アントン・カバネン&カスペリ・ヘイッキネン/ビースト・イン・ブラック
まずは元バトル・ビーストのアントン・カバネン(g,vo)率いるビースト・イン・ブラックから。元U.D.O.のカスペリ・ヘイッキネンをパートナーに、伝統的HR/HMの王道のド真ん中を突き進みつつ、メロディック&キャッチーにシュレッドしまくるアントン。その2人の抜群の相性に迫りつつ、それぞれの機材へのコダワリについても、大いに語ってもらった…!
リハーサルではプレイスルーに加えてフォーメーションの確認もする
YG:お2人とも、それぞれ過去に来日経験があるものの、ビースト・イン・ブラックの一員としては今回が“初来日”ですね?
アントン・カバネン(以下AK):ああ。この時をずっと待っていたよ。俺が前回、(バトル・ビーストで)日本に来てからもう4年も経った。だから、新しいバンドでまた来られるなんて嬉しいね。それに、まだ一度も日本を訪れたことがないメンバーもいるんで、みんな凄く楽しみにしていたんだ。結果──すべてが素晴らしかった! 大阪や名古屋も良かったけど、昨日の(東京での)ショウは最高だったね。今回の短いツアーにおけるクライマックスだったと言ってイイ。今夜のショウ(“SUOMI FEAST EXTRA”)も楽しみだ!
カスペリ・ヘイッキネン(以下KH):アントンの言う通り、どのショウも凄く楽しい時間が過ごせたけど、昨日のショウは正にマジックだった。ファンの反応も素晴らしかったし、とても快適にプレイ出来た。これ以上望むモノはないぐらいさ。
YG:今夜、セットリストを変更する予定は?
AK:まだ話し合っていないけど、持ち時間が増えたら1曲足せるかもしれない。現状、候補は2〜3曲あるよ。「Go To Hell」とか「Zodd The Immortal」とか…(いずれも’17年『BERSERKER』収録) 。まぁ、99%は同じだけどね。
YG:バトル・ビースト時代の曲はプレイしていないのですか?
AK:持ち時間が長い時は…ね。60分以上になる場合は、大抵バトル・ビーストの曲を加える。出来るだけ、バトル・ビーストのデビュー・アルバム(’11年『STEEL』)からの曲を入れるようにしているんだ。
YG:今のバトル・ビーストは、アントン在籍時の曲をやらなくなってきているので、期待しているファンは多いと思いますよ。
AK:うん、そう思うよ。う〜ん…でも──ヘッドライナーのポジションだったらアリなんだけどなぁ。それに、いずれビースト・イン・ブラックの2ndアルバムがリリースされたら、もっと(バトル・ビーストの曲をプレイする)機会は減っていくだろう。やりたい曲を全部プレイするのって難しいんだ…。
YG:来日を前にドラマーが交替しましたね?
AK:サミ(ハンニネン)には個人的な事情があって、「もう続けられない」と言われたんだ。別のことに専念したかったようだね。そこで、まずは一時的なメンバーを探すことにした。4人の友達からドラマーを推薦されて、アッテ(パロカンガス)はその中の1人だったよ。というか、2017年末のW.A.S.P.とのツアー・スケジュールに合致したのは、アッテだけだったのさ。彼は今も助けてくれている。それに、一緒にやるようになってすぐ、彼のことはみんなが気に入った。「相応しいドラマーだ」と思ったね。今は正式メンバーになったよ。W.A.S.P.とのツアーで4公演、その後に9公演やってみて、プレイ・スタイルやパフォーマンス、ステージでの魅せ方など、すべてが気に入ったんだ。
AK:とてもポジティヴなヤツで、俺も大好きだ。バンドにもピッタリのドラマーだね。
YG:よくギターを“顔で弾く”と言いますが、彼は“顔で叩く”ドラマーだと思いました。
AK:なるほど(笑)。いや、表情は大事だよ!
YG:カスペリに前回インタビューしたのは、ダークシュナイダーの来日公演の時でしたが、その後、あのバンド…というかU.D.O.から脱退したのはいつですか?
KH:一昨年(’17年)の2月だ。(ダークシュナイダーの)北米ツアーが終わった後のことでね…。
YG:それは、ビースト・イン・ブラックの活動に専念するため…?
KH:ああ、正にそうだよ。スケジュールがウマく噛み合わなくてさ。ビースト・イン・ブラックのアルバムがその年末に出ることになっていたし、当然ながら、その後に沢山のショウやツアーが入るのも分かっていた。だから、自分がすべきことを選ばなきゃならなかったんだ。俺には、ビースト・イン・ブラックにいた方が自分の未来が見える──そう思えたんでね。
YG:ちなみに、マージング・フレアの方は活動が止まっているのでしょうか?
KH:ここ2〜3年は動きが静かだね。2ndアルバムのレコーディングは4年前に始めたんだけど…。実はミキシングも済んでいて、もう完成しているんだよ。でも、レーベル・ディールがないから…。あとは「リリースしたい」と言ってくれるレーベルを探すだけだ。良いトコが見つかることを祈るばかりだね。
YG:楽しみにしています…! さて──昨日のライヴを観て、2人のプレイが火花を散らすかのようで、何度も「凄い!」と思ったのですが、ギター・パートの振り分けはアントンが決めているのですか?
AK:うん。大体、50-50にしている。優れたギタリストが2人いるんだから、ショウでもそれぞれの才能をしっかり引き出した方がイイと思ってね。
YG:それぞれギター・プレイヤーとして、お互いにないモノを持っていると思いますか?
AK:確かに、彼には俺にないモノがある。とてもユニークなスタイルで、アルバムを聴いていても、すぐに彼が弾いていると気付くしね。俺はそっちの領域に入ることすらない。彼みたいには弾けないから、俺は俺のスタイルに集中している。ただ、(『BERSERKER』の)レコーディングでソロを録っている時、先に弾いた彼を見て、「100%以下は受け付けない」といったプレッシャーを感じてしまったよ。「よし、ガッチリ練習してベストを尽くそう!」と思い、対等のクオリティが保てるよう頑張った。それが俺のモチヴェーションになったんだ。
KH:確かに、俺達は全く異なるスタイルの持ち主だ。アントンはピッキングが得意だよね。あまりレガート系はやらず、ほぼすべての音をピッキングする。一方、俺はタッピングを交えて、たくさんレガートをやってみたり…と、変化を付けるようにしているよ。お互いのスタイルが違うから、一緒に合わせるとちょうど上手くいくのさ。
YG:お互いのプレイに影響されることは?
AK:あるよ。さっきも言った通り、彼のソロに影響されて、「俺も頑張らなきゃ」という気になったんだし。ステージで一緒に弾くのも、いつも楽しんでいる。自然体で取り組むことが出来るんだ。昔のジューダス・プリーストみたいな、オールドスクールのスタイルさ。最近のメタル・バンドがやらないような…。但し、レトロ過ぎることがないようにはしているよ。安っぽく見えないように…ね。
YG:オールドスクールといえば、アクセプトを彷彿とさせるフォーメーション・プレイもアツいですね! ああいった振り付けの練習もみっちりやりますか?
AK:うんうん。曲は各自で練習してきて、リハーサルではプレイスルーをやる。そこでフォーメーションの確認をするんだ。リハでは、個々のプレイよりも、ショウの演出部分をより重視している。突っ立って弾くだけじゃダメだからね。ただ──いつも、リハを始めるのはツアーの1週間前か数日前なんだ。フィンランド国外に住んでいるメンバーが2人いて(註:ヴォーカルのヤニス・パパドプロスはギリシャ、ベースのマテ・モルナールはハンガリー在住)、簡単に集合出来ないからさ。専用で使えるリハーサル・スペースもなくて、常に空きをチェックしているんだけど、今回は大きなホールが2回借りられた。これが振り付けの確認を行なうには完璧だったんだ。今後もああいった広々としたところでリハが出来るとイイんだけど…。実際、良いショウをやるためには、スペースの確保が不可欠になってくるだろうな。
YG:本日のステージはかなり狭いですが…。
AK:大丈夫だよ。何とかやり方を見つけるから。妥協することもあるけど、どこでも大体、同じ演出でやるようにしている。もっと小さな会場でプレイしたこともあるしね。前座として出演する場合は、後から出るバンドの機材でステージが埋め尽くされることが殆どだ。その点、今夜の会場(サイクロン)はまだまだスペースがある方さ。