ヴィシャス・ルーマーズ新作『CELEBRATION DECAY』をジェフ・ソープが語る…「3人の若く才能ある連中と共に前へ進んでいくのさ」

ヴィシャス・ルーマーズ新作『CELEBRATION DECAY』をジェフ・ソープが語る…「3人の若く才能ある連中と共に前へ進んでいくのさ」

不屈のUSパワー・メタラー:ヴィシャス・ルーマーズ(以下VR)。今年デビュー35周年を迎えた大ヴェテランが、8月19日にニュー・アルバム『CELEBRATION DECAY』をリリースした(海外では21日)。ここのところ、首魁ジェフ・ソープ(g,vo)とその盟友ラリー・ハウ(dr)以外のラインナップがどうも落ち着かず、今回も前作『CONCUSSION PROTOCOL』(’16年)からその2人を除いて総替えとなってしまったが、ファンの側としても、それはもはや想定内だったかもしれない。

ちなみにVRの現メンバーは、ジェフ&ラリーに加えて、ニック・コートニー(vo)、ガナー・デュグレイ(g)、ロビン・ウトブルト(b)となっているが──実は、ロビンの加入は『CELEBRATION DECAY』完成後のことで、レコーディングでは元テスタメントのグレッグ・クリスチャンがベース・パートを担当したという。また、’18年にツアー・ベーシストとしてリクルートされたコーディ・グリーンが、2曲でギター・ソロを客演しているのも気になるところ。

では、ヘヴィで、ソリッドで、いかにもVRらしいツイン・ギターの旨味を満載した第13作『CELEBRATION DECAY』について、そして、気になるメンバー・チェンジの数々についても、ジェフにガッツリ語ってもらうことにしよう。勿論、「並外れたシュレッダー」と絶賛するガナーについても、ジェフに質問をぶつけてみた…!

俺とガナーで表裏一体となったように感じたよ

YG:ニュー・アルバム『CELEBRATION DECAY』は、実にヴィシャス・ルーマーズ(以下VR)らしい仕上がりですね!

ジェフ・ソープ(以下GT):ああ。早くみんなとこの素晴らしい新作を分かち合いたいよ。日本のファンに紹介したくてウズウズしているんだ。今回俺は、ニュー・ギタリスト:ガナー・デュグレイと共にギターの狂乱をたっぷりと詰め込んだからね!

YG:新作について訊く前に、まずはメンバー・チェンジについて、順を追って確認させてください。『CONCUSSION PROTOCOL』(’16年)でギター・ソロを弾いたセーン・ラスムッセンは、結局また脱退してしまいましたね?

GT:セーンは体力的に、俺たちのツアー・スケジュールに付いてこれないことが分かったんだ。それで、’16年12月に別のギタリストを探し始めたのさ。

YG:『CONCUSSION PROTOCOL』で歌ったニック・ホレマンも、’17年に脱退してしまいました…。

GT:彼はVRに加わったことで、しばらく自分のバンド:パワーライズドの活動が満足に出来なくなっていたんだ。彼のバンドは(VRとはタイプが異なり)、シンフォニック・ロック・オペラといった感じでね。それで彼は、とても忙しい(VRでの)3年を過ごしてから、自分のバンドへ戻ろうと決意したのさ。ニックは本当に素晴らしいシンガーで、エキサイティングかつパワフルな声の持ち主だ。それにいつも陽気だし、実にプロフェッショナルだった。今後の彼の成功を祈っているよ!

YG:そのニックの後任として、元メンバーのブライアン・アレンが出戻ったのには驚きました。

GT:まぁ“中継ぎ”のような感じだったけどね。ブライアンは’17年に戻ってきて、でも──数ヵ月で、結局は別の仕事を選んだのさ。でも、新しいメンバーを推薦してくれたのは助かったよ。

YG:セーンの後任ギタリスト:ガナー・デュグレイですね?

GT:そう! 少しの間ブライアンが戻っていた時、ガナーを推薦してくれたんだ。彼が加入したのは’17年2月のことで、当時まだ18歳だった。でもすぐに、「素晴らしい選択肢だ」と分かったよ。今では21歳になり、伝説的なマーク・マクギー(元g)に比肩するワールド・クラスのプレイヤーに成長してくれた。おかげで、クラシックなVRの(ギター)チームが復活したんだ。過去3枚のアルバムでは、ゲストに幾つかのソロを弾いてもらう以外、すべてのギター・パートを俺がひとりでコナしてきた。でも、今やガナーを得て、(バンドが)本当に素晴らしい状態にあると言える。新作『CELEBRATION DECAY』においては、俺とガナーで表裏一体となったように感じたよ!

VICIOUS RUMORS - Gunnar Dügrey

YG:そしてベースのティレン・フドラップも、’18年に脱退してしまいました…。

GT:ティレンは’18年に、オランダの伝説的デス・メタラー:ペスティレンスから1年分のギグ契約を引き受けたんだ。そしてその後、U.D.O.に加わったんだけど、誰かが(’16年にVRとU.D.O.=ダークシュナイダーがツアーを行なった際)ティレンがどれだけ凄いのか気付いたんだろうな。ツアーのあとに(U.D.O.の関係者から)電話をもらったそうだからね。実際、彼もまた素晴らしいプレイヤーだ。ティレンが良いバンドに迎えられて、俺もハッピーだよ。

YG:ティレンに代わって迎えられたコーディ・グリーンは、ガナーのバンド・メイト(オレゴンのグルーヴ・メタラー:CHRONOLOGICAL INJUSTICE)だそうで?

GT:彼は’18年から’19年にかけての“Digital Dictator World Tour”(’88年のセカンド『DIGITAL DICTATOR』の全曲再現ツアー)において、108もの公演でベースを担当してくれたんだ。このツアーは、元々は20〜25公演という計画で始まったんだが、好評が好評を呼んで、何と108公演にまで膨れ上がっていったのさ。それをコーディが全部コナしてくれたんだよ! あのツアーは本当に楽しめたし、コーディがいてくれて俺たちはとてもハッピーだった。でもコーディは、実は優れたギタリストでギター・ビルダーでもあるんだ。

YG:ブライアンに代わって迎えられたニュー・シンガー:ニック・コートニーはどのようにして見つけたのですか?

GT:彼もブライアンが推薦してくれた。そして、(ブライアンが歌った’17年の)“BANG YOUR HEAD!!!”フェス出演後、’18年になってVRに加入したのさ。彼のことはすぐ気に入ったよ! ニックの声と個性はステージで最高なんだ。ニックやガナーと108公演をやり遂げたのは、本当に素晴らしいことだったね。あの時、それこそケミストリーが産まれたんだからさ! その結果、バンドはよりタイトなユニットとなり、新作は情熱と興奮に満ちた仕上がりとなった。勿論、ニックのアルバムでの歌唱にも、とても満足しているよ。

YG:ベーシストに関しては、『CELEBRATION DECAY』のレコーディング時点で正式メンバーはおらず、元テスタメントのグレッグ・クリスチャンが起用されたようですね?

GT:グレッグのことは長年知っていたし、友人であり仲間でもあるから、最高の選択肢だった。彼と一緒に仕事するのはこれが初めてだけど、素晴らしいトーンだったしね。彼をゲストに迎えて、とても楽しい時間を過ごすことが出来たよ。

YG:レコーディング完了後、正式メンバーとしてエア・レイドのベーシスト:ロビン・ウトブルトが迎えられますが、彼はスウェーデン人ですよね? どういった経緯で加入に到ったのでしょう?

GT:エア・レイドとは、“Digital Dictator World Tour”を一緒に廻ったんだ。その時にロビンと出会い、これまたスムーズに話が進んだよ。今年の3月─(コロナ禍による)ロックダウンが行なわれる前に、俺たちは何度かショウを行なったんだが、ロビンは最高で、今後も共に活動していくのが楽しみで仕方ない。

YG:それにしても、この5年間でかなりのメンバー異動がありましたね…。

GT:まぁ、人の出入りはいつだって起こり得る。特に、VRのような長いキャリアのバンドの場合は尚さらね。実際、全員がオリジナル・メンバーのバンドなんて、俺には思い付かないぐらいさ(笑)。それでも、俺のグループは常に前進しているよ。付き合いの長いラリーに加えて、今のVRには、ガナー、ニック、ロビンという3人の若く才能ある連中がいて──そうやって俺たちは前へ進んでいくのさ!

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YG:新作『CELEBRATION DECAY』の曲作りを始めたのはいつからですか?

GT:’17年にリフから始めたよ。その際、部分的に録音も行なっていった。プリ・プロダクションのため、トライデント・スタジオに入ったのは、’19年11月10日のこと。その時点で山のようなアイデアがあって、130ものイントロや曲のパーツ、あと幾つかもう完成した楽曲もあったんだ。レコーディングは12月10日に開始し、その時点では、もう殆どの曲が準備万端で、ガナー、ニック、それからラリーと一緒に何曲か調整した程度だったね。レコーディングが完了したのは、今年の2月26日。本当はもっと早くリリースするつもりだったんだけど、『DIGITAL DICTATOR』のアニヴァーサリー・ツアーのスケジュールがどんどん追加され、さっきも言った通り、1ヵ月半から1年半にまで延びていったんだ。

YG:前作『CONCUSSION PROTOCOL』では、スタジオにメンバー全員が集まって作業を行なう昔ながらの方法を採っていましたが、今作はどうでしたか?

GT:今回は、北カリフォルニアのスタジオへひとりずつ飛んできた。『CONCUSSION PROTOCOL』とは違ったアプローチで、ある意味これはとても良いことだったね。スタジオへやって来たメンバーは、その都度それぞれが中心となってたっぷり時間をかけ、集中して作業を進めていったんだ。俺自身もプロデューサーとして、その方がやり易かったよ。レコーディング・セッションはとても集中したモノになり、俺たちは必死に働き、必死に演奏した。何よりも、この素晴らしいアルバムを作るために、素晴らしい時間を過ごしたのさ。

YG:新しいギター・パートナーのガナーとの、初めてのスタジオ作業はいかがでしたか?

GT:ガナーは並外れたシュレッダーさ! さっきも言ったように、彼は今回、俺と一緒にリズム・ギターもリード・ギターも弾いたんだけど、俺たちのスタイルはとてもウマく噛み合ったしね。

VICIOUS RUMORS - Gunnar Dügrey

「Pulse Of The Dead」のソロには俺が求める興奮とサスペンスがある

YG:全曲のソロ・パートの内訳を教えてください。

GT:ガナーと俺はあらゆるところでソロを弾いているよ。タイトル・チューンの「Celebration Decay」では、ガナーがハーモニー・リードを弾き、中間部のソロ・セクションは“ジェフ → ガナー → ジェフ”となっている。一方、「Pulse Of The Dead」は最初のソロがガナーで、俺は最後のソロを弾いたんだ。ここではこれぐらいにしておくよ。みんなが自分で見つけ出すお楽しみも残しておかなくちゃね!(笑)

YG:以前にツアー・ベーシストを務めたコーディ・グリーンが、ギター・ソロで客演していますね?

GT:ああ。2曲のソロ・パートで彼を招いたんだ。「Long Way Home」と「Any Last Words」の、それぞれ中間部の超絶ソロさ。コーディはギターが本業だから、俺たちとしては、彼にはギターでも輝いて欲しかったんだよ。

YG:では、今回のレコーディングにおけるギター周りの使用機材を教えてください。

GT:俺が弾いたギターは、ディーンの“Razorback”と“Razorback V”、それからカスタムのVシェイプなどで、それぞれディーン製のピックアップの他に、EMGやセイモア・ダンカンがマウントされている。あとアンプは、ムーアサウンド、EVH、ケンパーなどを使った。キャビネットはハイワットだったよ。

YG:ガナーの使用機材ももし分かれば。

GT:彼はディーンのカスタム・ショップ製“RC7”を弾いていた。ピックアップはベア・ナックル製だ。アンプはランドールとケンパーで、キャビネットはやはりハイワット。あと、テイラーのアコースティック・ギターも弾いてくれたよ。

YG:各曲のチューニングも教えてください。

GT:どの曲も全弦半音下げだ。

YG:今回、ギター・サウンドは『CONCUSSION PROTOCOL』の時よりも’80年代的というか、ヘヴィでありながらも、よりクリアになっていると思いました。

GT:俺ひとりで弾いたのではなくて、2人のギタリストがいることで、自然なコーラス効果が産まれて、それでよりオールドスクールなバンドの雰囲気が出たんじゃないかな? あと、ひとりで弾いた方がタイトになるけど、2人でも今作のようにタイトにすることは出来るし、ずっと大きな音の壁が作れるんだ。

YG:新作で弾いたギター・ソロで一番気に入っているのは?

GT:「Pulse Of The Dead」の自分のソロだな。俺がギター・ソロに求める興奮とサスペンスがそこにあるからね。それから、「Any Last Words」のコーディのソロも素晴らしいし、「Mascarade Of Good Intentions」と「Asylum Of Blood」のガナーのソロも、それに負けないぐらいに凄いよ!

YG:では最後に、日本のファンに一言どうぞ!

GT:ファンのみんな、いつもありがとう! 長年に亘る君たちのサポートは本当に素晴らしい。みんながいなければ、俺たちはここまでやってこられなかったよ。ニュー・アルバム『CELEBRATION DECAY』を楽しんでくれたら幸いだ。どんなメタルヘッドでも楽しめるような最高のメタル・アルバムになっているから、是非とも大音量で聴いて欲しい。今は(コロナ禍もあって)みんなに会えなくて残念だけど、近い将来またロードで会おう! それまでメタルし続けてくれ──Metal On!!

VICIOUS RUMORS

INFO

VICIOUS RUMORS - CELEBRATION DECAY
『CELEBRATION DECAY』
VICIOUS RUMORS

CD | マーキー・インコーポレイティド/アヴァロン | 2020年8月19日発売