カスペリは1日半、俺は1週間かけてソロを録る
YG:では、今回日本へ持ってきた機材を確認させてください。まずはギターから…。
AK:俺はジャクソンだけだよ。フィル・デンメルのモデルだ。
YG:1本だけですか? 万が一弦を切った時はどうされますか…?
AK:カスペリが2本ギターを持ってきたから、借りればイイ。つまり、バックアップのギターを共有しているのさ。
YG:なるほど。ジャクソンはストックのままですか?
AK:ボディーにちょっと塗装を施した程度だね。“ビースト”が描かれているんだ。それ以外はストックのままで──そもそも中古品だったんだけど、状態は新品同様だった。
YG:フィル・デンメルのモデルを選んだ理由は?
AK:見た目がカッコ良かったから。あと勿論、24フレット仕様であることや、フロイドローズのトレモロ・ユニットが付いていることなどもポイントだった。それから、チューニングが安定していることも絶対だ。イントネーションが良くないといけない。俺はギターを選ぶ時、その3点を重視している。でも、1,000ユーロ以上するギターなら、まず大丈夫だよ。
YG:フィルの大ファンだから…というワケではないようですね?
AK:うん。そもそもフィルが誰なのか、ググらないと分からなかったぐらいでね…(苦笑)。
YG:えっ…?
AK:確か、マシーン…ヘッドとかいうバンドのギタリストなんだよね?
YG:マジで言ってますか?(笑)
AK:俺はオールドスクールだから…。
YG:(笑)
KH:(笑) 俺はアイバニーズを2本持ってきた。1年前に提供されたギターで、“RG550”シリーズが基になっている。フィニッシュはホワイト。指板はメイプルで、パーツなども白にしてもらったよ。とにかく「何もかも白っぽくして欲しい」とリクエストを出したんでね(下写真参照)。
YG:2本は同じ仕様ですか?
KH:ああ。ただ、全く同じ仕様だとはいっても、手に取ってみて、「こっちの方がイイ感じだな」と思うことがある。重さも若干違っているし。自然とメインが決まって、もう1本はバックアップになる。
YG:それぞれ持参したギターは、『BERSERKER』のレコーディングでも使いましたか?
AK:使ったよ。
KH:俺はレコーディングの際、まだこのギターを手に入れていなかったんだ。だから、前から使っている“JEM”で録った。ショッキング・ピンクのヤツさ。ソロを弾いているところの短い動画が、YouTubeに上がっているよ。
YG:レコーディングでは、アントンがすべてのリズム・パートを弾いたのでしょうか?
AK:そうだよ。以前からそうしている。ヘヴィ・メタルやハード・ロックのバッキングはとても難しい。だから、均等にバランスを取るために1人で弾くんだ。ミュートのやり方や音の切り方などが、よりタイトに仕上がるからね。但し、ソロは50/50。ピッタリ半分に分けているよ。
YG:アントンは、ジャクソン以外に弾いたギターはありましたか?
AK:トーカイのギターを使ったよ。クリーム色で…モデル名は憶えていない。それで「Ghost In The Rain」のスライド・ソロを弾いたんだ。あと、ナイロン弦のアコも使ったな。「Blood Of Lion」だったと思う。これまたブランド名は分からないんだけど…。
YG:レコーディングで使ったアンプも教えてください。
AK:すべてのディストーション・サウンドを、今ステージでも使っているLine 6“POD HT 500X”で録った。バッキングとソロで使っていて──俺はクリーンでも使ったな。
YG:“POD HT 500X”で使ったアンプ・タイプは?
AK:確かエングルのヘッドだった。あと、“Tube Screamer”タイプのサウンドも使った。スタジオではEQもかけたと思うけど──アルバムよりも今のライヴの方が、バッキングの音は良くなっているんじゃない?
YG:カスペリは?
KH:スタジオにあったのはその1台だけだったから、それを2人で使った。
YG:ライヴでは?
KH:今回のツアーが始まる前に、俺も“POD HT 500X”を買ったんだ。「同じペダルを同じセッティングにして使った方が便利そうだ」とアントンに言われたんでね。
YG:いずれも、オールドスクールなコンパクト・ペダルは使ってない…?
AK:俺は使っていないよ。キミは?
KH:BOSSのデジタル・ディレイなら持っているけど、もう随分長いこと使っていない。ライヴ・ツアーでは、(ギター・プロセッサーのように)1台で済む方がイイね。常に同じ音が出せるし、サウンド・チェックも早く終えられるからね。本物のアンプと比べると、ちょっと妥協しなきゃならない点もあるにはあるけど──とにかく、楽にライヴが出来て助かっているよ。
YG:ライヴとアルバムでチューニングは同じですか?
AK:ああ、同じだ。全曲スタンダードだよ。
YG:最近はヘヴィなチューニングにするバンドが多い中、スタンダードにこだわっている理由は?
AK:特にさしたる理由もなしに下げるのは賢くないと思う。シンガーのkeyに合わせて下げる場合は仕方ないけど…。ただ今後、低音で聴かせたいリフが出来たら、(ダウン・チューニングを)検討するかもしれない。そもそも、低音を出したからといって、ヘヴィになるワケでもない。ただ音が低いだけになる可能性もあるだろ? これまでのところ、俺の作ったリフはどれもスタンダード・チューニングの状態で良い感じだ。ドラム・サウンドでヘヴィにすることも出来るし。トラディショナルなリフを弾いているバンドで、チューニングを下げているバンドはいるのかな? 少なくとも、俺には思い浮かばないなぁ。アクセプトだって、ノーマル・チューニングだろ?
KH:確かそうだと思う。チューニングを下げている最近のバンドは、他のバンドがみんなそうしているから…という理由で、それに倣っているところもあるみたいだ。ノーマル・チューニングだって、リフがヘヴィだったらヘヴィになるんだよ。ギターがスタンダード・チューニングに設定されているのには、ちゃんとした理由がある。スタンダードでこそ、最高のギター・サウンドが出せるんだ。深い考えもナシにチューニングを落としてしまうのは、ちょっと納得がいかないなぁ。
YG:そういえば──先程、「W.A.S.P.とのツアーで4公演」とおっしゃっていましたが、本来はもっと長かったのですよね…?
AK:ああ。ブラッキー・ローレスが理由だ。俺達としては、ツアーを降りたくなかった。でも、そうしなくちゃならなくなった…と言っておこう。条件が適切じゃなかったのさ。彼等の要求がどんどんあり得ない内容になっていき、日々状況が悪化していく一方だったんで、「もう充分だ。これ以上、続けなくてもイイな…」と思ったんだ。まぁ、今となっては笑い話だよ。ちょっとした事故に遭った…と、その程度に考えている。その後に行なったツアーも成功を収めたしね。
YG:アントンはW.A.S.P.の大ファンなので、色々と辛かったのでは…?
AK:まぁね。凄く残念だったよ。自分のアイドルにそんな仕打ちを受けるなんて…さ。でも、どうしようもなかった。ブラッキーについては──確かに、気楽にやれる人じゃない。でも、バンドのことは大好きだよ。アルバムだってほぼ全作持っているし、聴くのは楽しい。「今後、ライヴを観に行くか?」と言われると、何とも言えないけど…もしかしたら、行くかもしれない。「ブラッキー、俺達をゲスト・リストに入れてくれよ」ってお願いしてみようかな(笑)。
YG:ところで──セカンド・アルバムの準備はもう始めていますか?
AK:うん。レコーディングを始めたところだよ。日本に来る前に、俺はリズム・ギターを少し録ってきた。帰ったらその続きが待っている。
YG:何と…! では、もう楽曲は揃っている?
AK:素材は充分に揃っている。ちょっと多過ぎるから、2〜3曲削るつもりだよ。どの曲が残るかまだ分からないけど…。レコーディングは、この夏か…秋がくる前には終わるだろう。カスペリは、7月か8月にソロを録ることになっている。俺が自分のソロを録るのはその後さ。俺はいつも、すべての作業を終えてから、自分のソロを録るんでね。ともあれ、ずっと休む間もない。ライヴ・ツアーをやらない時はずっとスタジオ作業だから。
KH:俺も準備を進めなきゃ。何もかも事前に準備し、練習しておけば、スタジオで時間を無駄にしなくて済むからな。
AK:彼はとても効率良くやるんだ。前回はソロを1日で録ってしまった。正確には1日半だったけど、初日はスタートが遅かったから、ほぼ1日と言ってイイ。自分の弾きたいモノが分かっているから、スタジオに入ったら、俺が録音ボタンを押して、1つのソロにつき4〜5回弾き、「一番良いのを使ってくれ」…って感じさ。俺は1週間ぐらいかけるけどね…。あらかじめソロを書くなんて、やったことがないよ。そもそも時間がないから…なんだけど、ついつい考え過ぎてしまうからでもある。スタジオでは、パート毎に作っていく。4小節区切りとか。でも、あらかじめ集中してすべてのソロを書いておくのもイイかもね。スタジオでの時間が効率的に使えるから。
YG:ともあれ、次作でも読者を唸らせるシュレッド満載のプレイを期待しています。
AK:勿論さ! ギター・ファンをビックリさせるつもりだよ。約束する…!!