紫の比嘉清正とChrisに聞く、『TIMELESS』の制作と最新ライヴへの意気込み

紫の比嘉清正とChrisに聞く、『TIMELESS』の制作と最新ライヴへの意気込み

今年──2023年は、7月にフジロックフェスティバル前夜祭出演、8月にはChar、BOWWOW(BOWWOW G2)との共演イベント“再現 1977”開催、そしてニュー・アルバム『TIMELESS』発表と、まさにベテランの底力を見せつけてくれた、オキナワン・ハード・ロックの雄:紫。アルバム・デビューから47年(!)、メンバーの殆どが70歳超(!!)という、言わば高齢バンドでありながらも、その意気は未だもって驚くぐらいに軒昂だ。

来年夏には、キャリア半世紀以上にして初のヨーロッパ遠征──スウェーデンのメタル・フェス“Time To Rock Festival”への出演が決まっている彼等は、活況の2023年の締め括りとして、来たる12月17日(日)に東京は恵比寿のザ・ガーデンホールにて、“TIMELESS──混迷の時代を超えろ”と題したライヴを予定している。そこで本誌は、’70年代からツイン・ギターの一翼を担ってきた比嘉清正に取材をオファー。“再現 1977”や『TIMELESS』について、また、恵比寿でのライヴや“Time To Rock Festival”についても、大いに語ってもらった!

尚、今回のインタビューでは、紫のベーシストで他のメンバーとは親子以上の歳の差ながら、コンポーザー/プロデューサーとしてバンドを牽引するChrisにも同席してもらい、清正氏と共に話を訊かせてもらっている。

何回か弾いてみて、徐々にフレーズを固めていきますよ

YG:まずは、この夏に日比谷野音で行なわれた“再現 1977”について。Char、BOWWOW G2とのあのカップリング・ライヴを振り返ってみて、いかがでしたでしょうか?

比嘉清正:いやぁ、楽しかったですよ、非常に。恭司やCharと一緒にプレイ出来て、楽しいライヴでしたね。お客さんも盛り上がってくれたし。ただ、花火(マグネシウムの演出)とか使っててね。あれにはちょっとビックリしたんだけど(笑)。

YG:アンコールでの火花炸裂ですね! 事前に知らされていなかったのでしょうか…?

清正:いや、聞いてはいましたよ。でも、どこで“バ~ン!”とくるか分からなかったもんだから。

再現1977

YG:Charさんや恭司さんとは、アンコールでジャムも行ないましたね?

清正:アンコール1曲目の「Double Dealing Woman」は、アルバム『TIMELESS』でも2人に手伝ってもらっていたので、今回のライヴも含めて2人の個性がそれぞれ出ていたと思いますよ。

YG:ディープ・パープルの「Black Night」カヴァーでソロ回しをやっている時、清正さんが控えめに弾いていたら、Charさんが横へきて、「もっと前で…!」とステージの前へと促したじゃないですか? あの場面にはほっこりさせられました。

清正:実はあの前にも、沖縄の紫のライヴにゲストで入ってもらったことがあったんだけど──打ち上げの時に、Charから「ホントに動かないよね~」って言われたんですよ。「足元を見ていても、1cmぐらいしか動いてなかったよ」って(笑)。その時に、「あれ以上動いたら、曲を忘れてしまうからイヤだよ」と言ってあったのにね!

YG:(笑)。

比嘉清正

清正:自分は島(沖縄)でお店をやってるんですけど──もう20年ぐらい前からね──彼は毎回遊びに来てくれるんですよ。沖縄に来たら、必ず呑みに来てくれる。

YG:その際は、お店でセッションなんかも?

清正:自分はやったことがないんだけど、ある時はCharのバンドのポール・ジャクソン(b)とか、小島(良喜/key)クンとかが、かなり弾きまくってましたね。Charにも「ちょっと弾いてよ」と言ったら、その時は4ビートの曲をやってて、「これはちょっと俺には合わないな」と言うから、「じゃあ、これが終わってからやろう」ということになったんだけど、そのジャムでみんなステージから降りてきてしまって、結局その時はセッション出来ずで…。

YG:“再現 1977”には、残念ながらGGさん(下地行男/g)が不参加で、代役にゾディアックの(照喜名)薫さんが起用されていましたね?

清正:下地はフジロックフェスティバルのあと、コロナに罹ってしまって、それで出られなくなったんですよ。今はもう元気なんだけど、かなりの重症だったからまだ完全な状態ではないかな。

YG:薫さんに連絡をしたのは…?

清正:ライヴ本番の1週間ぐらい前かな?

YG:では、あまりリハをする時間もなかった…?

清正:一応、2回ぐらいはやれました。でも、自分もChibi(紫のドラマー:宮永英一)のゾディアックを手伝っていたことがあって、薫とは一緒にライヴをやったこともあったんでね。

YG:ゾディアックでも紫の曲をプレイしていたので、薫さん的には余裕だったのでは?

清正:いや、「Maze」ではちょっとビクビクしてたみたいですよ(笑)。まぁでも、彼とはよく一緒に呑む仲だし、自分は彼のプレイが大好きだから。実は薫もお店をやっていて、遊びに行くといつも朝までコースなんです(笑)。こないだも8時まで呑んでて…。

YG:朝の8時ですか!?

清正:うん。まだまだ元気ですよ(笑)。

YG:野音では初期の曲だけでセットリストを組んでいましたが、あれは1977年の再現ということで…?

清正:うん、そうですね。その代わりに、今度の恵比寿のライヴでは新曲もやるつもりです。

YG:新作『TIMELESS』収録曲ですね! ちなみに、前回のインタビューの時、清正さんもGGさんも、新作に「自分の曲を入れたい」とおっしゃっていましたが、結果的に、ジョージ(紫/key)さんとChrisさんの曲だけになっていましたね?

清正:当初は入れるつもりだったんだよね。

Chris:曲の断片だとか…ネタ自体は、確かに預かってはいたんですよ。でも、スケジュール的に間に合わせることが出来なくて。下地さんの「井戸」という曲も、わりと前から楽曲としてはもうあって、メンバー全員でもうちょっとブラッシュ・アップしたいな…とは思っていて、今回は収録を見送りました。実は、僕自身にもまだストックはあるんで、多分また何らかの形で清正さんと下地さんの曲もリリースすることが出来ると思います。

Chris

YG:すぐ次のアルバムに取り掛かることが可能…?

Chris:使わなかった曲は結構あるので、それを何らかの形でまとめたら可能ですよ。まぁ、ちょっとリーダー(ジョージ)に相談してみます(笑)。

YG:是非ぜひ! Chrisさんとジョージさんの曲ですが、清正さんとGGさんに渡す際、ギター・パートはどの程度仕上がっているのでしょうか?

Chris:いつも、ラフの2ミックスを渡すんですよ。ギター・リフが先に固まっている場合は、そのままギターの音を乗せてますし、ギター・ソロをガイド的に入れたりすることもあります。ただ、実際のレコーディングに際しては完全に“お任せ”でやってますね。

清正:うん。レコーダーを使って、仮録音しながら自分の音を聴いて元のアイデアを膨らましていく…という感じです。

Chris:僕としては、楽曲を作っている時に大体のイメージがもう出来ていて、「ここは清正さん」「ここは下地さん」という風に、ある程度決めてから渡してます。

YG:ギター・ソロの振り分けも?

Chris:ほぼほぼ僕が決めてます。例えば新作だと「Raise Your Voice」の中間部のソロは、重めのグルーヴで…と思った瞬間、もう「清正さんに」となりましたし。全楽曲そうなんですけど、もうアレンジの段階で「このグルーヴは下地さんだな」「ここは清正さんだな」とキメ打ちで作るんですよ。

YG:清正さんは、ソロをレコーディングする前に練り込むタイプですか? それとも、イッパツ勝負の時もありますか?

清正:イッパツ勝負ということはあんまりないなぁ。何回か弾いてみて、徐々にフレーズを固めていきますよ。「Raise Your Voice」なんかは、かなり仕込んでおいたし。でも、「Free Your Soul And Let It Be」はその時のノリで弾きましたね。

Chris:そう、ワン・テイクかツー・テイクだったと思う。

’70年代当時は、1日4ステージも5ステージもコナしてた

YG:では、『TIMELESS』のレコーディングで使ったギターを教えてください。

清正:殆どEVHだったかな。あと「Raise Your Voice」はシャーベルで、リテイク(「Starship Rock’N’Rollers」と「Double Dealing Woman」の2023年ヴァージョン)はレスポールを弾きました。その3本だけですね。

YG:アンプとエフェクターは?

清正:アンプはケンパーですね。アンプ・タイプはエングルを使って、ライン信号とキャビネットの2通りで録ってます。エフェクターは、ワウとかは試したんだけど結局は使わずで。

Chris:あと掛けでディレイとかはあるけど、今回エフェクト・ペダルは使ってなかったよね?

清正:うん、基本的に直録りだった。

YG:『TIMELESS』収録曲の中で、特にヤング・ギター読者に注目して欲しい曲というと?

清正:やっぱり「Raise Your Voice」かな。

Chris:僕から言わせてもらうと、「Don’t Look Back!」も…です! イントロのソロを清正さんが弾いてるんですけど、僕のイメージと清正さんの解釈がちょっと違って、レコーディングが難航しまして…。

清正:Keyの解釈が違ったんだよね。だから全体的な曲想というか、そこに合わせてソロを作り込んでいきました。

Chris:でも結果的に、それが良かった…っていうか、おどろおどろしくてダークなソロになり、逆にカッコよくなりました。これって普通にアレンジしたら出てこない旋律だろうな…と。その旋律感とかフレージングに注目して聴いて欲しいですね。ジョージさんも最初に聴いた時、「めっちゃカッコイイね!」って言ってました。僕と清正さんの苦労したやり取りを、ジョージさんは知らないんですけどね(苦笑)。だから、リスナーもきっとそう感じてくれるんじゃないかな。

YG:GGさんのソロで注目すべきなのは?

Chris:「Raise Your Voice」アウトロ後半のソロですね。最初、デモから本チャンのレコーディングに差し替えるか…という話になったんですけど、デモのテイクのままで「イイんじゃない?」と。なので、最初の勢いを残してます。GGさんはストラトキャスターを弾いたんで、清正さんとはある意味で対照的な音になっていて、フレージング云々よりもまず、音そのものにそれぞれのキャラクターの違いというか、そこに個性が出ているので、それを活かすようにした…というのもありますね。

YG:12月の恵比寿でのライヴですが、どんな演目になりそうですか?

清正:まだ固まってないんですよ。

YG:『TIMELESS』からは勿論のこと、『PURPLESSENCE』(2010年)と『QUASAR』(2016年)からの曲もプレイされますよね?

清正:ハイ、やりますよ。どっちのアルバムの曲も好きだけど、ライヴ会場限定のEP『EYES WIDE OPEN』(2013年)も気に入ってて、自分はもう全曲好きですね。

紫 - Eyes Wide Open
『EYES WIDE OPEN』紫

YG:では、そのEPからも…?

Chris:一応、候補曲はあります。僕としては、『PURPLESSENCE』に入っている「Into The Sun」の清正さんのソロがカッコイイと思ってて。

清正:今のメンバーになって最初にレコーディングした曲だよね?

Chris:そう、最初の曲。

清正:だから結構、力を入れて弾いた記憶がありますね。

YG:しかし、どのバンドもそうですけど、ライヴのセットリストを考えるのって大変ですよね…。

清正:2時間ぐらいのライヴは考えているんだけど…。

YG:ファンとしては、3時間でも4時間でもやって欲しいところでしょう(笑)。

Chris:先輩方の体力が持てばイイな…(苦笑)。

清正:ステージに上がる前はヨタヨタしてるけど(笑)、いざ上がればもう大丈夫。だって、楽しいから──弾いててね。でも、覚え直さないといけない曲も、思い出さないといけない曲もあるから…。ちょっとやらないだけで忘れるもんな(笑)。

Chris:’70年代には毎日演奏してたから、今の頻度だとどうしても…ね。

清正:’70年代当時は、1日4ステージも5ステージもコナしてたんですよ。45分やって15分休憩して…の繰り返し。それを毎日やってた。

YG:では、最初の2枚のアルバム(いずれも1976年リリースの『MURASAKI』『iMPACT』)の曲は、もう寝ていても弾けますね?

清正:いやいや、もう殆ど忘れてますよ(笑)。

Chris:そんなことないでしょ~(笑)。いつも、「Double Dealing Woman」とか「Doomsday」とか、定番の曲はリハーサルすらやりませんから。もうみんな、体に染み付いている…というか。それこそ、寝ながらでも弾けるかもしれない。

比嘉清正

YG:恵比寿のライヴでは、どのギターを弾く予定ですか?

清正:シャーベルとEVHかな。2本で充分じゃない? 東京まで持っていくのは。レスポールはちょっと重いから…今回は止めておこう(笑)。

YG:山本恭司さんのゲスト出演が発表されてますが、今回も「Double Dealing Woman」やカヴァー曲を一緒に…?

清正:まだ確定ではないけど、カヴァーも交えて何かやろう…という話にはなってます。

YG:楽しみにしています! そして来年には、スウェーデンのフェス出演が決まりましたね!

清正:“Time To Rock Festival”ですね。主宰者から直で連絡がきたんですよ。スウェーデンって当時、紫のレコードが販売されてたみたいで。ファーストとセカンドのミックスみたいなヤツだったと思うけど──それがスウェーデン盤で(※1978年リリースの『STARSHIP』)。何か、西ドイツでも出てたのかな? だから、あっちにも結構ファンもいたみたい。

紫 - STARSHIP
『STARSHIP』スウェーデン盤

Chris:それで、たまたまジョージさんがオンラインでやり取りしているスウェーデン人がいて、その方が“Time To Rock Festival”の主宰者に「日本の紫ってバンド、まだ現役でやってるんだよ」って話したら、「えっ…俺、大ファンなんだけど!」ということで、連絡をくれたそうです。

YG:’70年代当時は、海外からライヴのオファーはなかったんでしょうか?

清正:ドイツの方からそういう話がきてる…というのは、自分は聞いたことがありますよ。

Chris:僕がジョージさんから聞いたのは、実際にそういう「海外でライヴをやって欲しい」というオファーはあったらしいんだけど、その時は既にバンドが解散してしまっていた…と。

清正:そうそうそう。だから、ちょっとタイミングが悪かった。その前に話があったら、きっとバンドが解散することはなかっただろうね。

YG:来年、スウェーデンでプレイするに当たっては、どんな思いを…?

清正:いやぁ、楽しみではありますよ。向こうはロックやメタルのメッカというか…ね。イングヴェイ(マルムスティーン)なんかも出てきたワケだから。とにかく、早く行ってみたいですよ。

YG:では最後に、12月17日の恵比寿ザ・ガーデンホールでのライヴに向けて、ファンにひと言お願いします!

清正:音楽というのは、幾つになっても出来るんじゃないかな…っていうのがあって──自分も今、「トシだからもう止めようか」とか一切ないし、どんどん沸きあがってくるモノがあるんです。歳を取れば取るほど、「まだまだやるぞ!」と思えてくるんだよね。そういう気持ちは非常に高まってきてるな。

それに、若い人達と一緒にやってみると、自分らも勉強になるし、やっぱりやってて楽しいよ。みんなそれぞれ違うでしょ? 顔が違うように、音も違う。だから、自分なりの音を出すしかない。それで、若い頃に見えなかったモノが見えてくる…というのもあるし。自分の人生は、ずっとコレ(バンド)ばっかりやってきたよね──16~17歳ぐらいから。でも、まぁ元気だよ。ふつふつと燃えるモノがあって。

YG:まさに“The Fire Is Burnin’”ですね!

清正:うん。やる気が詰まってるから。エキサイトしてますよ。前は1cmしか動かなかったのが、今度は多分…50cmぐらいは動くんじゃないかな?(笑)

Chris:それを観に来て欲しいね! 動く清正を…!!(笑)

YG:50cmと言わず、5mでも50mでもステージ上を走り回ってもらって…!

清正:そんなことしたら、速攻で倒れてしまう!(苦笑) でも、非常に楽しみですよ!!

紫
▲(l.to r.)比嘉清正(g)、宮永“Chibi”英一(dr,vo)、ジョージ紫(key)、
下地“GG”行男(g)、Chris(b)、JJ(vo)

ライヴ“L’ULTIMO BACIO Anno 23 20th Anniversary
MURASAKI CONCERT TOUR:TIMELESS — 混迷の時代を超えろ” 概要

日程:2023年12月17日(日)
会場:恵比寿ザ・ガーデンホール
開場 16:00 / 開演 17:00

ゲスト:山本恭司(BOWWOW G2)

チケット料金(税込):
プレミアムシート:15,000円(税込、2ドリンク/1タパス付き)
指定席:9,000円(税込、ドリンク代別途)

詳細・お問い合わせ:
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最新作情報

紫 - TIMELESS

TIMELESS / 紫

CD|zicca records | 2023年発表

アルバム詳細

アーティスト公式インフォメーション:
MURASAKI OFFICIAL WEBSITE