昨年4月、フル・アルバム『IMMORTALIS』でデビューしたsukekiyoが、去る2月4日にミニ・アルバム『VITIUM』を発表した。前作が持っていた耽美的で、ある種宗教的な世界観は継承しつつも、ハードなバンド・サウンドがより前面に出た仕上がりになっている。そのサウンドの要であり、京が絶対の信頼を置く匠(ギタリスト/ピアニスト/マニピュレーター)に、楽曲制作の経緯やアンサンブルの方法、大物ゲスト参加の内幕などについて詳しく語ってもらった。
曲自体に“余白”を持たせたかった
YG:今作『VITIUM』を制作するに当たって、前もって考えていた世界観やテーマなどを教えてください。
匠:前作は他のメンバーが加入した時期の関係もあって、概ねの土台を京さんと僕の2人だけで作ったので、みんなで『IMMORTALIS』とはまた違うものを作ろうということをイメージしていました。
YG:9曲入りのミニ・アルバムにした理由は何かありますか?
匠:当初は現在のsukekiyoの姿を切り取って見せるようなシングルを出したいと考えていたのですが、バンドの空気感が多彩になっていたので、1曲には絞れなかったんです。だからミニ・アルバムという形が丁度良い具合だと思いました。全9曲というボリューム感のある構成は、曲の流れなどを考えて作っていたらたまたまそうなりました。実はプリプロまで進めていた曲の数は、倍以上あったんですよ(苦笑)。
YG:曲作りに関しては前回のインタビューで、“2人で出したアイデアを他のメンバーに投げる”というやり方、“ゲリラ的に全メンバーで曲出ししてその場で仕上げる”というやり方を挙げていました。今回はどうでしたか?
匠:今回は、わりとメンバーそれぞれで均等に作っていましたね。今のバンドの空気的にもそういう感じでした。このバンドは他のバンドと全く違うやり方でもいいと思っていましたけど、今回のようなやり方はある意味バンド然としていて、それはそれでいいなとも思いました(苦笑)。イニシアチブの取り方も柔軟にしてみました。そういう意味で、次作への展望が見えて来たことは良かったですね。
YG:もう1人のギタリストのUTAさんに関して、前回のインタビューでは“僕にないものをすべて持っている”“アレンジではお互い寄り添わずに対極なアプローチをする”と言っていましたね。今作でも同じようなスタンスで楽曲を彩りましたか?
匠:そうですね、でも今回は曲自体に“余白”を持たせたかったので、前作ほどUTAさんに細かく和音を指定したりとかはやっていません。今回はライヴに関しても、原曲を再現することばかりに捕われないでやっています。
YG:匠さんの音楽の土壌には、フォーク、クラシック、メタル、映画音楽などがあるそうですが、今作で新たに楽曲へとフィードバックした作品は何かありましたか?
匠:例えば「focus」の前半は、ある程度の形にした後でバックの雰囲気を大幅に変えてみようということになって、最終的には僕が最後に提示したアレンジと音像になりました。ライヴでは映像とも相まって、結果的に個人的趣味が強く出ていると思います(笑)。他では「雨上がりの優詩」、これは僕が原曲を作ったもので、他のメンバーに対して和音を細かく指定する場面も多かったんです。だからそういうところは、前作と通じる西洋楽典カチカチの雰囲気があるかと思います(苦笑)。ただ前作よりは抑えられていると思いますけど。今回は他のメンバーのグルーヴに身を委ねている割合が多いので、曲によってはギター・ソロだけに心血を燃やして、それ以外はいい意味で他パートに自然に寄り添う感じのアプローチも多かったです。
YG:初回生産限定盤の特典ディスクで、リンプ・ビズキットのウェス・ボーランド(g)やX JAPANのTosh
iさん、俳優の三上博史さん、元ナイン・インチ・ネイルズのレンホルダーという豪華な顔ぶれとコラボレーションしていることも特筆点ですね。
匠:これは京さんがかねてからやりたかったことで、尊敬している方に対してのsukekiyoならではの積極的化学反応、クリエイティヴィティから来ています。僕に関して言えば、自分が音楽に人生を捧げるきっかけになり、今でもずっと好きなX JAPANのToshlさんの声が曲に入ったのを聴いた時は……夢のようでした!!!!