フィンランドHR/HMの祭典“SUOMI FEAST”に出演したビースト・イン・ブラックのギター・チーム、チュリサスのマティアス&ユッシのインタビュー2本立て!

フィンランドHR/HMの祭典“SUOMI FEAST”に出演したビースト・イン・ブラックのギター・チーム、チュリサスのマティアス&ユッシのインタビュー2本立て!

このバンドの強みは選択肢を限定しない点にある

チュリサス(遠景)

YG:では、機材の話を。日本に持ってきたギター周りの機材を教えてください。

JW:アイバニーズ“S-5450”を2本持ってきたよ。多分、前回と同じだと思う。もう8年も使い続けていて、どのショウでも同じギターを弾いているんだ。1本がメインで、もう1本はスペア。セットの途中にギターを交換することがないから、2本で充分だね。飛行機で移動することを考えたら、どうしても持っていく機材は限られてしまう。

YG:アンプは日本で借りましたか?

JW:プリアンプは自分で持ってきたよ。エングルの“E-530”さ。ラック型で、プリアンプとして使い、パワーアンプとキャビネットは、これらをシミュレート出来るムーアーの“Radar”で賄う。あとはペダルボードかな。ステージではアンプを使わない。モニターはイン・イヤーで聴いているからね。とても小型でコンパクトなセットアップだよ。“Radar”は最近になって発売された新製品で、ポケットに入れられるぐらい小さいペダル型なんだ。今回はお試しとして、初めて使っているところだけど、結構イイ感じだね。

YG:「Hunting Pirates」(『STAND UP AND FIGHT』収録)のイントロで、アルバムではマンドリンのように聴こえますが、あのパートはどうしているのですか?

JW:アコースティック・シミュレーターのサウンドを使う。シングル・コイルのピックアップが搭載されているから、それで賄うんだ。でも、そういう場面は他にも色々あるよね。もし用意出来なければ、クリーン・チャンネルを使うしかない。

MN:普段はマンドリン奏者を起用しているよ。

JW:そう。でも今回は、俺が弾かないといけない(笑)。

YG:マティアスが弾くというのは?

JW:コイツはマンドリンを壊して、なくしちゃったんだよ(笑)。

YG:それはそれは…(笑) さて──さっきもアルバム制作が長引いているとおっしゃっていましたが、どうしてこんなに時間がかかっているのでしょう?

MN:う〜ん…なかなか良い質問だな!

JW:ハハハハハ…。

MN:前作(『TURISAS2013』)はドグマに従って作られた。それ以前は、常に予算を上回ってしまい、スケジュールが遅れるのが当たり前のようになっていてね。それで、ごくシンプルに作ろうとしたんだ。予算内に収めて、納期を守って、選択肢を狭めた中でどんなモノが作れるかやってみよう──と。それはそれで非常に勉強になったよ。でも、その後に思ったんだ。このバンドの強みは、選択肢を限定しない点にあり、広げていくことが大切だ…とね。だから今は、長いこと時間をかけて方向性を決め、じっくりやり方を練って…と考えている。プロデュースの作業自体はそんなに大変じゃない。オーケストレーションだって、やっても半年ぐらいあれば充分だ。但し、曲作りにはそれなりの時間が必要だよ。

前作は楽曲に、何か特別なコンセプトや物語があったワケじゃなかった。けど、次作は『THE VARANGIAN WAY』(’07年)や『STAND UP AND FIGHT』でやっていたような、ストーリーやコンセプトを持った、とてもビッグなアルバムを作ろうと考えているんだ。それを構築していくには、相当な時間がかかる。音世界を創造し、そのために必要なモノを築き上げるまでには…ね。もし新しいモノが創りたいのなら、時には間違った道を行かなくちゃならないこともあるだろう。自分が知っている世界で完結してしまうと、同じことの繰り返しになってしまう。何かを創り出すためには、時間と労力をかけて間違った方向へ向かい、どこかの地点で「これじゃない」と振り出しに戻ることだってあるんだ。そんなことを、ここ5年ほどずっとやってきているよ。間違った道を行っては引き返す…というのをね(苦笑)。

YG:なるほど…。

MN:でもね、今はどんどん自信がついてきているのが分かる。このバンドは凄いよ。メンバー全員がしっかり貢献していて、ライヴの時なんて、サウンド・チェックですら楽しくて仕方がないんだ。俺のバンドには、良いメンバーが──才能あるミュージシャンがいる。だから、この機会を無駄には出来ない。そろそろ新作を作るべきだな。でも、意欲はあるけど、選択肢を探るのに凄く時間がかかっている…ということなんだ。

チュリサス
オッリ・ヴァンスカ(ヴァイオリン)

YG:具体的には、現状でどれぐらい作業が進んでいるのですか?

MN:一昨年(’17年)、俺は田舎の方に独りこもって、曲を書いていたんだ。1年間ほど独りで過ごしていたよ。ちょっとおかしくなっていたのかもしれないね(笑)。その間に書いた曲があって、それをみんなにも送った。まだスケッチブックに描いたラフという感じだけどさ。

JW:そうだな。でも、曲の構造を考えているモノは沢山あるよ。俺も一緒にやっている。リフを作って構築していき、それを彼(マティアス)に送ったり、アイデアを交換したり…という感じでね。以前は1曲通して書いたこともあるけど、通常はリフを2〜3個考えて、それをまとめていく。ただ、そこからどうすればイイか分からなくなることもあるし、他の方向に進んだ方がイイと感じることもある。そんな時は、彼や他のメンバーにアイディアを送り、そこから発展させていくんだ。

MN:だけどまだ、模索中といった状況でね。まず1曲出来上がって、2曲、3曲…と完成していけば、「こっちに向かえばイイんだな」と“道”が見えてくるんだが。すると、最後の曲を作るのがとっても楽になる。自分のやるべきことが分かるから。でも今は、アレを試して、コレを試して…という段階だよ。

JW:開かれた道はいっぱいある。色んなやり方がある状態だね。

MN:夏には、またバンドで集まってもっとプレイすることになるから、一緒に曲を練っていけるだろう。そこからどんなモノが出来るか…という感じだね。だから、まだ何もレコーディングはしていないよ。

YG:リリース時期などもすべて未定…?

MN:取り掛かったのが’15年だった…ということだけだね。

YG:期間だけを考えると、10枚組の超大作になるかも?(笑)

MN:(笑) 実際のところ、「来年になったら作ろう」「来年こそはやろう」と延ばし延ばしになっていたんだよな…。合間にツアーも入ってくるからね。俺達が今いるポジションは──そうだなぁ…。勿論、アルバムを次から次へと出していくのも、バンドが成長していくようでイイんだけど、俺達としては、自分達の世界に引きこもって創作に励む…っていうのも、ファンに認められているんじゃないかと思うんだ。というか、彼等はむしろ、より練られ、しっかりプロデュースされ、なおかつ新しい要素もある作品を好むだろう。

フォーク・メタルは今から10〜15年前に出てきて、世界的なシーンになった。しかし、幾つかのバンドは人気が落ちて、いなくなるかもしれない。どのバンドも、似たような曲を発表しているし、そうなることは分かっていた。だからこそ、お仕事感覚でやっているようなバンドと同じにはなりたくないんだよ。

“仕事”にするのなら、「もっと稼がなきゃならない」と思うだろう。それだったらメシ屋にでも勤めるよ。むしろ、仕事でありつつ自らが楽しめることがやりたいんだ。俺は音楽が好きだし、コンサートも大好きだけど、クリエイティヴィティやアート制作においては、時にはウマくいかないことをやる必要もある。新しいことに挑戦する勇気も必要だよ。これまでどのアルバムでも、俺達は前進したいと思ってきたし、新しいアイデアを持ち寄ろうとした。次のアルバムは、今までよりもその傾向が強くなるハズだよ。すべてのアルバムにおいて、過去に作ったフォーク・メタルの要素は、もはや10年前のモノだ。それを懐かしがって、古い曲ばかりプレイしてもしょうがないよ。俺達はシーンを発展させて、前に進んでいきたいんだ。

YG:2050(fifty)年ぐらいまでにはリリースされそうですか?(笑)

MN:ホントは’15(fifteen)年には出るハズだったんだよ…(苦笑)。別に、何もしないでアイデアが出てくるのを待っていたワケじゃない。でも──プロになると、それで生計を立てなくてはいけないだろ? そうすると、アートとして大して面白くないモノを作ってしまうことだってある。そんなのエキサイティングじゃないし、大胆な内容なんて望めないし、俺にとってはつまらないんだよ。

YG:やる時はやる…と!?

MN:そうそう!

JW:まぁ、なる早で頑張るよ!(笑)

YG:楽しみにしています。

2人:ありがとう!!

チュリサス(終演)

S-TOOL
S-TOOL

2018年の“SUOMI FEAST”には、他にも元センテンスド〜ポイズンブラックのヴィレ・レイヒアラ(vo,g)率いるS-TOOLを始め、NOUMENA、FROSTTIDE、MORS SUBITAが出演を果たした!