マティアス・ニューゴールド&ユッシ・ヴィクストロム/チュリサス
続いては、聴くだけで血が滾るペイガン・バトル・メタラー:チュリサスのインタビューをお届け。取材に応じてくれたのは、バンド・サウンドの中枢とも言うべきマティアス・ニューゴールド(vo)&ユッシ・ヴィクストロム(g)だ。多くのファンが気になっているのは、きっと『TURISAS2013』(’13年)以来となるニュー・アルバムのことだろう。そこで2人には、来日ショウや使用機材などに加えて、新作についても突っ込んでみた…!!
必要な動きが可能になるだけのスペースは必要だ
YG:今日で4公演目となりますが、今回の久々の来日ツアーはいかがですか?
マティアス・ニューゴールド(以下MN):全くもって素晴らしいね! これまでに日本には何度も来ているけど、ヘッドライナー公演は今回が初めてだ。驚いたよ。オーディエンスはとても快く迎えてくれたし、予想よりも遥かに良い反応が得られた。日本で初のヘッドライナー公演としては、凄く良い結果になったな。
ユッシ・ヴィクストロム(以下JW):うん、そう思うよ。というか、日本の観客はこれまでもずっと俺達に良くしてくれている。昨日(“SUOMI FEAST”東京公演)はソールド・アウトだったし!
YG:アジア・ツアーの一環である中国公演ははキャンセルになったそうですね…?
MN:俺達が聞いたところでは、政治的な空気の影響もあり、今回の公演のプロモーショが充分に行なえず、トラブルに巻き込まれるリスクを避けるため、中国のプロモーターがキャンセルしたそうだ。残念だったけど、代わりに東京でもう1回ショウ(“SUOMI FEAST EXTRA”)が出来ることになって良かったよ。今日も小規模なクラブ・ギグではあるものの、ソール・ドアウトになっているしね。
YG:’10年の前回来日時は“LOUD PARK”に出演しましたが、大きなフェスと小さなライヴハウスでのショウでは、どちらが好きというのはありますか?
MN:俺はクラブの方が好きだな。勿論、アリーナでプレイするのもイイけど、自分でサウンド・チェックが出来るし、オーディエンスの様子も把握することが出来る。それに、フェスは持ち時間が40分ぐらいしかなかったりして、始まったと思ったらもう終わり…ということもあってね。“一か八かやってみよう”“万事ウマくいきますように”…なんて意識で臨むことになるから、クラブの方がやり易いよ。ただ、こちらもあまりに狭いと、ショウ運び自体が困難になってしまう。名古屋のクラブは(観客との)距離は近かったけど、俺達はアクティヴに動き回るショウをやるから、例えばヴァイオリニストにぶつからないように…なんて考えたりして、思う存分、体を動かすことが出来なかった。昨日の新宿(Shinjuku BLAZE)ぐらいのサイズがパーフェクトだな。
JW:うん。あれぐらいあるとイイね。
MN:やっぱり、必要な動きが可能になるだけのスペースは必要だね。
JW:あと、フェスにつきものの問題といえば、リハやセッティングが出来ない…というのがある。基本的に、サウンド・チェックはないモノとして考えておかないとな。出来ても、信号の流れを簡単にチェックするぐらいだし。まぁ、いつでもどこでも同じ音が出せるような機材は揃えてあるけど、(ショウ現地で)提供されるバックラインの機材がどうなのか、事前に分からないこともあるから難しいんだ。でもクラブ・ショウだと、サウンド・チェックを完璧に行なうことが出来て、楽ではあるかな。より良いサウンドでプレイ出来るからね。
YG:今はイヤー・モニターを使っているのですよね?
JW:ああ。全員が使っているよ。いや、キーボード奏者だけは、未だにモニター・スピーカーを頼っているんだけどね。
YG:どんな音を返しているのですか?
MN:俺達がモニターで聴いている音は、オーディエンスが聴いているのとはかなり違うだろうな。
JW:メンバーによって、好みの返しは違うと思う。俺は、キック・ドラムとスネアとギターをフルで返してもらっている。それ以外は小さめだ。やっぱり、ギターはちょっと大きくしてもらわないとね。もし自分がヴァイオリン・プレイヤーだったら、きっと自分の楽器を大きく聴くことになるだろう。耳を頼りに弾いているから。但し、そんなに特別なセッティングにはしていないよ。
YG:確認ですが、来日したベーシストはユッカ=ペッカ(ミエッティネン)ですか? それとも、イェスペル(アナスタシアディス)?
MN:ユッカと一緒にやっていたのは’12年頃までだよ。
JW:でも、今も仲好くやってて、最近もフィンランドのショウで共演したんだ。
MN:妙な家族構成…っていうか、出て行ったメンバーがまた戻ってくることも多くてね。
YG:今はイェスペルがパーマネント・メンバーなのですね?
2人:ああ、そうだよ。
YG:キーボードはカスペル(モールテンソン)?
2人:その通り。
YG:彼はパーマネントではないのですか?
MN:正直、そうでもないんだ。一度ツアーに参加してもらったら、次も、その次も…と頼むことになってしまってさ。
JW:以来、もう4〜5年は経っているんじゃない?(笑)
MN:要は彼自身の問題なんだ。他にも沢山やることを抱えているみたいだから。いつも、「このツアーが終わったら、このバンドは辞めないといけない。他にも仕事があるから」と言われるよ。
JW:でも、次のツアーが迫ってくると、「よし、大丈夫だよ! 手伝おう」とやって来てくれる(笑)。
MN:俺達としては、そうじゃない方がイイけど、彼が忙しいんでね。あとは、世界中をツアーして廻っていて、(ニュー)アルバム制作が随分長引いてしまい、全体的に色んなことが一時的になっているのも大きいね。つまり、「この件については、新作が完成してから」「それから改めて、アレをやって、コレを直して…」というような感じなんだ。だから、キーボード奏者の立ち位置についても含めて、すべてはニュー・アルバムが完成してから…という状態になっているのさ。
YG:ところで──昨日のショウでは、「Battle Metal」(’04年『BATTLE METAL』収録)で終わるのかと思いきや、最後に「End Of An Empire」(’11年『STAND UP AND FIGHT』収録)をやりましたね。あまりライヴでやらない曲だとおっしゃっていましたが…?
MN:そうだな。
JW:良い曲だからやりたいとは思っているんだけど…。他の曲と違って、より演奏に集中することが必要だからね。
MN:実際、歌や演奏だけでイッパイイッパイで、アクションを付けたりするのは難しい。だから、ライヴで毎晩やる曲ではないんだよ。でも、オーディエンスも気に入ってくれているみたいだし、曲調もエピックで素晴らしい。時々やれればイイな…と思っているよ。でも、今日のクラブは小さいから、難しいかもしれない。
JW:他の曲をやるかも。
MN:ビッグな曲をスモールなステージでやるのは…どうもね。あまり相応しくないんじゃないかと思う。
JW:昨日の会場は規模も適度で、モニタリング環境も良かった。それもあって可能だったのさ。
MN:但し、まだ何も決めていないんだ。ツアーを始める前に「セットリストを送ってください」と、プロモーターからメールがきていたけど、俺達はショウの直前まで考えないタイプだからね。それも、当日のクラブやお客さんの雰囲気を掴めるという意味では、良いことだと考えている。今日も、開場前には曲を決めておかないと…と思っているところでね。大抵は、コーヒーを飲みに行って、紙ナプキンに走り書きしたモノを写メって、開演15分前に送信する…という感じだよ。今日はステージが狭いから、「…ということは、照明はあんな感じで、動きはこんな感じになりそうだ」と想像していく。そこからイメージを膨らませて、演奏曲を決めていくのさ。