうと、みんな俺とは違っていた。「じゃあ、どうやってるの?」と訊かれて俺が自分のやり方を見せると、みんなが「ええっ? 何それ!?」と驚くんだよ。

YG:どうやっているんですか? 
D:本来はピッキングと同時に親指で弦に触れるんだろ?

YG:ええ。
D:でも俺は中指を使うんだ。親指じゃなくて、ピッキングと同時に中指で弦に触れるんだよ。このやり方を今ダンジグでギターを弾いているトミー・ヴィクター(プロング)に見せたら、目を丸くしていたよ(笑)。彼もピッキング・ハーモニクスをよく使ってて、ダンジグの曲をプレイする時にもあれを山ほど入れてる。彼に「何であんなに毎回ちゃんとハーモニクス音が出せるんだ? 俺はしょっちゅうミスってるよ」と言うと、トミーは実演して見せてくれた。で、俺が「へえ。俺のやり方は違うんだ」ってやって見せたら…(笑)。そもそも間違えて覚えたということもあるけど、ステージでプレイする時に俺は親指にテーピングをしているから、一般的なやり方ができないんだよ。

YG:その独特の鳴らし方も含めて、個性的なドイル・スタイルになっているというわけですね。
D:俺はパーム・ミュートのやり方だって知らなかったよ。ある時、家で寝っ転がったままギターを弾いていて…俺はショウの時以外、立って弾くことはない。寝転がって弾くんだ。

YG:!!(笑)
D:で、その日も寝っ転がってギターを弾いていると、たまたま手が弦に触れて、ミュートしてる状態になった。俺は立ち上がって、「何だ!? 今の音は何だ!? 俺は何をやったんだ!?」と思ったね。しばらくして、右手が弦に軽く触れていたからだという理由が分かって、「凄い!」と興奮したよ。ある日、スクウィール・サウンド(編註:恐らくナチュラル・ハーモニクスのこと)を見つけた時も同じだったな。

YG:以前のインタビューでもおっしゃっていましたが、ギターのテクニックに関しては偶発的に学んだことが多いんですね(笑)。
D:ああ、そうだ。“アクシデント”ばっかりだ!(笑)