モダンからヴィンテージまで、幅広い表現力
MVX50H
映像もご覧になっていただいたかとは思うが、ここからはより詳細な試奏レポートを掲載させていただこう。まずはヘッド・タイプの“MVX150H”と、12インチ・スピーカーを1発搭載したスピーカー・キャビネット“BC112-150”との組み合わせから。
CH 1のCLEANモードのサウンドは、すさまじいサステインの長さに驚かされる。温かみがありながら輪郭のクッキリしたアタック音の後、いったん自然に減衰を始めるが、そこからグッと粘って弦振動の最後までを前面で聴かせてくれる感じだ。またレンジが極めて広く、太い低音、真空管の熱が入った素晴らしい倍音が、サステインの間ずっと存在感をアピール。中低域に盛り上がりがあり、FATスイッチでその周辺をさらに押し出すことができ、例えばシングルコイルのブリッジ・ポジションでも極太に聴かせることができる。GAINを上げるとほぼ歪まないまま、粘りと圧力が高まる感じだ。
CH 1のCRUNCHモードは、クラシック・ロック系のリードに対応できるほどしっかり歪む。レスポンスが極めてダイナミックで、ピッキングの強弱を歪みと音色の変化として最大限に表現。それでいてギター側のヴォリュームを絞れば、クリーンまで一気に歪みを落とすことが可能だ。またGAINとVOLUMEとMASTERを上げると、レガートが余裕で弾ける素晴らしいサステインが得られた。もちろんかなりの爆音になるが、背面のパワー・レベル・コントロールで音量を絞れば家庭でもこのサウンドで弾くことができるのは嬉しい。
CH 2のRHYTHMモードは、GAINを12時ぐらいに上げればかなりの歪みに達するハイ・ゲイン設計。ツマミをフルにしても解像度は極めて高く、コードの1音1音が見える。いわゆるモダン系アンプのようなみっちりと詰め込んだような音圧ではなく、低域から超高域まで周波数全体を適度に埋めるような感覚だ。
LEADモードのゲインの高さは圧巻で、なおかつノイズの少なさに驚く。逆に言えばこれほどのロー・ノイズ設計であるからこそ、ここまでのハイ・ゲイン・サウンドが実現できたと考えることもできるだろう。中域の圧力が非常に高く、ハーモニクスが面白いようにコントロールできるで、弾いていて純粋に楽しくなってくる。
背面の機能も色々といじってみたが、中でもやはりNutube BAISコントロールの効果は素晴らしい。ツマミをVINTAGE側に回すと、アタックも倍音も揺らぎをもった懐かしいサウンドになり、自然に肩の力が抜けてリラックスしたフレーズを弾きたくなる。MODERN側に回すとアタックや倍音がシャープにきらめき、中低域にはガツンとした太さが表れる。さらにゲインもサステインも数段アップ。しばらく色々と調節して遊んでみたが、結論としては「基本的に12時の位置にして、曲やジャンルに合わせて細かく調節すると便利」という結論に達した。
ちなみに試しに、マーシャルの4×12スピーカー・キャビネットにも接続して弾いてみると、また印象が激変。CH 1のクリーンのアタックは鋭く突き出し、ロー・ミッド付近の膨らみは消えて鋭角的な攻撃力のあるロック・サウンドとなる。CH 2はレンジがさらに広くなり、ギターのキャラクターをそのままに巨大化したようなイメージだ。かなりの重低音が炸裂するので、BASSやRESONANCEは控えめに設定するぐらいがちょうどいいだろう。
MVX50C1
コンボ・タイプの“MVX150C1”も基本的なサウンドはヘッドと同じ印象だが、違いを挙げるとすれば、まずコンボらしいまとまりの良さが魅力だ。また音がスピーカーの前後から聴こえ、身体を包み込むようなイメージ。ロー・ミッド付近の膨らみは本機の方がくっきりしていて、Nutube BIASをVINTAGE側に回した時の緩いレスポンスがマッチしそうだ。「現場にポンと置いて即プレイ」が可能なコンボを選ぶか、「家では小さいキャビを使い、ライヴではヘッドだけを持ち込んで現場のキャビを借りる」といった使い方のヘッドを選ぶか…。どちらの使い方が自分に合っているかでチョイスするのが良いだろう。
Specifications of MVX150H & MVX150C1
●入出力端子:INPUT、SEND、RETURN、EMULATED LINE OUT、SPEAKER OUTPUT、WET ONLY SPEAKER OUTPUT
(“MVX150H”=SPEAKER OUTPUT×2、“MVX150C1”=EXTERNAL)
●パワー・アンプ出力:最大140W RMS@4Ω、70W RMS@8Ω、35W RMS@16Ω
●スピーカー(MVX150C1) :=セレッション“G12H-150 Redback”12インチ・スピーカー(4Ω)×1
●消費電力:最大300W
●外形寸法:“MVX150C1”=520(W)×260(D)×535(H)mm、“MVX150H”=520(W)×219(D)×194(H)mm
●質量:“MVX150C1”=19.4kg、“MVX150H”=7.1kg
●付属品:電源ケーブル
●アクセサリー:“VFS2A”フット・スイッチ、“VFS2”フット・スイッチ
Specifications of BC112-150
●スピーカー:セレッション“G12H-150 Redback”12インチ・スピーカー(4Ω)×1
●入力端子:インプット端子
●許容入力:150W
●外形寸法:520(W)×260(D)×445(H)mm
●質量:15.4kg
●付属品:スピーカー・ケーブル
メーカーお問い合わせ:
コルグお客様相談窓口