VOX“MVX150”シリーズが切り拓く未来のギター・サウンド

VOX“MVX150”シリーズが切り拓く未来のギター・サウンド

多彩な音作りが可能なコントロール

先述の通りヘッドとコンボの両タイプが用意されている“MVX150”シリーズだが、いずれも機能や性能は共通している。ここではその詳細を解説しよう。

まずはフロント・パネルから。ピュア・クリーンから超ハイ・ゲインまで幅広いサウンドを網羅した2チャンネル仕様で、それぞれゲインの異なる2つずつのモードを切り替えることが可能。またいずれのチャンネルにも多彩なミニ・スイッチを搭載しており、EQではカヴァーし切れない周波数まで微調整することができる。マスター・セクションには自然な余韻を加えることができるリヴァーブと、超高域用のPRESENCE、重低音用のRESONANCEも装備。またフットスイッチで音量を素早く切り替えることが可能な2つのマスター・ヴォリュームも搭載していることも、大きな強みだ。

MVX150H フロント・パネル

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MVX150C1 トップ・パネル

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チャンネル1

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左端のミニ・スイッチを用いてCH1とCH2を選ぶことができ、もしくは付属のフット・スイッチで切り替えることもできる。

CH1はCLEAN/CRUNCHの2モード。まずCLEANはGAINツマミをフルにしてもほぼ歪まないクリーン専用モードで、サステインの長さと広いレンジ感を特徴としており、とりわけ高域の倍音の透明感が抜群。一方CRUNCHはクラシック・ロック系に最適な歯切れ良い歪みを生み出すモードだ。

中高域から上をアップさせるBRIGHTスイッチ、中低域を持ち上げるFATスイッチも搭載されており、共に上品な効き方で使いやすい。

チャンネル2

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CH2はRYTHM/LEADの2モード。RHYTHMモードでもメタル系に充分なハイ・ゲイン設計だが、LEADに切り替えた時の密度の濃さ、低域のパワー・アップの仕方は特筆ものだ。

こちらのチャンネルにもBRIGHTスイッチとFATスイッチが搭載されており、効き方はCH1と同様。さらに追加で、中域の周波数を変化させるMID SHIFTスイッチも搭載されており、ヘヴィ系の音作りで重宝するだろう。

マスター・セクション

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マスター・セクションにはマスター・ヴォリュームが2つ搭載されており、フットスイッチを用いて音量設定を素早く切り替えることが可能。特にライヴ・ステージでは嬉しい機能だ。また超高域用のPRESENCE、重低音用のRESONANCEを搭載しており、多彩な音作りに貢献。極めて高音質なデジタル・リヴァーブも備え、特にクリーン系には常にかけっ放しにしておきたくなるほどだ。

画期的機能の詰まったリア・パネル(クリック/タップで拡大)

リア・パネルの機能の多彩さにも触れておこう。まず特筆しておきたいのは、“Nutube”のバイアス電圧をチャンネル別に調整できる機能が備わっていることで、これはアンプのサウンド・キャラクターを根本的に変えてしまうほどの威力を持つ。ギタリストが自由にここをいじることができるチューブ・アンプは他に類を見ず、実に画期的だ。

さらにパラレルとシリーズの切り替えが可能なエフェクト・ループ、リヴァーブ音とループに接続したエフェクト音のみを再生するWET ONLY出力端子、スピーカー・キャビネットにマイキングした音を擬似的にライン出力するEMULATED LINE OUT端子、音圧や歪み感を保ったまま6段階で音量を調整することができるパワー・レベル・コントロールなども装備。小さな筐体ながらその機能は実に多彩だ。

コンボ・タイプの“MVX150C1”にもスピーカー・キャビネット“BC112-150”にも、セレッション製の“Redback”スピーカーを搭載している。12インチ×1で150Wにも対応するハイ・パワー設計だ。

電源とECOスイッチ(クリック/タップで拡大)

電源とECOスイッチ

電源スイッチは長押しすることでオン/オフする特殊なスイッチを採用している。

ECOスイッチはその名の通り、消費電力をカットしてくれる非常に嬉しい機能だ。ここでは前ページの製品写真で見ることができる青いLEDをオン/オフすることができ、例えば演出の都合でステージ上を真っ暗にしたい時などにも便利。また30分間プレイしない状態が続くと自動的に電源が切れる、オート・パワー・オフ機能を選択することもできる。

SPEAKER OUTPUTS

こちらはスピーカー・アウトプットのセクション。異なっているのはスピーカー出力端子のみで、“MVX150H”には2つ、“MVX150C1”には1つ搭載されている。

その他の機能はすべて共通。珍しいのはWET ONLY OUTPUT端子を装備していることで、ここに外部スピーカー・キャビネットを接続すると、リヴァーブ音とループに接続したエフェクト音のみが再生される。この時、通常のスピーカーからはドライ音のみが出力されるので、つまり別途ミキサーなどを用意する必要なく、プロと同じようなサウンド・システムを構築することができるわけだ。また音圧や歪み感を保ったまま6段階で音量を調整することができる、パワー・レベル・コントロールも搭載。

EMULATED LINE OUTとFOOT SWITCH端子(クリック/タップで拡大)

EMULATED LINE OUTとFOOT SWITCH端子

スピーカーにマイキングしたサウンドをエミュレートし、ライン信号で出力することができるEMULATED LINE OUT端子を搭載。レコーディングやライヴなど様々な場面で重宝する。ちなみに一般的なヘッドの場合、ライン出力できる機種でもスピーカー・キャビネットを接続しておかなければパワーアンプに負担をかけて故障の原因となってしまうが、“MVX150”シリーズの場合はその必要もない(驚くべきことに説明書には「注意! スピーカーを接続しなくてもアンプは故障しません」と明記されている)。気軽に使える画期的な設計だ。

FOOT SWITCH端子は2系統。左側に接続すればチャンネルと2つのマスター・ヴォリュームを、右側に接続すればエフェクト・ループとリヴァーブのオン/オフ用を、それぞれフットスイッチを用いて切り替えることができる。

EFFECT LOOPとNutube BIAS(クリック/タップで拡大)

EFFECT LOOPとNutube BIAS

シリーズ(直列)とパラレル(並列)の切り替えができるエフェクト・ループを搭載。

Nutube BIASは先述の通り、各チャンネルのプリアンプのバイアス電圧を調整する機能だ。ツマミをVINTAGE側にすると電圧が低くなり、あたかもヴィンテージ・ギター・アンプのような不安定さのあるサウンドが得られる。MODERN側に回すと電圧が高くなり、ゲインが増加しつつよりスムーズなサウンドが得られる。アンプの改造と同等のサウンド変化を手軽に実現できるわけだ。